目次
電子カルテの導入率はどれくらい?
厚生労働省の調査によると、令和2年(2020年)の電子カルテの普及率は、一般病院で57.2%、一般診療所で49.9%となっています。このうち、400床以上の大規模病院では91.2%と、ほとんどの病院で導入が進んでいます。その一方で、200床未満の病院では48.8%となっており、中小規模のクリニックや病院で普及率が低い状況です。
具体的な数値と、平成20年以降の普及率の推移は以下の表を参照してください。
一般病院 | 病床規模別 | 一般診療所 | |||
---|---|---|---|---|---|
400床以上 | 200〜399床 | 200床未満 | |||
平成20年 | 14.2% | 38.8% | 22.7% | 8.9% | 14.7% |
平成23年 | 21.9% | 57.3% | 33.4% | 14.4% | 21.2% |
平成26年 | 34.2% | 77.5% | 50.9% | 24.4% | 35.0% |
平成29年 | 46.7% | 85.4% | 64.9% | 37.0% | 41.6% |
令和2年 | 57.2% | 91.2% | 74.8% | 48.8% | 49.9% |
出典:「電子カルテシステム等の普及状況の推移」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000938782.pdf
電子カルテ導入におけるメリット
電子カルテは、従来の紙カルテを電子データとして作成・保管し、一元管理できるシステムです。他にも、カルテ導入におけるメリットとして、以下の4つがあります。
- 情報を共有できる
- 業務効率が向上する
- ミスの削減につながる
- 院内の保管スペースを減らせる
▽関連記事
電子カルテを導入するメリット・デメリットとは?
電子カルテ導入における課題
メリットがある一方で、電子カルテ導入における課題として、主に以下の6つが挙げられます。
- 初期費用・ランニングコストが必要
- システム開発、サーバーの設置、メンテナンス等が必要
- PC・タブレット等の機器端末が必要
- 患者の個人情報を取り扱うため、セキュリティ費用がかかる
- 運用を軌道に乗せるまで時間がかかる
- 紙カルテのデータを移行する必要がある
それぞれ解説します。
初期費用・ランニングコストが必要
電子カルテの導入が低い理由として、費用の負担が挙げられます。電子カルテの導入には、初期費用だけでなく、毎月のランニングコストや保守費用などが必要です。導入にかかる費用は、メーカーや製品によって異なります。
電子カルテには、院内にサーバー設置を必要とする「オンプレミス型」と、サーバー設置を必要とせず、インターネット回線を利用する「クラウド型」があります。どちらのタイプを選択するかによっても、費用は大きく異なるため、自院に必要な機能を明確にしておくことが大切です。
システム開発、サーバーの設置、メンテナンス等が必要
電子カルテを導入すると、業務を効率化させるために自院の診療科目や特長に合わせ、カスタマイズが必要となるケースがあります。例えば、頻度の高い処方薬のセット化や、疾患名は、電子カルテ導入時にマスタ設定を行います。
また、オンプレミス型の場合、院内にサーバーを設置しなければならず、スペースの確保が必要です。電子カルテの法定耐用年数は5年とされており、定期的な買い替えのために費用もかかります。
PC・タブレット等の機器端末が必要
電子カルテは、これまでパソコンで使用するものが主流でしたが、近年、スマートフォンやタブレット端末などでも使用できるものが増えています。いずれにせよ、電子カルテを導入する際、使用する端末の購入が必要です。
医療機関の規模や診療内容によって、必要な端末や台数は異なります。診察室だけで使用する場合はデスクトップパソコン、訪問診療などで院外に持ち運ぶ場合はノートパソコンやタブレット端末などが適しています。電子カルテをどのような目的で操作するか、よく検討しましょう。
患者の個人情報を取り扱うため、セキュリティ費用がかかる
電子カルテは患者の氏名や連絡先、保険証情報、診療情報などの個人情報を取り扱うため、セキュリティ対策が必須です。
近年、ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)による攻撃など、医療機関においてもサイバー攻撃による被害が生じています。そのため、2023年4月の医療法施行規則改正によって、医療機関等へのサイバーセキュリティが義務化されました。
電子カルテは、不正アクセスや情報漏えいのリスクが高いため、セキュリティ対策は必要不可欠です。
出典:「医療分野のサイバーセキュリティ対策について」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/cyber-security.html
運用を軌道に乗せるまで時間がかかる
電子カルテは、操作に慣れるまで時間がかかるため、運用を軌道に乗せるまで時間を要します。近年の電子カルテは、直感的に操作できるように改良されてきているものの、操作方法を覚えたり、入力するデータが多かったりすると、スムーズに操作できるようになるまである程度の期間は必要となるでしょう。
また、デジタルツールやキーボード操作が苦手なスタッフがいる場合、さらに時間がかかる可能性が考えられます。その場合、タッチペンによる手書き入力が可能な電子カルテやタブレットを活用するのも有効です。
紙カルテのデータを移行する必要がある
