目次
この記事は、株式会社フェアワーク”健康経営のすすめ”より許可を得て転載しています
企業の生産性を測る指標の1つに”プレゼンティーズム”というものがあります。耳慣れない言葉かもしれませんが、プレゼンティーズムとは「何らかの疾病や症状を抱えながら出勤し、業務遂行能力や生産性が低下している状態」を指し、生産性向上や健康経営に取り組む企業からの注目が高まっている指標です。
今回のnoteではプレゼンティーズムを測るメリットや測定方法についてお伝えします。
プレゼンティーズムとは?測定方法を紹介
プレゼンティーズムとは?
企業の生産性を測る方法はいくつかありますが、従業員の方のパフォーマンスに焦点を当てた生産性評価の指標として「プレゼンティーズム」と「アブセンティーズム」があります。
プレゼンティーズム:何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し、何らかの体調不良があるまま働いている状態
アブセンティーズム:病欠、病気休業
一般的には病欠による生産性損失(アブセンティーズム)の方が目につきやすく分かりやすいですが、東京大学の調査によると、生産性損失の研究が先行している米国では「健康の問題を抱えつつも仕事(業務)を行っていることによる生産性損失(プレゼンティーズム)がアブセンティーズムや医療費コストを大きく上回っている」ことが分かっています。
(出典)東京大学政策ビジョン研究センター/「健康経営」の枠組みに基づいた健康課題の可視化及び全体最適化に関する研究
生産性向上のためには、自社のプレゼンティーズムを測定することで従業員がどれだけのパフォーマンスで仕事に取組めているのかを把握し、具体的な改善策を実施していくことが大切です。
プレゼンティーズムの測定方法
経済産業省が公表している「健康投資管理会計ガイドライン」では、プレゼンティーズムの代表的な測定方法として5つの方法が推奨されています。
WHO-HPQ、東大1項目版、WLQ、WFun、QQmethod
いずれの測定方法も確りとした研究に基づいたものですが、生産性向上や従業員パフォーマンスの把握、健康経営推進の観点からは「東大一項目版」が最も適しています。東大一項目版の特長は”測定頻度”と”質問数”です。
(出典)経済産業省/企業の「健康経営ガイドブック」
③WLQ、④WFun、⑤QQmethodは年に1回の測定が前提の時代に開発された測定方法です。年に1回の測定では測定月以外の状態が分からないため改善策を講じるのが難しいということは、ストレスチェックの活用が十分に進まないことと共通の課題です。
近年は従業員のパフォーマンスが日々変化することを踏まえ、より短い頻度(月次)で従業員コンディションを把握する”パルスサーベイ”というツールの導入が進んでいます。
②東大一項目版はこのパルスサーベイとの相性が良く、月次でプレゼンティーズムを測定することで社内施策の効果を把握できるだけでなく、従業員自身が結果を振り返ってセルフケアに活用することもできます。
プレゼンティーズムと労働生産性損失の関係
プレゼンティーズムの測定結果を用いることで企業の労働生産性損失額を算出することができます。計算式は以下の通りです。
労働生産性損失額(円)= プレゼンティーズム損失割合(%)✖ 賃金(円)
プレゼンティーズム損失割合(%)= 100% ー プレゼンティーズム(%)
プレゼンティーズムの測定方法によって結果(平均値)は異なりますが、東大一項目版の場合、日本人の平均は84.9%(プレゼンティーズム損失割合は15.1%)とされていますので、平均的な企業では15%✖人件費分の生産性損失が生じていることになります。
また自社のプレゼンティーズムを把握することで、健康投資が生産性向上の観点でどの程度の効果があったのかを”金銭的に”評価することも可能となります。
まとめ
今回は生産性を測る指標としてプレゼンティーズムをご紹介しました。生産性向上や健康経営に取り組んでいる企業は多いと思いますが、実際に自社の取組の効果や従業員の方のパフォーマンスを把握できている企業は多くありません。