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ストレスチェックの目的と集団分析の重要性
皆さまはストレスチェックを受験されたことはございますか?2018年に厚生労働省が実施した調査によると、ストレスチェックの実施率は79%となっており、多くの方が受験された経験があるかと思います。何故これほど実施率が多いかというと、2015年の「労働安全衛生法」の改正により50人以上の労働者がいる事業所では1年に1回、すべての労働者に対してストレスチェックを実施することが義務付けられたからです。しかし、ストレスチェックが義務として実施されていても、その目的や活用方法については十分な理解が広まっていないのが現状です。そこで、今回はストレスチェックとはそもそもどういったものか、その目的や活用方法について解説していきます。
ストレスチェックの目的
ストレスチェックの目的として、まずは労働者自身が自身のストレス状況を知り、精神的不調に陥る前にストレスへ対処するきっかけを見つけ、未然に精神的不調を防ぐという目的があります。また、企業側としては、職場のストレス状況を把握することができます。そして、過度なストレスがかかっている部署があれば人員の異動や仕事量、仕事内容の調整を行い、働きやすい職場作りを実施できます。この働きやすい職場づくりが生産性の向上や休職や離職の防止などの企業にとっての大きなメリットをもたらします。また、組織的な改善だけでなく精神的不調に陥ってしまった労働者個人のケアを実施することもストレスチェックの目的です。例えば高ストレス者に対しては産業医面談や医療機関への受診へつなげて適切なケアを実施する必要があります。精神的な不調は、発見が遅れるほど回復に時間がかかるため、深刻化する前の早期のうちに医療機関へ受診するよう支援が必要なのです。こうした理由から、ストレスチェックは定期的にストレス状況をチェックすることで精神的な不調をケアするために必要不可欠な制度なのです。
ストレスチェックへの抵抗感
労働者によってはストレスチェックを面倒と考える人や、高ストレスを抱えていても産業医面談を申し出ない人もいます。その理由としては、以下のような理由が挙げられます。①会社側に結果を知られるのが怖い。②高ストレス者になったら、閑職へ異動させられるかもしれない。③産業医面談していることを周囲に知られたくない。皆さまの中にもこのような不安を感じる方はいらっしゃるかと思います。しかし、ストレスチェック制度は労働者に非常に配慮された制度ですので、上記のような心配はないといえます。
まず、① 会社側に結果を知られるのが怖いという心配について、前提として本人が同意しない限り、ストレスチェックの結果は会社側に開示されません。これは国の指針によって規制されており、個人結果は本人にしか送られず、本人の許可なく上司や人事部に閲覧される心配はありません。また部署ごとの分析をされることはありますが、匿名での分析かつ個人が特定されるような少人数の集団での分析はできないよう定められていますので、「上司に結果が知られるのが怖い」と心配することはありません。
次に② 高ストレス者になったら、閑職へ異動させられるかもしれないという心配についても、①と同様に上司や人事が本人の同意なしにストレスチェックの結果を閲覧することはありません。そのため、高ストレス者となったとして、急に異動をさせられるリスクはありません。
最後に、③産業医面談していることを周囲に知られたくないという心配について、近年では産業医面談を希望した労働者のプライバシーに配慮し、社外に「健康相談窓口」を設けて気楽に産業医面談の申し込みをできるようにする取組みが広まっています。また、面接の申し出をオンラインで受け付け可能にするなど、人目や手間を気にせずに申し込みができるような工夫がされるようになりました。さらに、面接をする場所を社外としたりオンライン会議ツールを活用したりする企業も増えてきており、面談申し込みの敷居を下げるための工夫が広がってきているといえます。
集団分析とは
部や課などの集団ごとに高ストレス者が多い集団などを発見し組織改善を実施するために企業側は「集団分析」という形で、部や課ごとのストレス状態を調べることができます。
ただし、企業はストレスチェックの個々の結果を本人の同意なしに見ることはできませんので、10人以下の個人が特定されるおそれがある集団での分析はできません。10人以下の集団の場合は、10人すべての人が開示に同意することが必要です。分析結果としては「仕事のストレス判定図」を活用します。これは、「仕事の量的負担・コントロール判定図」と「職場の支援判定図」という2つの図から構成されています。この図は「仕事の量的負担」や「コントロール」についてと、職場における「上司の支援」と「同僚の支援」について点数化し組織の状態を可視化します。これらの点数を全国平均と比較して、集団のストレスがどの程度なのか、必要なサポートが整っているのかを知ることができるのです。