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地域住民と入居者に対し、より標準的な医療提供を
社会福祉法人イエス団 あらた診療所は、2020年6月にオープンした特別養護老人ホーム「真愛あらたホーム」の併設医療機関として、同年9月に開院しました。地域包括ケア推進の拠点として施設の入居者(定員110人)だけでなく、地域住民への医療提供施設の役割も担っています。
院長の山下修司先生は、神戸市立医療センター西市民病院で内科、呼吸器内科医として、救急・急性期医療や呼吸器疾患の専門治療に従事していたところ、イエス団から要請を受けて就任しました。「地域住民の医療ニーズに応え、幅広く一次医療を提供したい」(山下先生)という想いから就任に至ったそうです。「疾患の初期対応や治療、予防医学など幅広く地域医療を担いながら、特養での健康管理、医療も担当する診療所を開設するという話を伺い、医療的なサポートができたらと引き受けました」(山下先生)
山下先生が掲げる診療理念は、年齢や疾患、個々人によって必要とされる医療・福祉が多様化する中で、総合内科・呼吸器内科の専門医として知見を生かしながら、多くの職種や地域の担当者と協力してホームや地域で安心してすごせるための診療所を目指すこと。特に心がけていることは、医療の変化をとらえながら、より標準的な治療を提供することだと言います。
「医療は日進月歩でアップデートされます。ところが、長く臨床に携わっていると、慣れた治療や処方を続けてしまいがちです。できるだけ新しい知見を取り入れ、最新のエビデンスに基づいた標準的な治療を提供したいと考えています。新型コロナウイルスの各種検査法、経口薬も登場するように、ある薬や治療が当診療所で受けられないといったことは避けたいと思っています」(山下先生)と、最新の標準的治療提供の真意を説明します。
診療所開設1年半は午前中の外来診療と午後の入居者の回診を行いながら、発熱外来にワクチン接種などのコロナ対応、さらに系列の小規模多機能住宅・サービス付き高齢者向け住宅・デイサービスなど多施設の利用者・職員の感染症対策とめまぐるしい日々だったと振り返ります。そんな多忙な業務の一端を支えたのが、医事一体型電子カルテシステム「Medicom-HRシリーズ」です。
迅速・細やかな運用サポートに期待
電子カルテシステムの導入検討は、診療所開設前からかかわっていたという山下先生。3社の電子カルテシステムのデモンストレーションとプレゼンテーションを受け、Medicom-HRシリーズが採用されました。病院向け電子カルテシステムを使い続けてきたものの、短時間の操作で判断するのは難しいと感じていたと話し、3社のシステムのデモを受け、大きな違いは見出せなかったものの、比較的カスタマイズ性に優れ融通が効きそうだという印象を持ったことです。
採用を決定づけた大きな理由は、システムトラブルが発生したときの迅速な対応や運用へのアドバイスなどのサポートに期待したことにあると指摘します。病院での電子カルテ運用では、何かあったときに医療情報部に連絡すれば迅速に解決できた経験から、同様に連絡すれば即座に対応してくれることに期待できた点。地域に密着したサポート提供が特徴のメディコムですが、販売代理店が診療所から2キロメートルほどの距離にあり、素早い対応が見込まれたからだと言います。
実際、操作がわからないとき、あるいは普段できていたことができなかったときなど、ネット経由(VPN接続)のリモート操作や電話で対応。「長時間かかることもなく、その場でほぼ解決してくれます。急ぎでない場合は、後で詳しく聞くこともあります」(山下先生)とし、病院でのトラブル対応とほとんど変わらないと言います。
使ってみて実感する業務を効率化する数々の機能
導入検討時は気づかなかったものの、「実際に利用してみると非常に有効な活用ができると感じた機能が多々ある」と言う山下先生。その1つが、患者をグループ化して管理する機能です。
特別養護老人ホーム 真愛あらたホームは、入居者110人が3フロア(1フロア4ユニット)で療養しており、入居者の診療情報をフロア・ユニット単位でグループ化して管理しています。「病院のシステムにおける病床管理機能と同様に患者カルテ管理できるので、回診の際にグループリストによって素早くカルテを開けるため便利です」(山下先生)
また、回診の際はモバイルルーターとノートPCを使って電子カルテにリモートアクセスし、療養者のカルテ参照・入力も実施。特に「当初は各療養者の症状などが把握し切れておらず、カルテ情報を確認したり、検査データを確認したり、あるいは施設所属の看護師への経過説明などにも有効に活用できた」(山下先生)とのことです。
カルテ入力に便利な機能では、各種診療業務や検査依頼、処方などをセット登録してワンクリックで呼び出して入力できるワンタッチセット入力を多用し、効率的でスピーディーなカルテ入力を実施しています。例えば、外来の健診カルテや入居者健診などでは検査・測定項目と単位などを事前登録し、検査結果・数値やコメントを入力するだけ。また、COVID-19初診カルテやPCR検査依頼は頻繁に使用され、外来診療時間(午前中)に10人を超える発熱患者を受け入れた際に効果を発揮しました。
また、カルテ内容を簡単な操作でテンプレートに貼り付けることで、スピーディーに患者文書を作成できる文書作成機能も日常的に利用されています。頻繁に使用する文書としては、連携医療機関への診療情報提供書(紹介状)や介護認定度判定の際の主治医意見書などの作成を支援。
さらに、この2年間はPCR検査結果により保健所に届け出る「新型コロナウイルス感染症発生届」では毎日相当量の作成業務を軽減することができたと言います。「保健所への発生届は、検査結果が戻ってくる時間が遅くなるので、必然的に作成が遅い時間になります。テンプレートを使用することで作成時間を短縮できました。また紹介状は、診察後すぐに患者さんは病院へ向かってもらい、到着前に作成してFAXで送信することもできます」(山下先生)
地域住民の生活を支援する医療へ
前任の病院で最初頃に紙カルテを使用していた経験もある山下先生ですが、電子カルテを運用するメリットは診療データの蓄積・参照だと指摘します。「電子カルテの有用性を挙げるとするなら、過去カルテの情報を素早くたどれること。検査データも時系列グラフで見ることができなど、経過を素早く把握できる」(山下先生)からです。地域住民に対して、身体機能の改善や日常生活をささえる医療の提供を目指す山下先生にとって、患者状態の経過や治療効果を的確に把握する上で電子カルテ運用は欠かせないようです。
一方、「使用していると、細かな操作方法でわからないこと、システムトラブルもあります。そうしたとき、迅速にサポートしてくれる体制が重要でしょう。また、自分でやりたい処理に対する機能が実装されていない場合でも、運用方法でカバーできるノウハウを提供してくれる販売代理店などがあることが望ましいと思います」。山下先生は、電子カルテ導入を考えている方へこうアドバイスしています。
社会福祉法人イエス団 あらた診療所
住所:兵庫県神戸市兵庫区荒田町3-47-1
診療科目:内科・呼吸器内科
開業日:2020年9月1日
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