目次
リハビリ単位
医療保険を算定する際の基準が「リハビリ単位」です。リハビリは医師の指示に基づき行われる医療行為であるため、医療保険が適応されます。また、リハビリ単位は対象疾患や施設基準などによって、1単位当たりの算定できる保険点数が異なります。
1単位20分であるため、実施した時間で単位数を算定します。例えば、60分リハビリを実施した場合は3単位分の疾患別リハビリテーション料が算定できるのです。
1人のセラピストが行える単位数は1日・1週間で上限が決まっています。セラピスト1人につき1日18単位を標準とし、週108単位が上限です。また、1日に行えるリハビリの上限は24単位です。(※1)
リハビリは理学療法士や作業療法士だけではなく、医師または看護師でも算定可能です。ただ、医師や看護師に求められている業務もあるため、実際には理学療法士や作業療法士などがリハビリを実施する場合がほとんどです。
保険点数
保険点数とは、医療行為に対して国が定めた点数です。医療機関はこの点数をもとに、患者から診療費を請求します。
保険点数は、診療報酬点数表という厚生労働省が定める表に基づいて算定されます。診療報酬点数表には、疾患や治療の内容ごとに、算定できる点数が定められているのです。
例えば、大腿骨の骨折をして入院している患者さんがリハビリを3単位(1時間)実施した場合運動器リハビリテーション料(Ⅰ)では1単位185点であるため、185(点)✕3(単位)=555点が算定できる点数になります。
保険点数は1点10円換算して計算するため、この場合は5,550円が請求金額になります。ただしリハビリは医療保険が適応されるので、この金額の3割が自己負担です。また、高齢者になると2割または1割負担になります(所得によっては3割負担)。
疾患別のリハビリテーション料(点数と算定日数)
疾患別リハビリテーション料は、脳血管障害や骨折など特定の疾患に対してリハビリを実施した際に算定可能です。それぞれの疾患別リハビリテーション料には1単位当たりの保険点数、診療報酬を算定できる日数が決まっています。
また、保険点数は施設基準によりⅠ〜ⅡまたはⅢに区分されており、保険点数が異なるのです。算定日数上限を超えた場合でも保険点数は異なります。
疾患別リハビリテーション料の種類は以下の通りです。
- 脳血管疾患等リハビリテーション料
- 心大血管疾患リハビリテーション料
- 運動器リハビリテーション料
- 呼吸器リハビリテーション料
- 廃用症候群リハビリテーション料
「算定日数上限を超えた場合」「疾患別リハビリテーション料」の詳しい内容はそれぞれの項目で解説します。
ちなみに、2022年(令和4年)度診療報酬改定前までは、疾患別リハビリテーション料に職種は明記されていませんでした。改定後は職種ごとにリハビリ1単位における点数が明記されています。しかし、2024年(令和6年)度の改定では職種による点数の違いはありませんでした。(※2)
今後の診療報酬改定で、職種ごとで点数の改定が起きれば、さらに算定内容が複雑になるでしょう。
算定日数上限を超えた場合
算定日数上限を超えた場合は、入院中の要介護被保険者等に対して必要があれば、1ヵ月13単位まで追加で算定可能です。ただし、算定できる疾患別リハビリテーション料の点数は少なくなります。
それぞれの算定日数上限を超えた場合の疾患別リハビリテーション料の点数は各項目の表に記載しています。
脳血管疾患等リハビリテーション料
脳血管疾患等リハビリテーション料は以下の通りです。
施設基準 | 算定上限日数 | 保険点数 | 算定上限を超えた場合の保険点数 |
---|---|---|---|
Ⅰ | 150日 | 245点 | 147点 |
Ⅱ | 150日 | 200点 | 120点 |
Ⅲ | 150日 | 100点 | 60点 |
施設基準Ⅰ〜Ⅱの保険点数は理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・医師以外は算定できません。(※3)その他の職種が算定する場合はⅢになります。
心大血管疾患リハビリテーション料
心大血管疾患リハビリテーション料は、以下の通りです。
施設基準 | 算定上限日数 | 保険点数 | 算定上限を超えた場合の保険点数 |
---|---|---|---|
Ⅰ | 150日 | 205点 | 150日を超えて所定点数を算定できる。(※) |
Ⅱ | 150日 | 125点 |
算定できるのは、理学療法士・作業療法士・医師・看護師による場合と集団療法による場合に上記点数を算定できます。
※:厚生労働大臣が定める患者について、治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合は、150日を超えて所定点数を算定できる。(※4)
運動器リハビリテーション料
運動器リハビリテーション料は、以下の通りです。
施設基準 | 算定上限日数 | 保険点数 | 算定上限を超えた場合の保険点数 |
---|---|---|---|
