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クリニック経営 医師 事務長 2023.07.14 公開

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医療DXとは?メリット・デメリットや医療業界におけるDX事例を紹介

「DX」とはデジタルトランスフォーメーションのことですが、デジタル技術によって製品やサービスをより良いものへと変革することを指します。現在、さまざまな分野がDX化を目指していますが、医療業界もその一つです。今回は、医療DXのメリットやデメリットについて実際の動向や事例も含めて詳しく解説します。

※本内容は公開日時点の情報です

#業務効率化 #紙カルテの電子化 #医療政策

目次

医療業界の課題とは?

日本は現在、世界一の長寿国として知られています。医療の発展によって不治の病とされていた病気にも有効な治療法が開発され、社会のさまざまな場面で安全対策が行き届くようになったことで不慮の事故で亡くなる人も減っています。

しかし、長寿国になったからこそ以前は問題とならなかった課題も多くなっているのが現状です。まずは、現在の医療業界の課題について詳しく見てみましょう。

超高齢社会と社会保障費用

現在、厚生労働省による2021年の簡易生命表では日本の平均寿命は男性81.47歳、女性87.57歳であり、世界一の長寿国となっています。一方で、出生数は年々減少しており、2007年には人口の21%以上が65歳以上の高齢者である「超高齢社会」に突入しました。

超高齢社会では医療や介護の需要が高まり、日本の社会保障費用は年々増大しています。2023年は134.3兆円の社会保障給付費が必要になると考えられており、これはGDPの23.5%を占めるとされています。

日本は全ての人が必要な医療や介護のサービスを受けることが可能です。しかし、働き手の人口が減っていく中で社会保障費用が増大しているため、次世代に渡って現状の社会保障の持続が可能であるか疑問視する声も上がっています。社会保障の質を維持しつつ次世代が安心して暮らせる社会をつくることが医療業界の課題の一つといえます。

安全保障と危機管理

日本は災害大国とも呼ばれており、台風や地震など人々の健康を損なう自然災害が毎年のように発生しています。また、2020年から流行した新型コロナウイルス感染症など世界は新たな感染症の脅威にもさらされています。

こういった社会の中で適切な安全保障と危機管理の仕組みを確立して人々の健康を守っていくには、行政機関などと連携しながらさまざまな情報を一元管理して活用する場面も少なくありません。情報を活かして安全保障や危機管理を行うには、セキュリティ対策を強化しながら、より効率的かつ安全に医療や介護の場に活かせる仕組みづくりが求められています。

▽参考記事
厚生労働省『令和3年簡易生命表を公表します』(PDF)
厚生労働省『社会保障の給付と負担(マクロベース)』

医療DXとは?

医療DXとは、保険・医療・介護に関する情報やデータを活かして病気の予防やより良い医療と介護の実現を目指すために社会や生活を変えることを指します。医療には、病気の予防、病院への受診、治療、介護などさまざまな段階があります。それぞれの段階からは健康診断、カルテ、診療報酬などから多くのデータを得ることが可能です。

医療DXでは、それらのデータを活かしてオンライン資格確認や電子カルテ情報の標準化などを行います。そして、患者さん自身が病気の予防に取り組み、効率的に医療や介護の資源を活用できるようにする仕組みを整えていくことが課題となります。また、得られた情報を新たな薬剤や治療法に役立てることも医療DXの柱の一つです。

医療DXの取り組み

では、医療DXでは具体的にどのような取り組みが行われているのでしょうか?現在行われている取り組みの一部を詳しくご紹介します。

オンライン予約

従来の日本の医療機関では、診察の予約制度はあったものの、電話や受付へ出向いて行うのが一般的でした。診察の予約をオンラインでできるようになると患者さんの利便性が高くなるだけでなく、医師のスケジュール管理なども最適化されるため無駄な時間やコストを抑えることが可能となります。

また、予約のキャンセルもオンラインでできるようになることで手続きが簡便となるため、無断キャンセルを減らすことにもつながります。その結果、全ての診療時間を効率よく回せるようになると考えられます。

オンライン診療

オンライン診療は、新型コロナウイルス感染症の拡大によって時限的に初診時から実施可能となったことで急速に普及しました。オンライン診療は自宅や職場からビデオ電話や電話などのデジタルツールを用いて受診できるため、通院の手間を省くことができます。また、感染症予防にもなるため今後もさらに拡大していくことが予想されます。

