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電子カルテ 医師 事務長 2023.12.01 公開

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【最新動向】全国の医療機関における電子カルテ情報の共有の仕組み

医療DXの推進の一環として、電子カルテ情報などを全国の医療機関で共有する仕組みが整備されています。政府は2023年度からシステムの開発を進め、2024年度中に順次運用を開始する予定です。この記事では、電子カルテ情報の共有について検討された背景や仕組み、想定スケジュール、さらには医療機関に求められる対応を解説します。

※本内容は公開日時点の情報です

#医療政策

目次

電子カルテ情報の共有に関する検討の背景

【最新動向】全国の医療機関における電子カルテ情報の共有の仕組み

電子カルテの情報を、全国の医療機関・薬局で共有するためのサービスを「電子カルテ情報共有サービス」とし、政府はシステム開発を推進しています。ここでは、電子カルテ情報共有に関する検討の背景について解説します。

少子高齢化が進む日本において、国民の健康増進や質の高い医療を提供するため、保険・医療・介護情報のデジタル化(医療DX)が推進されています。また、自然災害の発生や新型コロナウイルス感染症の影響により、平常時からデータ収集の迅速化や情報収集範囲の拡充が必要不可欠とされ、政府は2023年に「医療DX令和ビジョン2030」を発表しました。

その取り組みの一つに「全国医療情報プラットフォーム」があり「電子カルテ情報共有サービス」は、その元となるデータの「見える化」に寄与する仕組みです。

全国医療情報プラットフォームの全体像(イメージ)
▽出典
厚生労働省|全国医療情報プラットフォームの全体像(イメージ)(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001144379.pdf)(PDF)

政府は、2021年11月「医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」を立ち上げ、電子カルテ情報を全国で共有するためのサービスを「電子カルテ情報共有サービス(仮称)」とし、検討を開始しました。2023年11月には、「電子カルテ情報共有サービス」を正式名称としています。

共有される情報と仕組みの概要

「電子カルテ情報共有サービス」の仕組みは、オンライン資格確認等システムを活用することを前提としています。ただし、情報共有には患者さん本人の同意が必要です。

情報共有には電子カルテ情報共有サービスを介するため、医療情報交換の標準規格「HL7 FHIR」に対応した電子カルテ導入が推進されています。
仕組みは、以下の図の通りになります。

電子カルテ情報共有サービス(仮称)の概要
▽出典
厚生労働省|電子カルテ情報共有サービス(仮称)について(https://www.mhlw.go.jp/content/12301000/001112352.pdf)(PDF)

この仕組みによって、医療機関が送受信し共有できるようになるのは、以下の3つの文書情報です。

  • ・検診結果報告書
  • ・診療情報提供書
  • ・退院時サマリ

また、全国の医療機関や薬局は、以下の6情報を閲覧できるようになります。

  • ・傷病名
  • ・アレルギー
  • ・感染症
  • ・薬剤禁忌
  • ・検査(救急、生活習慣病)
  • ・処方

なお、患者さん本人がマイナポータルで6情報を閲覧できる仕組みも構築されるようになります。それぞれの提供方法は、以下の通りです。

情報 提供方法(案)
傷病名 保存期間内の情報全てを提供
アレルギー情報
感染症情報
薬剤禁忌情報
検査情報 患者が期間指定を行い提供
処方情報
患者がマイナポータルで6情報を閲覧可能とする仕組み
▽出典
厚生労働省|電子カルテ情報共有サービス(仮称)について(https://www.mhlw.go.jp/content/12301000/001112352.pdf)(PDF)

電子カルテ情報の共有に関する想定スケジュール

2023年に発表された厚生労働省の「医療DXの推進に関する工程表」によると「電子カルテ情報共有サービス」は2024年度中に、先行的な医療機関から順次運用を開始するとしています。また、2030年までに、おおむねすべての医療機関において電子カルテの導入を目指すことも盛り込まれました。

医療DXの推進に関する工程表(全体像)
▽出典
厚生労働省|電子カルテ情報共有サービス(仮称)について(https://www.mhlw.go.jp/content/12301000/001112352.pdf)(PDF)

現在、医療等情報利活用ワーキンググループと基盤ワーキンググループが議論をしながら、システム構築を進めています。議論の内容は、主に以下の通りです。

情報の登録に関して 電子カルテ情報の登録に関する同意について
情報の保存に関して 3文書情報・6情報の保存期間について
管理する仕組みに関して コードの整理等
情報の発生・登録に関して 電子カルテにおける医師による6情報の入力負担について
情報の閲覧に関して 文書情報の電子カルテ上での表示の仕方