紙カルテを使用している医療機関の場合、電子カルテへデータを移行する必要があり、時間と労力がかかるでしょう。何年も紙カルテで運用している場合、全てをデータ化するのは簡単ではありません。
医療機関によって、紙カルテのデータをどこまで電子カルテに取り込むかは異なります。例えば、患者の基本情報と過去1年分をデータ化し、それ以外の履歴は紙カルテとして保管しておき、必要時に参照するのも1つの方法です。
電子カルテの導入費用の目安
電子カルテの普及率が低い要因の1つに、費用の負担があります。電子カルテの種類は、院内にサーバーを設置する「オンプレミス型」とインターネット上のサーバーにアクセスする「クラウド型」の2つです。
電子カルテの導入費用の目安について、それぞれ解説します。
オンプレミス型の費用
オンプレミス型電子カルテを導入する場合、初期費用と保守費用が必要です。院内にサーバーを設置するため、初期費用は約200万〜500万円程かかります。
また、システムの更新費や保守費用といったランニングコストも必要で、保守費用の目安は月額約2万円です。さらに、電子カルテの耐用年数は5年とされており、5年ごとにシステムを買い直す必要があります。その際、再度初期費用として約200万〜500万円がかかります。
なお、この費用の中には電子カルテを使うための端末費用が含まれる場合と、含まれない場合があります。詳しくは電子カルテメーカーへ問い合わせが必要です。
クラウド型の費用
クラウド型電子カルテを導入する場合、初期費用と月額料金がかかります。院内にサーバーを設置する必要がないため、オンプレミス型に比べて費用を抑えやすくなります。初期費用は約10万〜数十万円程度、月額料金は、1万円〜数万円程度が目安です。
月額料金には、サーバーのレンタル料やシステム使用料も含まれることがほとんどですが、PCやタブレットといった端末費用が含まれないことがあります。クラウド型は、電子カルテを使うユーザー数や、外部機器の連携などによって追加費用がかかります。
電子カルテの導入補助金
電子カルテの導入にあたって、中小企業庁による「IT導入補助金」が活用できます。IT導入補助金は、生産性向上を目的とする中小企業・小規模事業者の業務効率化・DX等に向けたITツール導入を支援するものです。
2023年12月の時点で、後期事務局での申請受付が可能です。補助金の申請は、法人単位で行います。補助対象者は「常勤の従業員数が300名以下」の医療法人となっているため、自院が対象となるか公式サイトで確認してみましょう。
補助金の対象は、ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費となります。また、主な補助金の補助率は以下の通りです。
通常枠 (A・B類型) |
デジタル化基盤導入枠 (デジタル化基盤導入類型) |
セキュリティ対策推進枠 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
A類型 | B類型 | ソフトウェア等 |
PC・ タブレット等 |
レジ・ 券売機 |
|||
補助率 | 1/2以内 | 3/4以内 | 2/3以内 | 1/2以内 | サービス利用料の1/2以内 | ||
補助額 | 5万円〜150万円未満 | 150万円〜450万円以下 | 下限なし〜50万円以下 | 50万円超〜350万円以下 | 10万円以下 | 20万円以下 | 5万円〜100万円以下 |
出典:IT導入補助金2023
https://it-shien.smrj.go.jp/about/
IT導入補助金に関して、詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
▽関連記事
【2023年最新版】IT導入補助金 ー 専門家に相談して申請計画を
電子カルテ導入の手順
電子カルテのメーカーや製品にもよりますが、一般的な導入手順は以下の通りです。
- 電子カルテの選定
- 要件の確認とシステム設定
- 試験運用
- 運用開始
電子カルテの導入にあたって、どのような課題を解決したいのか目的を明確にしておくと、自院に適した製品を選びやすくなるでしょう。
電子カルテ導入の流れや手順を詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
▽関連記事
電子カルテ導入の流れとは?運用までの手順やメリット・デメリットをご紹介
クラウド活用型電子カルテのご相談は「Medicom」に
メディコムの電子カルテは約170社の機器と連携できるクラウド活用型で、クリニックの診療方針に合わせた運用が実現可能です。
従来のオンプレミス型にクラウドの技術を活用し、院内 ・院外を問わずカルテ操作が可能なため、訪問診療に活用するなど診療の幅が広がるでしょう。
直感的な操作でスムーズにカルテ入力でき、日々の業務効率化にもつながります。カルテ入力の時間を削減することで、患者とのコミュニケーションに集中でき、患者満足度や診療の質の向上も期待できます。
導入時だけでなくアフターサービスやメンテナンス・最適なソリューション提案など、サポート体制も万全ですので、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
中小規模の病院やクリニックでは、電子カルテの導入率はまだまだ低い状況です。電子カルテの導入に踏み切れない理由には、費用の負担や操作の習得に対する不安なども考えられます。
電子カルテの導入にはIT導入補助金を活用し、費用の負担も軽減できます。また、近年の電子カルテは直感的な操作が可能な製品が増えてきました。メーカーのサポートによって、自院に適した電子カルテの提案や、導入に向けてのアドバイスも受けられるでしょう。