また、オンライン診療は利便性が高まるだけでなく、医療過疎地でも専門的な医師の診察を受けることができるため医療格差の是正にもつながります。

ビッグデータの活用

各医療機関、介護事業者、自治体が保管するレセプトや診療情報などの膨大なデータを新しい薬や治療法の開発に活かす取り組みが行われています。また、各機関の情報が統合されることで患者さんそれぞれの健康課題が明確化するため、病気の早期発見につなげることが可能となるのです。

さらに、必要な全ての情報が一元化されるため治療方針も立てやすくなり、より良い医療や介護を受けることが可能となることで健康寿命延伸にも役立つと考えられています。

医療DXのメリットとは

医療業界はプライバシー性が高い情報を扱うため、他の業界と比較するとデジタル化が遅れているのが現状です。しかし、医療DXは現在の医療業界の課題を改善するために今後も推進の動きは加速することが予想されます。では、医療DXにはどのようなメリットがあるのか詳しく見てみましょう。

医療や介護の効率化と質の向上

医療DXを推進することによる大きなメリットの一つとして、さまざまな情報のデジタル化と共有によって医療・介護の効率や質を高めることが挙げられます。

これまで、医療や介護に必要な情報は、患者さん自身や医療機関、自治体、介護事業者がそれぞれ別個に保管しており、必要な他機関の情報を得るには煩雑な手続きが必要でした。そのため、必要な情報の見落としが生じていたケースも少なくありません。全ての医療情報をクラウド化して共有することで不必要な手間を省くことができるだけでなく、診療、治療、介護の質を高めることができるようになります。

コストの削減

現在、多くの医療機関が経営難にあるとされており、閉院を余儀なくされるケースも少なくありません。その結果、患者さんの医療アクセスが悪くなるばかりでなく、閉院に至らない場合でも、最適な医療を提供する余裕がなくなる可能性があります。

医療や介護に必要な情報を一元化して、管理しながらいつでも共有することができるようになると、これまで必要だった診療情報提供書のやり取りなどが不要になります。その結果、人件費などのコストを削減することができ、医療機関や介護事業者の経営状況の改善につながります。

利便性の向上

医療DX推進によって開発されたWeb問診やオンライン診療などのサービスは、これまで必要だった紙による問診票の記載などを簡素化させ、通院の手間を省くことができるなど患者さんの利便性を大きく向上させました。また、医療情報が各機関で共有されることでこれまで受けてきた健診や予防接種、診療、投薬の情報などを患者さん自身が説明したり、必要書類を提出したりする必要がなくなります。

今後もさまざまなサービスの開発やより良いシステムの構築が行われ、患者さんの利便性がさらに高まっていくことが期待されています。

データの保存性

これまで、日本の医療機関は紙カルテなど長期間の保存には不便な方法で情報が管理されてきました。近年では電子カルテが普及してきましたが、単体のサーバーのみで管理されていると自然災害などが生じたときに全てのデータが消失する可能性があります。

一方、医療DXで目指されている全医療情報の共有化はそのような消失リスクはありません。自然災害が生じて各機関のサーバーが破損しても、必要な情報をクラウドから引き出すことができます。

▽関連記事
もしもの際にも安心のデータバックアップ&セキュリティ。メディコムの医事一体型電子カルテ「Medicom-HRf Hybrid Cloud」はこちら。

医療DXのデメリット

医療DXは効率よく安全な医療や介護の実現を可能にすると考えられていますが、一定のデメリットも指摘されています。医療DXにはどのようなデメリットがあるのか詳しく見てみましょう。

デジタル格差

医療DXによって広まったオンライン診療は過疎地でも専門的な医療を受けることを可能にしました。医療格差を是正するのに役立つのも事実ですが、デジタルツールを使いこなさない高齢者などはオンライン診療といった医療DXの産物を活用することができません。

このようなデジタル格差によって受けることができる医療や介護にも格差が生まれることが懸念されています。

セキュリティ管理

医療業界が扱う情報は患者さんの診療情報など極めてプライバシーが重視される情報です。そのため、情報を一元化して管理するにはハッキングなどによって外部に漏洩しない確固たるセキュリティ管理が求められます。

