遠隔医療システムを活用して、より質の高い遠隔透析を実現

アノテーション機能を活用した双方向のコミュニケーションを実現

透析
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透析医療の専門医・スタッフが不足している福島県において、福島県立医科大学様が、電話やWEB会議システムを用いた遠隔透析で、4か所の施設を支援しています。しかし、既存の遠隔透析の方法では情報収集における課題を抱えられていました。遠隔医療システムの活用によりリアルタイム性が高く、より詳細な身体所見情報を入手することで、より質の高い医療提供を実現させた取り組みを紹介します。 

課題

  • 電子カルテや電話での情報だけでは、治療方針を決める事に困難を感じていた
  • 紙カルテで運用されている施設では、カルテ内容を全て耳で聞く必要があった
  • WEB会議システムの映像だけでは、治療に必要な情報を十分に得られない事があった

対策

  • 遠隔透析の情報伝達手段として遠隔医療システムを活用
  • 音声とリアルタイム画像を用いた双方向コミュニケーションによる診察を実現

効果

  • 自分の欲しい情報をリアルタイムで得ることができるので、より精度の高い診察を行うことができる 
  • 双方向のコミュニケーションを通じて診察されている実感がわくことで、患者さん自らにより細かな情報を話してくださるようになった
  • 電子カルテを導入していない施設におけるカルテを確認できる代替手段を確保できた

ご活用施設

公立大学法人 福島県立医科大学 様

(福島県福島市)

電話などの既存の情報共有方法では、身体所見を始めとした情報の入手が課題に

福島県内では透析医療の専門医・スタッフが不足している状況です。福島県立医科大学様では情報ネットワークによる遠隔システムを応用し、遠隔透析を立ち上げ、支援されてきました。現在は4箇所の施設を支援されていますが、ここ数年で遠隔透析を必要とする医療機関が増加してきています。そのような状況で、遠隔透析においていくつかの課題を抱えてられていました。
電子カルテの情報を共有しながら対面通話でカンファランスを実施されていますが、電子カルテでは把握できない情報(特に身体所見)は伝わりにくい状況にありました。また、能動的に、かつ、リアルタイムに情報を収集することができず、限られた情報を耳で聞いて理解し、頭で想像しながら方針を決めることが難しい場面もありました。タブレットを用いた回診も実施されましたが、タブレットの不安定性やカメラの性能の限度など不便さを感じる部分もありました。支援先の施設によっては、電子カルテを導入できていない、あるいは完全に移行できていない場合があり、紙媒体からの情報取得が難しい状況にありました。

音声とリアルタイム画像を用いた双方向コミュニケーションによる診察を実現

自分の欲しい情報をリアルタイムで取得することで、より精度の高い診察を行うことができる

高画質・高倍率のカメラを能動的に操作し、鮮彩な画像で評価できるため、まるで支援先病院にいるかのような情報量で診察をすることできるようになりました。自分の欲しい情報をリアルタイムに取得することができるだけでなく、アノテーション機能を活用して現場側と双方向での情報共有を行うことが可能になったため、コミュニケーションの幅が広がりました。

浮腫があるという患者様の足を診察している様子

アノテーション機能を活用し、遠隔側からの操作で前脛骨部に照準を合わせ、青い矢印を支援先病院側のディスプレイに表示し共有。映像だけで圧痕性浮腫の程度を診断しました。言語とアノテーション機能の活用でスムーズなコミュニケーションを実施することができました。

全身そう痒感がある患者様を診察する様子

特にお腹が痒いということで、皮膚所見を確認しました。遠隔側のマウス操作で位置調整・ズームを行い痒いところに照準を当てると、掻爬痕がくっきりみられ、アノテーション機能を活用し、所見を支援先病院側と映像を共有しました。拡大してみると腹部全体に色素沈着が見られ、慢性的にそう痒があり、掻爬し続けていることがわかりました。

同じ患者様のシャント評価

全身のそう痒感ありとのことで、シャント肢の掻爬を確認しました。また、シャント静脈の膨らみ・くぼみがないかなども合わせて確認しました。穿刺部に皮下出血を疑うような所見があり、アノテーション機能を使い、映像を支援先病院と共有しました。

紙カルテに照準を定めてズーム

ベッドサイドに置かれた紙カルテも、遠隔側から照準を定めてズームをすることで、クリアに読み取ることが可能になりました。電子カルテを導入していない支援先病院においても、紙カルテに記載された情報を取得できる代替手段を確保できます。

ご利用者様の声

「Teladoc HEALTH」を用いたことで、専門医が欲しい情報を能動的に得る事ができるようになりました。また、医療従事者のみならず患者さんともコミュニケーションがとれ、より質の高いリアリティのある診察が行えると感じました。今後は、電子聴診器を介した血管内の渦流音やエコー画像をリアルタイムに共有することで、実際の診察に近づけられると考えています。

公立大学法人 福島県立医科大学 風間 順一郎 先生