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この記事は、株式会社フェアワーク”健康経営のすすめ”より許可を得て転載しています
経済産業省が企業の健康経営の取組を推進するために、今夏にも「健康経営度(偏差値)」を開示するとの記事が先週末の日本経済新聞に掲載されました。
この記事への反響が非常に大きく、今週は「今後の健康経営の取組はどうなっていくのか?」とご質問いただく機会が多かったので、現時点(2021年4月16日)で経済産業省が公開している情報をまとめました。
健康経営度の偏差値化とは?
健康経営の「偏差値」開示/経産省、今夏にも
記事の概要は以下の通りです。
日本経済新聞 2021年4月11日より
経済産業省は企業が社員の健康を維持する経営をしているかを偏差値のように数値化し、投資家向けに開示する取り組みを始める。今夏にもデータベースにまとめて公開する。メンタルヘルス対策や感染症予防などにより社員が健康に長く働けるようにし、生産性向上につなげる狙いがある。
開示する「健康経営度」は企業の組織や制度のあり方、対策の効果などを数値化する。具体的には、ワークライフバランスの推進や、食生活・運動増進といった生活改善の支援策の有無、メンタルヘルス対策などが十分かどうかを調べる。
2021年度以降に経産省が実施する健康経営度調査で、企業に開示の可否を選んでもらう。それぞれの業界内での立ち位置なども示す。
特に反響が大きかった点
特に反響が大きかったのは上記記事抜粋の一番最後にある「それぞれの業界内での立ち位置なども示す」の箇所です。
健康経営に取り組む優良法人を見える化する制度として、ホワイト500・ブライト500・健康経営優良法人などの表彰制度があります。健康経営の取組・成熟度合いは企業によりさまざまですが、受賞することで社会的に一定の評価を得ることができ、採用や広報などの面でメリットがありました。つまり、これまでは表彰制度で認定されること自体が企業にとっての1つの成果でした。
しかし、記事にあるように「偏差値が公開され業界内で比較される」ようになると、認定されただけでは終わらず「より高い順位(偏差値)を目指すことが求められてくる。どうしよう。。。」というのが、弊社に寄せられた企業様の声です。
一方で、健康経営を推進する経済産業省の立場で考えると、「単に表彰制度受賞をゴールとするのではなく、業界内で切磋琢磨してより質の高い健康経営に取り組んでほしい」というメッセージなのではないかと思います。
経済産業省 第2回健康投資ワーキンググループ(2021/3/11)
日本経済新聞の記事のソースになっているのはおそらく、経済産業省が2021年3月11日に開催した「第2回健康投資ワーキンググループ」です。
健康投資ワーキンググループは健康投資の促進等について検討を行うための組織で、第2回WGでは施策進捗状況に加え「健康経営拡大に向けたアプローチ」について議論がされました。
(なお4月16日時点で公表されているのは開催資料のみで議事要旨は未公表ですので、議論の詳細についてはまだわかりません。)
このアプローチの1施策として「情報開示の促進ー健康経営度調査の回答の一部公表(案)ー」が挙げられています。具体的な開示事項や今後の進め方などのポイントは以下の通りです。
具体的な開示事項(案)
開示事項は以下の2種類です。
1.フィードバックシート
2.健康経営度調査票のうち、経営層の関与やPDCAの取組など他社にとって参考となる重要な項目(3-5項目程度をピックアップ)。
また2点目の健康経営度調査票の開示項目案は大きく以下3分野が検討されています。
①経営層のコミットメント(2020年調査票のQ18)
・経営トップが行っている取組
②健康経営の推進に関する全体的な効果検証(2020年調査票のQ68.69)
・健康経営の実施による課題の改善状況
・個別の健康経営施策の効果検証
③健康課題に対する今後の対応方針(2020年調査票のQ72)
・自社の課題や前年度までの状況を踏まえた健康経営の方向性
開示要請
2021年度の健康経営度調査から、開示の可否を企業が選択する形式になります。2021年度の開示可否は健康経営優良法人認定の評価に考慮されないこととなっていますが、ホワイト500の認定においては「開示可」が要件となる予定です。
今後のスケジュール
開示事項などの詳細は今年の7月頃に健康投資ワーキンググループにて決定されます。また、先行的に2020年度のホワイト500取得企業に対して開示の許諾要請が行われ、今夏頃に試行版が経済産業省HP等で公開される予定です。
おわりに
これまでも経済産業省は健康経営度調査を行っており、健康経営銘柄や健康光景優良法人の認定に調査票を使用していました。また、フィードバックシートの形で健康経営度(偏差値)が各企業に開示されており、各企業はこのフィードバックシートを参考に取組の改善を行っていました。
今後新たに健康経営度が公表されることで、ステークホルダー(投資家に限らず求職者や従業員、取引先なども含まれます)にとっては企業間での比較可能性が高まります。比較可能性が高まること自体は各社が切磋琢磨することでより質の高い健康経営の取組に繋がる良いことです。
一方で本来、健康経営の取組や目的・狙いは各社の置かれている環境(業界・風土など)によって異なるのが当然で、そこに競争の要素が盛り込まれることは、健康経営を推進している担当者の方にとっては今まで以上に手探りの中での対応が求められる状況と言えます。