今後、全国医療情報プラットフォームが構築されていくには全体としてセキュリティ管理のシステムを仕上げていくことも大切ですが、医療業界に関わる全ての人が個々人でセキュリティ管理の意識を高めていくことも必要です。

導入コスト

医療DXは将来的に考えれば医療業界全体のコスト削減につながります。しかし、新たなパソコンなどのデジタルツールを導入するには一定のコストがかかるのも事実です。

上述したように、現在の医療機関や介護事業者は経営状況が順調ではないケースも多く、デジタルツールの導入が経営圧迫につながってしまうことも少なくないでしょう。政府は中小病院や診療所などの負担を最小化できるように標準型のレセプトコンピューターの提供を検討したり、補助金制度も導入していますが、全国に広めるには莫大な導入コストがかかると考えられます。

▽参考記事
最新の補助金制度について、詳しくはこちら

医療従事者のITリテラシー

デジタルツールを医療や介護の場に活用していくには、医療従事者もITリテラシーを高める必要があります。デジタルツールにトラブルが発生したときの対応、アップグレードやメンテナンスの作業も行わなければなりません。

このようなデジタルツールに対する知識やスキルが十分でない医療従事者も多いため、デジタルツールの扱いに精通した人材の確保や育成が求められます。

医療DXに関する政府の動向

政府は今、次世代にも持続可能な社会保障をかなえるため医療DXの推進に注力しています。2022年5月には自由民主党政務調査会が「医療DX令和ビジョン2030」という提言を行い、医療業界に次のような3つの変革を起こす計画を立てています。それぞれどのようなことが掲げられているのか詳しく見てみましょう。

全国医療情報プラットフォーム

マイナンバーカードを活用したオンライン資格確認システムのネットワーク拡充によって、患者さん、医療機関、介護事業者、自治体がそれぞれの情報を一元化して共有する仕組みづくりが掲げられています。

患者さんは医療保険情報、健診情報、薬剤情報、医療機関や介護事業者はレセプト、カルテ情報、処方箋情報、ケアプランなどの情報をクラウド間連携することでより効率的で無駄のない医療・介護を受けることができるようになります。

また、自治体も予防接種情報、検診情報、認定情報などを共有することで医療や介護の質をさらに高めることが可能です。
さらに、ここから得られるビッグデータを活用することで創薬や治療法などの研究開発にもつながると考えられています。

電子カルテ情報および交換方式の標準化

これまで、各医療機関で保管している患者さんの情報は、診療情報提供書などのやり取りを経なければ他機関の情報を把握することはできませんでした。そのため、緊急時などは煩雑なやり取りが医療や介護の妨げになることも多かったのも事実です。

また、やり取りがなければ他機関の情報を知ることができないため、ドクターショッピングを繰り返す患者さんに不適切で過剰な医療が提供されてしまうケースも少なくありませんでした。

このような問題を解決するため、医療DXでは電子カルテの情報を医療機関同士でスムーズに交換したり、共有したりできるシステムづくりに取り組んでいます。2024年より全国の医療機関や薬局で電子カルテ情報の共有を順次開始する方針です。

診療報酬改定DX

医療DXを推進することで、医療機関などの負担を最小限にして診療報酬の最適化を目指す仕組みづくりが目指されています。

また、現状のシステムでは、診療報酬が改定されるたびにレセプトコンピューターのプログラム修正が必要です。そのために大きな労力や費用も必要となりますが、診療報酬改定DXではレセコンに共通算定モジュールを導入することで迅速に診療報酬改定に合わせた更新を実施できる仕組みの実現が提言されています。

▽参考記事
5分でわかる「医療DX令和ビジョン2030」

医療業界におけるDX事例をご紹介

医療DXにはさまざまなメリットとデメリットがありますが、試行錯誤を重ねながら多くのサービスや製品が生み出されています。より良い医療や介護を目指していくには、医療DXによるサービスや製品をうまく取り入れていくことが大切です。最後に、DX事例についてご紹介します。

クリニック向け電子カルテ「Medicom-HRf Hybrid Cloud」

ウィーメックス(旧PHC)(Medicom-HRf Hybrid Cloud)

