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電子カルテ 医師 事務長 2022.12.27 公開

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レセプト返戻が起きる理由と対策

審査支払機関の改革が進み、AIなど最新技術を用いたコンピュータチェックの割合が増加する中、クリニックも効率的な「レセプト返戻」対策を行う必要があるのです。今回は、電子カルテの機能を活用した「レセプト返戻対策」に焦点を当てて解説します。

※本内容は公開日時点の情報です

#開業直後の悩み #レセプトの悩み #機器選定ポイント #業務効率化

目次

レセプト返戻の理由

レセプトが返戻になると、「増減点連絡書(社保)」「返戻内訳書(社保)」「増減点返戻通知書(国保)」がクリニックに届きます。クリニックはその書類を確認し、指摘された項目を適宜修正することで「再請求」が可能です。しかしながら、修正をするのはとても手間な作業ですし、診療報酬の支払いが遅れることから、クリニックは不利益を被るため、「レセプト返戻」をできるだけ減らす必要があるのです。
レセプトが返戻される理由としては、➀診療内容の問題➁事務手続きの問題 に分けられます。以下のように分類された記号が記載されています。

<診察内容に関するもの>
A 療養担当規則等に照らし、医学的に保険診療上適応とならないもの
B 療養担当規則等に照らし、医学的に保険診療上過剰・重複となるもの
C 療養担当規則等に照らし、A・B以外で医学的に保険診療上適当でないもの
D 告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの
<事務上に関するもの>
F 固定点数が誤っているもの
G 請求点数の集計が誤っているもの
H 縦計計算が誤っているもの
K その他

「レセプト返戻」対策

レセプト返戻を減らすために、クリニックでは月末月初にレセプト点検が行われています。方法としては、①院内のスタッフが点検する②外注スタッフが点検する③レセプト点検ソフトなどシステムで点検する などが考えられます。今回は、「院内スタッフ」と「システム」を併用して点検を効率化する方法を考えてみます。
点検項目としては、まず「頭書情報(保険情報)」や「診療回数と実日数の一致」など、レセプトの基本的な情報が正しく入力されているかを確認します。これらは、いわゆる事務上の間違いを探す作業となります。オンライン資格確認が普及することで、頭書情報の間違いは減少すると考えられています。
 次に、「保険診療の算定ルール」に則っているかの確認を行います。診療行為であれば「診療報酬点数表」、医薬品であれば「薬価基準」などを用いて、点検を行うことになります。診療報酬点数表や薬価基準は、2年に1回改定があるのはもちろんのこと、毎月軽微な変更が行われていますので、常に最新の情報で点検を行う必要があります。
このように点検ポイントは多岐に渡るため、システムで一次点検を行ってから、最終点検としてスタッフが行う方式が効率的です。審査支払機関における審査も現在、コンピュータによるチェックが5割を占めており、いずれは9割に引き上げる計画が発表されています。クリニックもシステムによる点検を活用する時代となっています。

レセプトの「システム」による点検

システムによる点検の方法は、電子カルテに搭載されている機能を活用する方法と、レセプト点検ソフトを別途用いる方法、両方を併用して利用する方法などがあります。電子カルテによっては、レセプトの点検レベルが異なるため、電子カルテ選びの際には注意が必要です。中には、返戻対策だけではなく、算定漏れ(本来算定できるのに、算定していないもの)のチェックを行えるものもあります。
レセプト点検の一部をシステム化するメリットとしては、点検にかかる「時間短縮」および「人員削減」、診療報酬改定など変更時のフォローなどが考えられます。システムを活用することでレセプト点検の大幅な効率化が図れるのです。
それであれば、レセプト点検はすべてシステムが行えば良いのではないか、と考えるかもしれませんが、残念ながらシステムには、得意な項目と苦手な項目があり、最終的に、ヒトの目によるチェックは必ず必要になります。システムが得意なものは、病名と薬の適合や薬剤の用量、禁忌等、算定月・回数のチェックなどです。一方、システムが苦手なものは、管理料の算定、指導コメントなどカルテの記載漏れチェックなどです。システムはレセプトのみでチェックが完了するものは得意ですが、カルテとレセプトを比較して行うチェックには苦手であるといえます。

オンライン資格確認で返戻が減少する

「オンライン資格確認」の普及の目的の一つに「レセプト返戻」の減少があります。

2023年4月からの「オンライン資格確認システム」の義務化に向けて、医療機関・薬局での導入が徐々に進んでいます。厚労省の調査によると、2022年11月6時点での普及状況を見ると、「顔認証付きカードリーダー申込数」は19万8541施設で86.3%、「準備完了施設数」が9万1145施設で39.6%、「運用開始施設数」が7万6880施設で33.4%となっています。

(出典)オンライン資格確認の導入について(厚労省ホームページ)

オンライン資格確認の導入によって、マイナンバーカード(マイナ保険証)および従来の保険証を用いて、リアルタイムに保険資格を確認することができるようになります。その結果、医療機関・薬局の窓口では、直ちに資格確認ができるようになります。オンライン資格確認システムにおいて、最新の保険の登録状況が確認でき、保険証が変更になっているか、無資格ではないかなどが分かり、保険診療を受けることができる患者かどうかを即時に確認することが可能となります。その結果、「受給資格の不備」によるレセプトの返戻が減ることが期待されています。

まとめ

「審査支払機関」のレセプト審査は日々進化を遂げています。現在では、AI技術を活用したコンピュータチェックを進め、その比率を「9割」に引き上げようとしています。その背景には、電子請求、オンライン資格確認、そして電子処方箋といった政府のデジタル化政策があります。超高齢社会が到来しているわが国において「医療費削減」は緊急のテーマであり、それに伴いレセプト審査がさらに厳しくなっていくことが予想されます。クリニックもいまこそ、システムを徹底的に活用し、ヒトの負担を減らし、レセプト点検を効率化する方法を検討してみてはいかがでしょうか。

筆者情報

大西大輔

MICTコンサルティング(株) 代表取締役

大西大輔 氏

2001年 一橋大学大学院(MBAコース)卒業
2001年 病院経営コンサルティングファーム「 日本経営グループ」入社
2002年 医療IT機器の展示場「メディプラザ」設立
     東京、大阪、福岡の3拠点を管理する統括マネージャーに就任
2016年 独立して「MICTコンサルティング㈱」を設立

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