このうち、まずは3文書6情報の共有を進め、自治体や介護事業者にも一部情報が共有されていく予定です。今後も、全国の医療機関における電子カルテ情報の共有は、急ピッチで推進されるでしょう。

電子カルテ情報の共有に伴い医療機関の対応が必要なこと

全国的な電子カルテ情報の共有に伴い、医療機関には以下の対応が必要となることが想定されます。

  • 1.オンライン資格確認等システムの導入
  • 2.標準型電子カルテの整備
  • 3.標準規格に対応した仕組みの整備

それぞれ解説します。

1.オンライン資格確認等システムの導入

2023年4月、政府は保険医療機関および薬局における、オンライン資格確認等システムの導入を原則義務化しました。マイナンバーカードと健康保険証を一体化し、2024年秋には健康保険証を廃止する方針です。今後、マイナンバーカードを健康保険証として持参した患者が増えることが想定されるでしょう。

2.標準型電子カルテの導入

2025年までには「電子カルテ情報共有サービス」の運用開始を目指している中、標準型電子カルテの導入がより一層求められることが想定されます。

とはいえ、2020年時点での電子カルテの普及率は、大規模病院では91.2%と高い傾向にあるものの、200床以下の病院や一般診療所では半数に満たない状況です。

▽出典
厚生労働省|電子カルテシステム等の普及状況の推移(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000938782.pdf)(PDF)

オンライン資格確認等システムの導入義務化によって、文書情報・6情報の送受信や閲覧可能なサービスの構築も推進されているため、早々に電子カルテの導入を検討する必要があるでしょう。

3.標準規格に対応した仕組みの整備

情報共有には、電子カルテ情報共有サービスを介するため、医療情報交換の標準規格「HL7 FHIR」の導入が推進されています。マスターコードが医療機関ごとにバラバラだと解釈が異なり、正しく情報共有されない可能性があるためです。そのため、電子カルテ情報共有サービスで取り扱うデータコードは、原則、標準規格として採用されているコードを使用しなければなりません。

2023年3月9日に公表された「とりまとめ(案)の概要」において、6情報のデータコードは、以下の方向性で整備が進められています。

項目 共有方法の方向性
傷病名 ・厚生労働省標準規格「HS005 ICD10対応標準病名マスター」等で活用されているレセプト電算コードを用いて共有可能
・但し、医療現場での情報活用の有用性を考慮し、電子カルテ情報共有サービス上でレセプト電算コードからICD-10コードへ変換して共有することも可能
アレルギー情報 ・厚生労働省標準規格で採用されているコードがない
・まずはテキストデータで共有可能
・将来的なコードによる共有を視野に入れ整備する
感染症情報 ・厚生労働省標準規格「HS014 臨床検査マスター」等で活用されているJLACコードで共有可能
薬剤禁忌情報 ・医療用医薬品に関しては電子処方箋管理サービスで利用する医薬品コード(レセプト電算コード、YJコード、一般名コード)を用いて共有可能
・テキストデータによる共有も可能
検査情報 ・厚生労働省標準規格「HS014 臨床検査マスター」等で活用されているJLACコードで共有可能
・救急・生活習慣病に関するコードに絞って共有可能
処方情報 ・厚生労働省標準規格「HS001 医薬品HOTコードマスター」を活用することを想定
・電子処方箋管理サービスで利用する医薬品コード(レセプト電算コード、YJコード、一般名コード)を用いて共有可能
・今後、処方情報の使用目的を整理し、厚生労働省標準規格「HS001 医薬品HOTコードマスター」の活用も検討
▽出典
厚生労働省|とりまとめ(案)の概要(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001069447.pdf)(PDF)

今後医療機関において、標準規格に対応した仕組みを整備する必要があるでしょう。

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本格的な運用開始前に電子カルテの導入を

今回は、全国の医療機関における電子カルテ情報の共有の仕組み「電子カルテ情報共有サービス」の概要や、共有できる情報、想定スケジュール、医療機関に求められる対応を解説しました。

オンライン資格確認等システムの導入が義務化され、2024年度中に「電子カルテ情報共有サービス」が先行的な医療機関から順次運用を開始されます。2025年度の本格的な運用開始を前に、電子カルテの導入を検討してみましょう。

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