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紙カルテから電子カルテへの移行を考える
紙カルテから電子カルテへ移行したいと思った場合、どういう選択肢があるでしょうか。よく発生しがちな課題と、データ移行の考え方について解説します。
電子カルテへの移行を考え始めたら?
まずは、どうして電子カルテの導入をしたいと思ったのか?について整理してみましょう。昨今、様々な分野におけるIT化が一般的になり、カルテについても電子化するのが当たり前いう風潮がでてきました。実際、新規開業するクリニックの70%以上は電子カルテを導入しています。カルテの電子化にあたっては、クリニック内の運用が大きく変わるため、移行がこんなに大変だと思わなかった…、患者さんをお待たせする時間が長くなってしまった…というクリニックが少なからず存在しています。一方、電子化におけるメリットを感じているクリニックもたくさんあります。明暗を分けるのは、医師だけでなく、事務スタッフや看護師などクリニックで働くメンバー全員の協力を得られているかがポイントです。
電子カルテの選定にあたっては、今使っているレセプトコンピューターにつながるメーカーを選ぶという視点だけでなく、クリニック全体の課題は何か?運用を改善するためにはどんな電子カルテが必要か?という視点で見直してみましょう。
紙カルテから電子カルテに移行するメリット
紙カルテを使用している病院やクリニックが電子カルテに移行することには、以下のようなメリットがあります。
情報管理の即時性
メリットの1つ目は情報管理の即時性です。電子カルテはパソコンやタブレットなどを使用するため、記入した情報を素早く保存できます。また、保存したカルテを簡単に確認することも可能です。
例えば、パソコンで患者さんの診察内容を打ち込み、データを残します。後日、患者さんのカルテを確認したい場合は、パソコンから短時間で必要な情報を探し出せるのです。電子カルテは紙カルテに比べて、情報管理がしやすく、効率的に作業を進められます。
ミスの防止
メリットの2つ目はミスが防止できることです。電子カルテはパソコンやタブレットに記入するため、カルテの文字を判読できないということや、書き間違えが減ります。紙カルテの場合、担当医のみが分かる文字で書いているというケースも少なくありません。その場合、緊急時に他の医師や看護師が読めずに対応を誤ってしまう危険性があります。電子カルテの導入により、書き間違いや読み間違いを原因とするミスを減らせます。
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紙カルテから電子カルテに移行する際の注意点
紙カルテを使用している病院やクリニックの中には、電子カルテへの移行を検討しているところがあるでしょう。しかし、紙カルテから電子カルテへの移行には、いくつかの注意点があります。
運用に適した電子カルテ選定
病院やクリニックで紙カルテから電子カルテに移行する場合、運用に適した電子カルテを選定しなければいけません。なぜなら、病院やクリニックの規模、そして診療科によって、適した電子カルテが異なるからです。
例えば、大病院の場合は全ての部門が情報共有できる環境を作らなければなりません。そのため、大容量のサーバーが必要になります。また、クラウド型とオンプレミス型のどちらの電子カルテを選ぶのかによって、初期費用や設備の設置場所などが異なります。
電子カルテは、病院やクリニックの規模や診療科に適したものを選びましょう。今後、紙カルテから電子カルテに移行を検討している場合は、事前に複数の業者へ相談してみることをおすすめします。
過去の紙カルテ情報のデータ移行
現在使っているレセプトコンピューターを継続する場合において、考えなければならないのは、紙カルテのデータをどう管理していくか?という部分です。紙で書き溜めたカルテ2号紙をPDFで取り込むというケースもあります。その一方で、全てを一度に電子化するのも負担が大きいので紙のまま回し、新しい診療内容から電子カルテに記載を始めるというクリニックも多くあります。
もし、レセプトコンピューターを含めて一新をする場合、多くのメーカーにおいては、オンライン請求に使用しているレセプトデータを用いた移行ができます。その場合、一般的には、患者IDや生年月日、保険情報などの患者さんの基本情報、病名、診療行為などのコストについての移行が可能です。お使いのメーカー、移行するメーカーによって異なる場合があるため、詳細については担当者にご相談ください。
紙カルテの電子化はクリニック運営のターニングポイントになります。スムーズに移行するために事前準備をしっかりしていきましょう。ぜひ一度、メディコムにご相談ください。
紙カルテから電子カルテの移行方法について
紙カルテから電子カルテに移行する方法には、いくつかあります。全部移行すると時間がかかるので、自院の人員や費用に合わせてどの方法を利用するかを考えてみましょう。
紙カルテと電子カルテを併用する
紙カルテを参考にしながら、電子カルテを利用する移行方法です。例えば、再診の患者さんが来られたら、これまでの紙カルテの情報をもとに電子カルテを入力します。手間はかかりますが、少しずつ進めることで、必要なカルテの情報を電子カルテに移行することができます。
期間を区切って入力をする
紙カルテの数が少なければ、これまでの紙カルテをすべて入力する移行方法があります。ただし、紙カルテの数が多いほど時間と人手が必要です。「今月は3ヵ月以内に通院している患者さん」のように、現在からさかのぼって期間を区切ります。同じように、少しずつ進めることで業務の負担を少なくすることができます。
