バイオバンクの試料は、未来の研究に備えて恒常的に収集され、長期間にわたって保管される。生体試料を安定した状態で保ち続けるために超低温フリーザーが用いられるが、その性能がバイオバンク事業の成功を左右することは言うまでもない。
2020年9月現在、NCGMのバイオバンクには、15台のPHCbiの超低温フリーザーが稼働し、試料の保管
のために活用されている。NCGMのバイオバンクを立ち上げてきた鈴木氏に、PHCbi製品導入の決め手を尋ねると、国内電機メーカーとしての信頼感があるからだという答えが返ってきた。
「ここに保存されている試料の多くは、患者さんの血液や髄液です。多くの研究では温度を一定にして保管しておくことが重要です。血液の成分によっては温度変化の影響を受けやすいため、フリーザーが故障したり、庫内の温度が変わってしまったりしたら、せっかく保存していた試料が研究に使用できなくなる可能性があります。PHCbiは国内電機メーカーですから、地震や台風の影響をきっかけに電圧の不均衡が起きた場合にもコンプレッサー不良などの不具合が起きにくいだろうと考えました」
さらに、鈴木氏はPHCbi製品がデュアル冷却システムを搭載していることも選んだ理由として挙げた。これはPHCbiがTwinGuardと呼んでいる技術のことだ。万が一、ひとつの冷凍回路にトラブルが生じても、もうひとつある冷凍回路だけで庫内温度の上昇を抑えることができる。
PHCbiのフリーザーが導入されたのはバイオバンクが作られた2011年だが、現在のところ、不具合や故障
は発生していない。しかし、この先、大規模な災害や計画停電を伴う非常事態が起こらないとも限らない。バイオバンクに使われるフリーザーは、トラブルが起こったときも、なるべく庫内の試料にダメージを与え
ない仕様が求められる。バイオバンクの使命と未来を見据え、鈴木氏はPHCbi製品を選んだ。
「もちろん通常の性能にも満足しています。特にフリーザー内の温度が非常に安定しているところがいいで
すね。ここにあるフリーザーはすべて、庫内に設置した計測機器で、温度を常時モニタリングしています。
毎朝すべてのフリーザーの温度データがメールで送られてきますが、PHCbiのフリーザーは私の経験した他
社の製品と違って設定した温度に対する誤差が±1℃という非常に小さな範囲にとどまっています。非常
に優秀だと思いますね」
最後にNCGMのバイオバンクの今後について、鈴木氏は次のように語った。
「バイオバンクの目的や方針はそれぞれ異なると思いますが、NCGMのバイオバンクでは研究支援のイン
フラとして役立つことと、無理なく継続していけることを目指していきたいと考えています。これまでどのような研究に活用されてきたかは、ホームページの利活用実績に公開しています」
NCGMのバイオバンクの試料は大学や企業などで多様な研究に活用されている。基礎研究や創薬だけでなく、たとえば、体外診断用医薬品の申請を目的とした性能評価試験や、自社シーズの有用性評価、バイオマーカーの探索などを目的とした企業研究者への提供も行われている。