Ⅰ | 150日 | 185点 | 111点 |
Ⅱ | 150日 | 170点 | 102点 |
Ⅲ | 150日 | 85点 | 51点 |
施設基準Ⅰ〜Ⅱの保険点数は、理学療法士・作業療法士・医師以外は算定できません。その他の職種が算定する場合はⅢになります。
呼吸器リハビリテーション料
呼吸器リハビリテーション料は、以下の通りです。
施設基準 | 算定上限日数 | 保険点数 | 算定上限を超えた場合の保険点数 |
---|---|---|---|
Ⅰ | 90日 | 175点 | 90日を超えて所定点数を算定できる。 |
Ⅱ | 90日 | 85点 |
施設基準Ⅰ〜Ⅱの保険点数は、理学療法士・作業療法士・医師以外は算定できません。
廃用症候群リハビリテーション料
廃用症候群リハビリテーション料は、以下の通りです。
施設基準 | 算定上限日数 | 保険点数 | 算定上限を超えた場合の保険点数 |
---|---|---|---|
Ⅰ | 120日 | 180点 | 108点 |
Ⅱ | 120日 | 146点 | 88点 |
Ⅲ | 120日 | 77点 | 46点 |
施設基準Ⅰ〜Ⅱの保険点数は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・医師以外は算定できません。(※5)その他の職種が算定する場合はⅢになります。
疾患別のリハビリテーション(算定要件)
疾患別リハビリテーションは、集中的なリハビリを行い患者さんの機能回復を促進することを目的としています。この疾患別リハビリテーション料を算定するには、以下の算定要件を満たしている必要があります。
- 対象疾患であること
- 施設基準を満たしていること
- 同一疾患に対して複数の医療機関で算定はできない(注1)
- 月に1回以上、機能的自立度評価法(FIM)を測定していること
- 算定上限日数以内であること(注2)
- 医師の指示があること
- 1日合計6単位に限り算定できる(注3)
注1:医療機関ごとに対象とする疾患が違う場合や言語聴覚士に係る疾患別リハビリテーションについてはこの限りではない。
注2:算定上限日数を超えた場合は、算定単位上限(13単位以内)であること。または、厚生労働大臣が定める患者について、治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合であること。
注3:別に厚生労働大臣が定める患者については1日合計9単位まで算定できる。ただし、2022年(令和6年)度診療報酬改定により、回復期リハビリテーション病棟における、運動器リハビリテーション料は算定上限緩和対象患者から除外された。(※5)
疾患別のリハビリテーションの施設基準
疾患別リハビリテーション料は施設基準によりⅠ〜ⅡまたはⅢに区分されています。それぞれについて解説します。
脳血管疾患等リハビリテーション料の施設基準
脳血管疾患等リハビリテーション料Ⅰ~Ⅲの施設基準は、以下の通りです。
施設基準 | 医師の数(専任の常勤) | 理学療法士の数(専従の常勤) | 作業療法士の数(専従の常勤) | 専従リハビリスタッフの合計数 | 専用の機能訓練室の広さ | その他 |
---|---|---|---|---|---|---|
Ⅰ | 2名以上(注1) | 5名以上 | 3名以上 | 10名以上 | 160㎡ | リハビリに必要な機器・器具が用意されていること |
Ⅱ | 1名以上 | 1名以上 | 1名以上 | 4名以上 |
病院:100㎡以上 診療所:45㎡以上 |
|
Ⅲ | 1名以上 | 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のいずれか1名 |
注1:うち1名は脳血管疾患等のリハビリテーション医療に関する3年以上の臨床経験または脳血管疾患等のリハビリテーション医療に関する研修会、講習会の受講歴(または講師歴)を有すること。
言語聴覚療法のみを実施する場合は、上記表の限りではありません。この場合の基準は、以下の通りです。
施設基準 | 医師の数(専任の常勤) | 言語聴覚士の数(専従の常勤) | その他 |
---|---|---|---|
Ⅰ | 1名以上 | 3名以上 | 遮蔽等に配慮した専用の個別療法室(8㎡)を有しており、必要な機器・器具を用意していること |
Ⅱ | 2名以上 |
心大血管疾患リハビリテーション料の施設基準
心大血管疾患リハビリテーション料Ⅰ~Ⅱの施設基準は、以下の通りです。
施設基準 | 医師の数 | 理学療法士等(専従の常勤) | 作業療法士の数 | 専用の機能訓練室の広さ | その他 |
---|---|---|---|---|---|
Ⅰ | 循環器内科または心臓血管外科の医師が、リハビリを実施している時間帯において、専任の常勤医師が1名以上 | 心大血管疾患リハビリテーションの経験を有する理学療法士または看護師が合わせて2名以上(一方が2名以上でも可) | 必要に応じて作業療法士を配置していることが望ましい |
