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クリニック経営 医師 事務長 2022.07.26 公開

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5分でわかる「医療DX令和ビジョン2030」

2022年5月、自由民主党政務調査会より「医療DX令和ビジョン2030」と題した、医療のDX化・医療情報の有効利用を推進するための提言がなされました。そこで本記事では、日本の医療情報利用の変換点となりうる、「医療DX令和ビジョン2030」について解説していきます。

※本内容は公開日時点の情報です

#機器選定ポイント #紙カルテの電子化 #医療政策

2022年5月、自由民主党政務調査会より、「医療DX令和ビジョン2030」と題した、医療のDX化・医療情報の有効利用を推進するための提言がなされました。DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、データやデジタル技術を用いて、業務プロセスや既存の枠組みを変えていくこと。特に全国医療情報プラットフォーム・電子カルテ情報の標準化・診療報酬改定DXの3つの柱は、今後の医療情報のあり方を大きく変えると考えられます。そこで本記事では、日本の医療情報利用の変換点となりうる、「医療DX令和ビジョン2030」について解説していきましょう。

医療DX令和ビジョン2030とは

近年、さまざまな業種でDX化が進んでいますが、医療分野はDX化が非常に遅れている分野です。新型コロナウイルス感染症の流行時にも、患者医療情報の収集がうまくできず、医療現場の混乱を生む一因となってしまいました。

また、日本は高齢化の影響もあり、1人の患者が複数の疾患に罹患し、結果として複数の病院を受診することも多いのですが、「受診したそれぞれの病院で重複した検査が行われる」「同じような問診をされる」「やり取りが紙ベースでされるため、情報の共有がしにくく時間がかかってしまう」といった現状があります。すると、余計な手間や時間、コストが発生するため、非常に効率が悪く、医療経済上も医療費を増大させることにつながります。

さらに、医療機関においては、電子カルテが導入途上にあり、導入したとしても基本的には単一の施設内での利用にとどまっています。情報を活用できず、患者の診断・治療への活用や健康管理、医療連携、医学・医療・医薬品の研究開発への活用が限定的となっているのです。

また、近年はウェアラブル端末やアプリの普及などに伴い、自分の健康情報を自分で管理する意識、PHR(Personal Health Record)へのニーズも高まっています。しかし、日本では利便性が高くアクセスしやすい医療システムがあるにもかかわらず、患者自身が診療情報の確認を自由にできる状況にありません。確認するためには、カルテの開示請求を行わねばならないなど、時間と手間がかかってしまう状況にあります。

そんななか、今回、自民党が提言した「医療DX令和ビジョン2030」は、これらの医療DX化、効率化、医療資源の適正な利用といった問題の解決を目的としています。そして、日本の医療分野の情報の在り方を根本から解決するためには、以下3つの取り組みを同時並行で進めることを重要としています。

1.「全国医療情報プラットフォーム」の創設
2.電子カルテ情報の標準化(全医療機関への普及)
3.「診療報酬改定DX」

ここでは、それぞれの取り組みがどのようなものか、解説していきましょう。

「全国医療情報プラットフォーム」の創設

「全国医療情報プラットフォーム」

レセプト請求や保険加入確認のために、全国の医療保険者と医療機関・薬局の間で、社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険中央会が主体となって構築された、オンライン資格確認等システムのネットワークを発展・拡充させることで、レセプトや特定健診、予防接種、電子処方箋、自治体検診、電子カルテなどの医療全般の情報を共有・交換できる、「全国医療情報プラットフォーム」をつくることを提言しています。

このシステムの目的は、これまでバラバラに各医療機関や自治体などで管理されていた患者情報を、ネットワークを通じて、閲覧共有できるようにすることです。

情報活用の面では、マイナポータル経由で患者本人が情報を閲覧する場合や医療機関間で共有する場合がありますが、どちらもプラットフォームにはガバメントクラウドの活用が検討されています。

これにより、「紙の紹介状のやり取りがなくても情報を確認できるようになる」「患者の病歴や検査歴などの確認が容易になる」「マイナンバーカードを利用することで、従来は紙を基本として本人の署名を要していた同意書や承諾書などの書類について、マイナンバーカードによる電子署名を活用することもできるようになる」といった利便性向上が期待できます。

迅速に情報共有ができれば、病状を的確に把握し、早期の適切な治療、重複検査や重複投薬の回避など、診察や治療の質の向上につなげられるでしょう。

また、患者自身が自分の情報を確認できることで、健康への関心の高まりや健康増進なども期待でき、情報の二次利用により、治療の最適化やAI医療などの新技術開発、新薬や新しい医療機器開発、大規模臨床研究への利用などが進むことも期待されています。

一方で、このようなシステム活用のためには、ランサムウェアをはじめとした、昨今の高度化するセキュリティ脅威から防御できるセキュリティ対策が必要になります。さらに、オンライン資格確認などシステムのネットワークを発展させた活用が想定されていますが、オンライン資格確認の運用開始施設は、まだ2割程度にとどまっているのが現状です。

そのため、今後「オンライン資格確認等システムの導入を原則義務化とする」「医療機関への導入支援を拡充させる」「診療報酬改定での加算新設等で導入の促進を行う」必要があるとしています。