電子カルテはカルテや検査データのペーパーレス化をかなえ、情報の管理を簡便にするデジタルツールです。今後は全国医療情報プラットフォームの導入により電子カルテの活用が医療業界に求められるでしょう。

Medicom-HRf Hybrid Cloudは、日本初のレセプトコンピューターメーカーであるメディコムが開発したクリニック向け電子カルテです。パソコン、タブレットなどのツールを用いてどこからでも利用が可能であり、デバイス&ロケーションフリーであることが特徴の一つです。

また、予約、検査結果、検査機器など約170社の多様な機器と連携しているため情報管理の煩雑さはありません。さらに、レセプトコンピューター一体型であり、レセプトチェックなどの経営サポート機能も充実しています。もちろん、オンライン資格確認にも対応しており、データのバックアップやセキュリティ管理も万全です。

「Medicom-HRf Hybrid Cloud」について、詳しくはこちら

調剤薬局向け電子薬歴「保険薬局用電子薬歴システム Pharnes V-MX」

薬歴は医療の場において非常に重要な情報の一つです。従来は紙の「お薬手帳」が広く使用されていましたが、薬歴をデータ化して管理することで必要な情報を明確にチェックすることができるようになります。

Pharnes V-MXはメディコムが開発した調剤薬局向けの電子薬歴システムです。薬歴表紙、監査情報、過去の薬歴などを一画面で一度に表示することができるため、薬歴の把握をスムーズに行うことができます。また、過去の処方が横並びに表示されて変更点は目立つように色付けされるため、処方内容の変化を明確に確認することができます。さらに、長期投薬の患者さんの来局予測をチェックすることができ、医薬品の仕入れ予定などに活用することも可能です。

ノートパソコン用のソフトを使えば薬局外でも使用できるため、訪問診療時にも使うことができます。その他、相互作用や重複投薬のチェック機能も充実しており、安全な医療や介護の提供にもつながります。

「Pharnes V-MX」について、詳しくはこちら

順番受付システム「Air WAIT」

現在では、順番受付システムを導入する医療機関が増えています。順番受付システムは、患者さんの利便性を高めるだけでなく診療時間の無駄を省くことでコスト削減にもつながります。

AirWAITでは、最新の診療待ち状況を患者さん自身が確認できるため待合室の混雑を解消し、感染症対策にも有用です。また、スマートフォンで手軽に予約や混雑状況の確認ができるため受付への電話問い合わせが減り、業務負担の軽減をかなえることができます。

さらに、AirWAITはメディコムの電子カルテシステム「Medicom-HRf Hybrid Cloud」と連携することで、来院情報が自動的に反映される仕組みになっています。初期費用も0円であり、電子カルテシステムとあわせて取り入れたい製品です。

「Air WAIT」について、詳しくはこちら

キャッシュレス決済システム「PayCAS Mobile」

医療機関での決済は現金が主流でしたが、現在では会計時の混雑緩和や現金受け渡しによる感染症予防などの観点からキャッシュレス決済を取り入れる医療機関も増えています。訪問診療が増えてきたこともキャッシュレス決済普及の後押しをしています。

PayCAS Mobileは、1台で7つのクレジットカード会社、16種類の電子マネー、10種類のQR決済が可能です。片手サイズですが大画面のタッチパネルのため、スマホ感覚で簡単に操作することができます。他の機器は必要なく、受付周りをすっきりさせるだけでなく持ち運びにも便利です。

ソフトバンクのSIM対応のため、訪問診療先などでも使用することができます。さらにメディコムの電子カルテシステム「Medicom-HRf Hybrid Cloud」と連携することも可能であり、決済情報も一元管理ができるようになります。

「PayCAS Mobile」について、詳しくはこちら

DXで医療の効率化を

超高齢社会において次世代も持続可能な社会保障をかなえるため、医療DXは今後もますます推進されていくことが考えられます。医療DXは、患者さんの利便性向上やコスト削減などのメリットがある一方で、セキュリティ管理やデジタル格差などによるさまざまなデメリットもあります。まだまだ医療DXは黎明期にありますが、課題を解決しながら生み出されたサービスや製品をうまく取り入れて医療の効率化を図っていきましょう。

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