目次
実際の電子カルテ導入事例はこちら>
クリニック向け電子カルテ「Medicom-HRf Hybrid Cloud」導入事例
医療機関様概要
山の手内科クリニック
住所:兵庫県神戸市中央区再度筋町5-9-1
開業日:2024年5月1日
診療科目:内科、呼吸器内科、アレルギー科
Webサイト:https://yamanote-cl.com/
新型コロナウイルスの研究・論文執筆に没頭した院生時代
古川先生は2013年3月に神戸大学医学部を卒業後、大阪の淀川キリスト教病院で初期研修・呼吸器内科を専攻した後期研修(3年間)修了後、神戸大学病院へ異動し総合内科と呼吸器内科にて勤務。肺がん研究のため大学院に進んだところ、1年目が修了する2020年春に新型コロナウイルス感染症が流行し、状況が一変しました。
呼吸器内科で新型コロナ患者の診療に追われるようになった頃、神戸大学臨床ウイルス学での新型コロナウイルス研究に呼吸器内科からも参加する話を提案され、ウイルス研究に没頭することに。
「ウイルスに関する知識はほとんどなく不安も大きかったものの、当時は未知のウイルスであり社会的にも非常に意義があると考え、基礎から学ぶと同時に新型コロナウイルスの研究に没頭し、研究漬け、論文執筆漬けの日々を過ごしました」(古川先生)。
その成果は、Journal of American Medical Association(JAMA)などの医学雑誌に5本の筆頭論文、6本の共著論文が掲載され、2022年9月に博士課程を早期卒業(受領総代)することができたほど。
子どもの頃から、短期目標と長期目標を自分の中で常に設定して行動をし続けてきたという古川先生。
「院生のときは、新型コロナウイルスの研究で人に役立つ報告ができるようにするという短期目標を立てていました。それが達成され、院生が修了する頃には他の短期目標として挙げていた内科・総合内科専門医や呼吸器内科専門医をはじめ、呼吸器内視鏡学会専門医、肺がんCT検診認定医など、とりあえず取得したい資格も達成していましたね」(古川先生)
とし、次の短期目標をどうすべきか、何がしたいのか考える時間があったと言います。
開業決断へ、2人の後押し
大学病院で肺がん患者の診療に携わるという現実的な選択肢がありながらも、
「自分が何をしたいか思い描いたとき、医学部に入学する以前から描いていた開業医という長期目標を、短期目標に置き換えてしまっていいのでは?と」(古川先生)
その背景には、少年期にクリニックに通院することが多く、何でも診られる町のお医者さんへの憧れがあり、将来の理想として思い描いていたことがあります。
大学病院で呼吸器内科分野のキャリアを積むことが多くの若い医師が考えることでしょう。
「呼吸器内科の上司の先生に相談したところ、有り難くも期待されていたことから引き留められましたが、いつか開業したいと描いているなら今がそのときなのかと自分の中で再認識しました」(古川先生)。
とは言え、4~5カ月は悩み続けたとし、そのときに開業を後押ししたことが2つあったと言います。
「1つは妻の後押しです。開業を相談したら『本当にやっていけるの?』というリアクションがあると思っていましたが、町の医者になりたいという私の思いを察してくれていたのか、開業を積極的に応援してくれて」(古川先生)。
後押ししたもう1人は、神戸大学医学部の同期生ですでに開業していた親友でした。
「今開業を考えているのなら、踏み留まる理由はないだろうと言われ、彼の助言がとても大きく心強かったですね」(古川先生)。
その同期の友人から開業コンサルタントの紹介をはじめ、開業実務にかかわる様々な助言も受けることになりました。
古川先生は内科医を志し、経験を積むにあたって、「救急患者を診られない内科医にはなりたくない」とし、開業医であっても一次救急に適切に対応できることが必須と考えていました。大阪で屈指の救急搬送患者を受け入れている淀川キリスト教病院を初期研修先として選んだ理由もそこにあったと言います。また、神戸大学大学院で肺がんの研究をしながら毎日のように肺がん患者を診療していると、あらためて早期発見の重要性を痛感し、「がんを疑うことができるかかりつけ医が身近にいれば早期発見につながっただろうに」と思うことが多々あったようです。
「かかりつけ医がいない患者さんも多かったですし、日頃の健康管理ができていない人も多く見られました。大学病院で抗がん剤治療を行いながら、わずかな異変を察知してくれるかかりつけ医を持つことの重要性を地域の人たちにわかっていただきたいと考えるようになりました」(古川先生)。
この想いが大きく膨らんだことが、『開業』を短期目標に切り替えた大きな要因でした。
開業の際の要件だったCT検査ができるクリニック
内科救急や呼吸器内科の診療を続ける中で、一次医療の現場ではいち早く原因を見つけること、見落としなく慎重に原因追究することが重要だと言う古川先生。そのため、相応の検査設備が必要だと考え、開業に際してCT導入は譲れない要件でした。
「呼吸器内科専門医のほとんどが感じていることですが、レントゲンだけでは診断に限界を感じていました。レントゲンではっきり影がわからない場合、そのたびに大学病院などへ紹介していたのでは、患者さんに負担と手間をかけてしまう。クリニックにCTがあり、読影できる医師がいれば患者さんは安心できるでしょうし、大学病院との効果的な医療連携も可能になります」(古川先生)。
CTによる検査は、胸部レントゲンで判断しにくい異常影が認められた際の精密検査をはじめ、肺炎など呼吸器疾患の早期発見、腹部の急性症状に対する診断など幅広く利用されています。「新型コロナの患者さんが強い腹痛を訴えられた際に、CT検査で大腸憩室炎の診断することができ、その場で抗生剤を静注して帰宅してもらいました」(古川先生)とし、クリニックでCT検査できる利点を強調。
開業物件の条件にも当然、CT装置が設置できるスペースを有していることが挙げられました。
「ある程度の開業地範囲を決め、周辺のクリニックとできるだけ競合しないこと、そしてCT設置スペースがあることを要件として、開業コンサルタントに候補地を挙げてもらいました」(古川先生)。
そうした中、最初に提示された候補物件が現在の場所だったのです。神戸大学附属病院にも近く、「大学病院での私の経歴が生かされ、患者さんの紹介も期待できると考えました」(古川先生)とし、最初の物件提案からわずか2週間程度で決定。開業の決意から短期間のうちに開院した背景には、こうした経緯も影響したと振り返っています。