紙カルテをスキャンする
紙カルテをすべてスキャンしPDFとして取り組む方法もあります。すべて取り込んでおけば、急に来られた患者さんでも、紙カルテを探す時間と手間を減らすことができます。一日何枚と決めてスキャンすれば、スタッフの手間を減らすことも可能です。
電子カルテ操作の研修
病院やクリニックが新たに電子カルテを導入するにあたり、スタッフへの研修制度やマニュアル等の準備が必要となってきます。
電子カルテは多機能であるため、スタッフ全員が操作方法やルールを理解しなければなりません。
患者さんの病歴を確認するためには、「カルテの保存」や「閲覧方法」などをスタッフ全員が共通のルールに基づいて理解していなければ、日常の業務に支障が出てしまいます。
電子カルテ操作の研修をする場合は、マニュアルの準備や専門スタッフを手配などの体制を整えてください。そして、業務がスムーズに行える環境を作れるようにしましょう。
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紙カルテの電子化におけるガイドライン
従来使用していた紙カルテや他院からの診療情報提供書などをスキャナで電子化して保存する場合は、厚生労働省が定める「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に従う必要があります。
精密な技術で保存した場合でも紙などの媒体の記録をスキャナで電子化した場合、同等の精度とはなりません。一方で、電子カルテを導入した後に従来の紙カルテの情報が混在するとスムーズな業務の妨げになるため、慎重に電子化して体系的に電子カルテを使用できる仕組み作りが必要となります。
紙カルテの電子化をする際にはガイドライン上どのような決まりを守らなければならないのか詳しく見てみましょう。
▽参考記事
厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第 5.2 版」(PDF)
精度は300dpi、RGB各8ビット以上
電子化した文字や画像がつぶれて判読できなくなることを防ぐため、紙カルテのスキャナには一定の精度が定められています。具体的には、精度は300dpi、RGB各8ビット以上のスキャナを使用することが求められます。しかし、一般的に市販されているスキャナは通常であればこの基準を満たしているので、スキャナの精度が問題となることはないでしょう。
できるだけPDF形式で保存する
紙カルテを電子化する際に用いるフォーマットには特別な指定はなく、誰でも簡単に見られることが条件とされています。しかし、一般的にはPDFが使用されることが多く、特殊な事情がない限りはAdobeのPDF形式で保存するのがよいでしょう。
紙カルテは廃棄してもよい
医療法ではカルテをはじめとした診療の記録は少なくとも5年間は保管していくことが定められています。しかし、紙カルテを電子化して保存した場合はその限りではなく、紙カルテは破棄してよいことになっています。紙カルテの保管は広いスペースが必要であるため、電子化して保存すると無駄なスペースを減らして別の作業スペースなどを作ることが可能です。
ただし、紙カルテを破棄する場合は個人情報の取り扱いに十分注意して、業者に依頼するなど適切な対策をしましょう。
改ざん防止のためスキャンは1~2日以内に行う
他院からの診療情報提供書など紙媒体やフィルムの記録を電子化する場合は、改ざんを防ぐために、情報を手にしてから1~2日以内にスキャンすることが定められています。スキャンは遅延なく行うことが求められていますが、時間外診療などでスキャナが使用できない場合は、使用できるようになった時点で速やかに行う必要があります。
決めておくべきクリニックのルール
紙カルテから電子カルテの導入にあたって、大きく変わる部分では、紙やペンではなく、パソコンの操作が必須となることです。当たり前のように感じますが、パソコン自体の電源をつける、インターネットへ接続する、アプリケーションを立ち上げるなど、紙カルテではなかった事前準備が発生します。普段パソコンに慣れている方であれば操作自体の問題はないですが、システムが立ち上がっておらず診療が遅れてしまった…というような小さなタイムロスを起こさないためにも、誰が、いつ電源をいれて立ち上げるかなどについてのルール決めをしておきましょう。
他にも、今まで紙カルテと一緒に回していた、申し送りなどのメモや検査結果の運用についても決める必要があります。電子カルテによっては申し送りを入力するスペースがあります。複数の記入枠があるメーカーもあるので、用途によって使い分けることもできます。しかし、最初から全て電子化してしまうことによって混乱が生じてしまうこともあります。そのため、メモや申し送りはクリアファイルに入れて、今までと同じように回すという選択もひとつです。
紙カルテの電子化はクリニック運営のターニングポイントになります。スムーズに移行するために事前準備をしっかりしていきましょう。ぜひ一度、メディコムにご相談ください。
オンラインデモはこちら。
まとめ
医療の現場でも電子化はどんどん進んでいます。従来は紙カルテを使用していた医療機関でも新たに電子カルテを導入するケースも増えており、他院からの診療情報提供書を電子カルテに取り込むなど紙媒体の情報を電子化する機会も多いでしょう。
紙媒体の情報は容易に電子化できますが、一定の精度を保って電子化するには今回ご紹介したようにいくつかのルールがあります。紙媒体の情報を電子化する場合は、厚生労働省が示す「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」をよく理解して、適切な運用をしていきましょう。