診療所向け電子カルテの運用 - 病院向けとの違い
診療所を開業することになったけれど、勤務医時代に病院で使っていた電子カルテと診療所用のものでは、選定のポイントは違うのだろうか?という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。診療所と病院では、最適な電子カルテは異なります。診療所用の電子カルテを選定・設定する際に注意すべきポイントをご紹介します。
自院に適した操作性/レイアウトを実現する
病院の場合、部門が多数あり、さまざまな職種のスタッフが電子カルテを操作することになります。このため、一人ひとりの要望にすべて応えることはどうしても難しくなりますが、診療所の場合は操作者が数人に限定されるため、こうした要望にもより細やかに対応できる可能性が拡がります。こうした前提を十分に活かして、自院に適した操作性やレイアウトを実現できるよう、電子カルテの設定をしっかりと検討しましょう。
クリニックの収入を決定する要素は患者数といって差し支えありません。安定した経営のためには、診療時間のなかでいかに多くの患者さんを診療するか、また、再来の患者さんをいかに増やすかという2点が特に重要です。ただし、多くの患者さんを診療するといっても、一人ひとりへの対応がおろそかになっては本末転倒です。システム操作などにかかる時間はできる限り短縮して、患者さんの対応に割く時間を確保することで医療サービスの品質を高い水準に維持することを目指します。そこで、定型文の挿入やよく使う機能へのアクセスはワンクリックで実施できるようにしたり、必要な情報を一覧で表示できるにしたりようにするなど、なるべく操作を簡略化するよう設定しておくことは必須と言えるでしょう。また、外注検査の結果をオンラインで確認できるようにしたり、カルテからワンクリックでレントゲンや心電図を開けるようにしたりすることも、システム操作の時間短縮には役立ちます。
また、患者さんからカルテ画面が見えてしまうと、場合によっては告知前の病名や申し送りのメモなどの慎重な取り扱いを必要とする情報が目に入ってしまうこともあります。診察室の状況にあわせて、画面内のレイアウトも適宜変更する必要があるかもしれません。
経営者である院長がすべてを決める
導入までのスケジュールの策定や進捗管理も重要です。病院への電子カルテ導入ほど時間はかかりませんが、利用開始の3~4か月前までには選定を終え、運用の打ち合わせを開始できるよう準備を整えましょう。スケジュールについてはこちらの記事をご参照ください。
また、レセコンも事務スタッフ任せにせず、院長がしっかりと理解したうえで選定し、運用を決定することが大切です。採用した事務スタッフが利用したことのあるレセコンを候補とすることも一案ですが、その場合でも各システムの仕様は院長自身が確認します。問い合わせ窓口の営業時間ややり取りの形態(電話/メール/チャットなど)など、サポートにもしっかりと目を配りましょう。実際に利用するスタッフが希望するサポート形態もヒアリングしながら、最適なシステムを選定します。
院内トラブルのシミュレーションも院長の役目
電子カルテ故障時の対応も、院長があらかじめフローを決定しておき、万が一の場合にも慌てず対処できるようにしましょう。電子カルテのトラブルの原因はさまざまです。たとえば電子カルテが起動しなくなってしまったとき、その原因を即座に見極めることはできるでしょうか?ハードウェアやソフトウェアの故障なのか、インターネット回線の問題なのか、クラウド事業者のサービスにトラブルが発生しているのか……など、考えられる原因は多岐にわたります。問題の切り分けを正確に行い、適切な対処をとるためには、高い専門知識が必要です。院長やスタッフのスキルによっては、院内で対応するという選択肢ももちろんありますが、時間や手間を削減するため、メーカー/ベンダーのサポートを利用することも有効です。自院に適した対応フローを策定し、スタッフにもしっかりと周知して、トラブル時にも迅速に復旧できるよう備えましょう。