病院:30㎡以上 診療所:20㎡以上 |
リハビリを行う際に必要な機器・器具を専用の機能訓練室に用意していること |
Ⅱ | 上記内容の基準に該当する医師1名以上(非常勤を含む) | 心大血管疾患リハビリテーションの経験を有する理学療法士または看護師のいずれか1名以上 |
病院:30㎡以上 診療所:20㎡以上 |
リハビリを行う際に必要な機器・器具を専用の機能訓練室に用意していること |
運動器リハビリテーション料の施設基準
運動器リハビリテーション料Ⅰ~Ⅲの施設基準は、以下の通りです。
施設基準 | 医師の数(専任の常勤) | 理学療法士の数(専従の常勤) | 作業療法士の数(専従の常勤) | 専用の機能訓練室の広さ | その他 |
---|---|---|---|---|---|
Ⅰ | 1名以上 | 理学療法士または作業療法士が合わせて4名以上 |
病院:100㎡以上 診療所:45㎡以上 |
リハビリを行う際に必要な器具等を用意していること | |
Ⅱ | どちらかが2名以上または、合わせて2名以上 | ||||
Ⅲ | どちらかが1名以上 | 45㎡以上 |
呼吸器リハビリテーション料の施設基準
呼吸器リハビリテーション料Ⅰ~Ⅱの施設基準は、以下の通りです。
施設基準 | 医師の数(専任の常勤) | 理学療法士の・作業療法士・言語聴覚士の数 | 専用の機能訓練室の広さ | その他 |
---|---|---|---|---|
Ⅰ | 呼吸器リハビリテーションの経験を有する医師が1名以上 | 呼吸器リハビリテーションの経験を有する専従の常勤理学療法士1名を含んだうえで、常勤の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を合わせて2名以上 |
病院:100㎡ 診療所:45㎡ |
リハビリを行う際に必要な機器・器具を用意していること |
Ⅱ | 専従の常勤理学療法士または作業療法士、言語聴覚士のいずれか1名以上 | 45㎡ |
廃用症候群リハビリテーション料の施設基準
廃用症候群リハビリテーション料の施設基準は、脳血管疾患等リハビリテーション料のⅠ~Ⅲの基準に準じます。そのため脳血管疾患等リハビリテーション料Ⅰの基準を満たしていれば、廃用症候群リハビリテーション料Ⅰの算定が可能です。
脳血管疾患等リハビリテーション料の施設基準における専任の医師や専従の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は、それぞれ廃用症候群リハビリテーション料の専任者または専従者を兼ねています。
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診療報酬改定によりリハビリテーション料の算定要件の変更や追加などにより、診療報酬の内容が複雑化してきています。算定漏れや事務作業の負担軽減のためにも電子カルテは有用な手段です。
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まとめ
疾患別リハビリテーション料は、対象疾患、算定日程上限、取得単位数などさまざまな項目をチェックしなければなりません。また効果的なリハビリを提供するためには、多職種間のリアルタイムでの情報共有も必要です。疾患別リハビリテーション料は、リハビリを提供している病院や診療所では大切な収入源です。
診療報酬改定により複雑化している算定要件を確実に満たし、算定漏れを防いだり、データ分析による質向上を図ったりするためにも、適切な情報管理システムが必要でしょう。
▽参考資料
出典:令和6年度診療報酬改定について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html
▽※1~※5:参考資料
【※1】
出典:第7部 リハビリテーション(厚生労働省)(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/topics/2008/03/dl/tp0305-1d_0014.pdf
【※2~※4】
出典:1.個別改定項目について(令和6年2月14日)(厚生労働省)(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001220531.pdf
出典:別表第一 医科診療報酬点数表 診療報酬の算定方法の一部を改正する告示(令和6年 厚生労働省告示第57号)(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001239959.pdf
【※5】
出典:令和6年度診療報酬改定の概要【入院Ⅲ(回復期)】(厚生労働省)(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001224804.pdf
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