【レポート】調剤外部委託の実証実験が開始!薬剤師は価値をどう高める?
■菅原幸子 自己紹介文
老舗業界紙のドラッグマガジン社が発行する「月刊ドラッグマガジン」で編集長を務めさせていただき、薬局・薬剤師業界の記者歴は20年以上になります。2020年7月に株式会社ドラビズon-lineを起業。現在、WEBメディア「ドラビズon-line」を運営しています。厚労省の審議会や規制改革会議をはじめとした行政のほか、日本薬剤師会・日本保険薬局協会・日本チェーンドラッグストア協会などの各種関連団体の定例会見のほか、薬局現場などに足を運んで取材を続けています。
■今回のセミナーのご紹介
<このセミナーで分かること>
・調剤業務の一部外部委託の特区事業における現状
・特区事業実施における課題
・外部委託への薬剤師の受け止めと薬剤師の将来への影響
外部委託はあくまで“オプション”との考え
今回のセミナーでは、調剤業務の一部外部委託に関する特区事業を行っている薬局DX推進コンソーシアムの理事長を務める狭間研至氏に講演をいただきました。
狭間氏は薬剤師が医薬協業の中で活躍するために、薬剤師以外が行える業務を明確化した、いわゆる「0402通知」があったことに触れました。その後、改正薬機法で服薬中のフォローアップ業務が定められるなど、対人業務を充実する方向が進められてきたと解説しました。今回の大阪市特区における調剤業務の一部外部委託の実施も、そうした流れの一環との受け止めを示しました。業務が繁忙なために対人業務に割ける時間も限られることから、対人業務に注力するための時間創出に活かせるのではないかとの考えです。一方で、狭間氏は外部委託はあくまで“オプション”として整備されてもよいものではないか、との考えも示しました。
データのやりとりにはさらなる開発の道も
外部委託の実施までには、いくつかの課題もありました。狭間氏は当初、ISOの取得が求められる方向があったものの、安全性について行政が確認する方向になったとの経緯を説明しました。また、データのやりとりについては、現状はNSHIPSとオーダーシートを活用していますが、今後は標準化も必要になってくるとし、コンソーシアムとして開発を行っていく方針も示しました。
「対物業務」に従事したい意向、若い薬剤師ほど高く
セミナーでは特区実証実験の第1号となった日本調剤執行役員の加茂薫氏にもご講演をいただきました。加茂氏は、実証実験実施にあたり安全性を第一として手順書の作成に取り組んできたことを説明。その結果として用いられている手順書は「コンソーシアムの財産ではないか」との考えを示しました。
現在の同一法人内の委受託は「フェーズ1」であるとし、今後は「フェーズ2」として他社間での委受託にも取り組む方針を説明しました。「フェーズ2」は10月中旬から開始予定で、最終的には3月中旬をメドに報告、公表を予定しているということです。
加茂氏は市民や薬剤師を対象とした外部委託に関連するアンケート調査も実施しており、セミナー内でその結果も説明してくださいました。中でも将来的に「対物業務」に従事したいとの回答が若い世代の薬剤師ほど高いということが示されたという結果に関しては、講演後の質疑応答で視聴者から質問が寄せられるなど、高い関心が示されました。
そのほかの講演内容
そのほか、セミナーの中ではAIを活用した薬歴作成支援システムがリリースされたことなども説明されました。こうした新しいシステムについても、視聴者から質問が寄せられるなど、新技術への高い関心がうかがえました。
さらには後半には視聴者からの質問に登壇者に答えていただきました。薬剤師の今後の在り方への影響や、外部委託の料金に関すること、地域医療としての連携についてなど数多くの質問が寄せられました。
外部委託が薬局や薬剤師に与える影響について考えるヒントが散りばめられたセミナーになっております。ぜひご視聴ください!