電子カルテ情報の標準化等

「電子カルテ情報の標準化」とは、Webサービスの技術を用いて医療情報を交換する際の国際標準規格であるHL7FHIRを活用し、厚生労働省が標準コードや交換手順を定めるというものです。

そのうえで、まずは診療情報提供書・退院時サマリー・健診結果報告書の3文書と、傷病名・アレルギー・感染症・薬剤禁忌・検査・処方の6情報を対象とし、順次対象となる情報を拡大することが想定されています。

そして、これらの医療者が共有すべき情報とは別に、「創薬・医療機器開発・ゲノム医療・行政での統計利用のための健康医療需要のデータ共有を可能とするシステム」も構築が検討されています。

電子カルテについて詳しくはこちら

電子カルテは2030年までに100%へ

「電子カルテ情報の標準化」とともに、「標準型電子カルテの検討」についても、提言されています。前述のような医療情報の共有は、電子カルテやHL7FHIR未導入の医療機関ではそもそも連携ができないため、まずは標準化された電子カルテの導入が必要になります。

厚生労働省から発表されたデータによると、電子カルテ普及率は、平成29年時点で一般病院46.7%、診療所41.6%。令和2年時点で一般病院57.2%、診療所49.9%となっています。まだ、半分近くの医療機関が導入できていない現状があるため、導入の促進に向けた取り組みが必要となるでしょう。

「全国医療情報プラットフォーム」
【参照】:医療分野の情報化の推進について |厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/index.html

今回の提言では、厚生労働省が主導して、官民協力により低価格で安全なHL7FHIR準拠の標準クラウドベースの電子カルテを開発し、この「標準型電子カルテ」の導入を進める補助金などの施策を検討することが謳われており、2026年までに80%、2030年までに100%とする目標が掲げられ、「以下4点についても検討する」とされました。

1.閲覧権限を設定する機能や閲覧者を患者自身が確認できる機能の実装
2.診療を支援し、作業を軽減する機能の実装
3.検査会社との情報連携の方法を決めること
4.介護事業所などにも医師が許可した電子カルテ情報について共有できるようにする

診療報酬改定のDXがいよいよ開始

現行のシステムでは診療報酬改定のたびに、文書で発表された改定内容を、レセコンのメーカー側で読み解き、エンジニアが報酬計算プログラムに落とし込むという、複雑で膨大な作業が発生し、事業者の大きな負担となっております。

本提言では、各ベンダーやエンジニアの負担を大きく軽減することを提唱しています。各レセコンベンダ共通のものとして活用できる「共通算定モジュール」を導入し、診療報酬改定の際も、当該モジュールの更新を行うことで実施できるようにしようというものです。

さらに、4月施行となっている診療報酬改定の施行日を、後ろ倒しにして作業集中月を解消すること、各業務システムのデジタル化を通じた医療保険制度全体の運営コストの削減、保険者負担の軽減につなげることも提唱。これにより、デジタル時代に対応した診療報酬や、その改定に関する作業を大幅に効率化することができると唱えています。

PHC株式会社の取り組みについて

PHC株式会社は診断・ライフサイエンス、ヘルスケアIT、医療機器などさまざまな分野において、サービスをグローバル市場に提供するリーディングカンパニーです。

特にヘルスケアIT部門のメディコム事業部は、診療所や病院の電子カルテシステム・医事システムにて高いシェアを誇っており、薬局で用いる電子薬歴システムなどの提供も行っています。

また、オンライン資格確認や提携企業とのクラウドサービス連携などで、いち早く断片化している医療情報・サービスをつなぎ合わせ、より効率的でクオリティの高い医療サービス提供の実現をサポートしています。

現在取り組んでいるさまざまな事業では、データとデジタル技術を活用し、社会やユーザーのニーズに応える新しいビジネスモデルの構築を目指しているそうです。

50年にわたり蓄積された技術力と、医療行政を見据えた先見性で、『医療のDX』をさらに進めており、「医療従事者の業務改革を通じて、患者さんへのより適切で質の高い医療の実現に向けて貢献していきたい」とのことでした。

※PHC株式会社メディコム事業部は2023年4月にウィーメックス株式会社として事業を開始しています。

まとめ

現在の日本は、医療情報の連携・医療情報の有効活用といった点では後進国です。すでに先進国では、電子カルテの普及が80%を超えている国も多く、なかには日本が目指すような横断的な医療情報の活用がすでに実施されている国もあります。

医療情報の有効活用ができない状態は、医療現場にとっても大きな負担となっていますが、今回の「医療DX令和ビジョン2030」は、そのような日本の現状を変えていこうという、強いメッセージが込められた内容でした。

ハード・ソフト面の両方で乗り越える課題は多いですが、今後の日本の医療を変える取り組みに注目し、よりよい形で医療DXが進んでいくことを願っています。

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著者情報

小鷹 悠二

小鷹 悠二(おだか ゆうじ)

循環器内科専門医・総合内科専門医・医学博士・産業医
循環器内科専門医として、総合病院・大学病院勤務を経て、2018年よりおだかクリニックの副院長として診療・経営を行っている。循環器疾患のみならず、内科疾患全般の診療を行い、自院の診療システムの効率化・DX化や、地域医療連携にも積極的に取り組んでいる。。

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