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健康経営の効果とメリット
健康経営とは、従業員の健康管理や健康増進の取り組みを経営的な視点で捉え、戦略的に実行する経営手法のことを指します。健康経営の理念と、健康経営が国策として注目されるに至った背景については「①健康経営とは」で解説いたしましたので、よろしければぜひそちらもご参照ください。今回は、企業やそこで働く従業員側にとっての、健康経営に取組むメリットについてお伝えします。経済産業省では健康経営の効果を大きく3つに整理しています。①心身の健康関連(心身の健康増進による生産性の向上)、②組織(組織の活性化)、③企業価値(企業価値の向上)、これら効果の1つ1つが企業業績の向上に繋がり、最終的には企業の持続的成長を実現するとされています。
心身の健康増進
従業員が心身ともに健康な状態で仕事に取組める環境を整えていくことは、良いパフォーマンス、すなわち高い生産性の発揮に繋がります。イライラや不眠などのメンタル面の不調や、肩や首のコリ、腰痛など「出勤して仕事はできるけれど不調を抱えている」状態では、パフォーマンスを100%発揮することはできません。健康日本21フォーラムが発表した「疾患・症状が仕事の生産性等に与える影響に関する調査」によれば、健康な状態での業務遂行能力を100としたとき、メンタル面で不調があると業務遂行能力は6割以下に低下、肉体の不調があると7割以下に低下してしまいます。また、従業員が心身の不調を抱え、仕事への集中力が落ちた結果、事故や不祥事を起こしやすくなります。従業員の健康を管理することは、生産性の向上だけでなくリスクマネジメントの一環でもあり、企業を守ることに繋がるのです。さらに、社員の健康を増進することで社員が健康問題を抱え病院に通ったり薬を服用したりする機会を削減できると、企業にとって大きなコストとなっている医療費の削減にも繋がります。
組織の活性化
健康経営の取り組みは、社内コミュニケーションおよび従業員のモチベーションを向上させ、組織の活性化に繋がります。健康経営に継続して取組んでいる企業への調査によると、健康経営開始後の変化として社内コミュニケーションや従業員モチベーションが向上したと回答した企業が多数ありました。また、社内コミュニケーションが活性化し、従業員満足度やモチベーションが向上することにより離職率が低下します。健康経営度調査に回答した企業の平均離職率は4.6%と、全国平均の11.6%を大きく下回る結果となっています。
企業価値の向上
健康経営に取り組んでいる企業の社会的評価を高めるために、経済産業省や各自治体等による健康経営の顕彰制度が広がっています。一番有名なのが経済産業省による健康経営銘柄・健康経営優良法人で2015年に始まりました。最新の健康経営優良法人2021には9,735法人が認定され5年間で17倍以上に急増しています。健康経営に取組むことで「従業員を大事にする会社」として企業のイメージアップに繋がります。更に健康経営銘柄などの認定を受けた場合にはメディア掲載されるなどのPR効果を得ることができます。研究によると、2015年から6年連続で健康経営銘柄に認定されているSCSK社ではメディア掲載200件、広告宣伝費に換算すると5億円もの効果があったとされています。従業員の健康に配慮している企業、すなわち「働きやすい企業」として認識されることで優秀な人材を獲得しやすくなります。就活生及びその親を対象にしたアンケートでも、就職先に臨む勤務条件として「従業員の健康や働き方への配慮」への回答率が高いことが分かっています。
健康経営の費用対効果
以上のように様々な効果があることはお分かりいただけたと思いますが、実際に健康経営に投資をしてどれくらいの効果があるのか、費用対効果の1例をご紹介します。世界的ヘルスケアカンパニーのジョンソン&ジョンソン社が世界250社、約11万4,000人の従業員に健康教育プログラムを提供し、その投資にどれだけのリターンがあったのかを調べた結果が公表されています。この結果によれば、健康経営の投資(人件費・保健指導利用費・システム開発費/運用費・設備費用)を1ドルとしたときのリターンは3ドルあったとされています。この調査でのリターンは大きく5種類「生産性の向上」「医療コストの削減」「モチベーションの向上」「リクルート効果」「イメージアップ」とされています。このように健康経営の取り組みは、費用対効果の面から見ても企業が戦略的に実行すべき投資だといえるでしょう。