クリニック開業の流れClinic opening
クリニックを開業するまでには、数多くの「専門的な業務」があります。
どれも先生の開業を成功させるために必要な業務ばかりですので、今一度ご確認ください。
STEP-1開業検討(1年~1年半前)
1.開業地選定
開業期間は数十年に及びますので将来にわたり以下の視点をふまえ開業地を選定します。
- ・人口が充実した地区
(開業される医師の年齢を考え、開業期間の患者動向を見越した選定) - ・将来的に人口が増加しそうな地区
- ・若年層人口が多い地区
- ・通院しやすい環境、立地条件
- ・競合調査
開業後に気に入らないからといって気軽に引っ越しはできませんので、選定は重要なポイントです。弊社では開業用地物件情報を不動産業者と連携して紹介しております。
関連サイト:開業用地物件情報ページ
関連コラム:成功のための開業地選び(1)
2.開業形態の選定
開業形態には、新規にクリニックを開設する方法と既存のクリニックを継承するという方法があります。
【新規開業の場合】
- ・パターン1.土地・建物を購入開業
- ・パターン2.土地は賃貸で、建物を購入開業
- ・パターン3.土地、建物を賃貸で開業(主に地主)
- ・パターン4.テナント開業
【継承開業の場合】
- ・親族間継承
- ・知り合い継承
- ・第三者継承
継承開業は後継者不足に悩む医療機関が増えており、選択肢として注目されてきています。弊社では継承開業の紹介も行っております。
関連コラム:開業スタイル別の注意点
3.診療圏分析
開業地患者予測調査を行います。開業予定地周辺の状況を把握し、どの程度の患者数が見込めるのか統計データで推計します。診療内容や専門分野、地域の特性によっても異なりますが、主に以下の内容を調査していきます。
- ・開業地を中心に患者が通院できる範囲内の人口を調査
- ・患者が通院できる範囲内の地域人口から受療率を試算調査
- ・地域人口の受療率から来院患者を予測調査
- ・将来推計人口から10年後、20年後の来院患者を予測調査
- ・開業地の競合先の調査
弊社では無料で診療圏分析を行っております。お気軽にお問い合わせください。
関連サイト:診療圏調査ご案内ページ
関連コラム:成功のための開業地選び(2)
4.診療方針
「どんなクリニックにしたいか?」理想とする診療を実現するため、診療科や理念等を作成します。開業準備の中でも特に重要な項目の1つであり、クリニックが進むべき方向を、ご自身・スタッフ・患者へと示すものでもあります。自己満足ではなく「人に見てもらうもの」という意識をもって作成します。
- ・開業後の診療科目を選定
- ・勤務医時代の専門科目の他に標記する内容の検討
- ・クリニックの目標、患者への姿勢
- ・クリニックの理念、診療スタイルを検討
関連コラム:経営理念の意義とは
STEP-2開業計画(半年~1年前)
5.医療機器・什器・備品・人件費の計画
医療機器・什器・医療備品等の選定を行います。開業時にどこまで医療機器を揃えるのか、開業後の導入とするのか、時期や診療コンセプトを踏まえリストアップして必要性を検討します。また、ここで計画を立てた金額を元に、銀行から融資を受ける際に使う事業計画書を作成するための予算取りにもなります。
- ・医療機器、什器備品の選定
- ・従業員数、人件費の検討
関連コラム:何を基準に決める? クリニックスタッフの給料
6.事業計画書
事業計画書の策定は、クリニック開業の経営計画や事業の方向性、事業収益を明確化(可視化)し確認することです。これにより開業イメージが具体的になり開業準備が進めやすくなります。また、5年先・10年先までの経営数字予測をし、金融機関等から資金調達を行う場合の資料に使用します。事業計画書は非常に重要で過大な投資となっていないか、運転資金が過少ではないか、十分な資金が確保されているか等に注意が必要です。
- ・開業地の患者予測を基にクリニックの経営計画
- ・開業に関わる資金の試算
- ・金融機関からの融資審査に向けた資料
関連コラム:初期投資と運転資金
7.税理士紹介
税理士の役割は、毎年の税務申告のサポートやデータ分析をふまえての経営に関する有益なアドバイスおよび相談です。医療業に詳しい税理士を選ぶことで、経営者の視点で必要な節税や医療法人化などメリットや留意点を確認しながらサポートを受けることができます。
税理士法人によっては、税務会計はもちろんのこと行政手続やスタッフ採用も支援してくれるところもあります。
- ・税理士、会計事務所選定のポイントをご紹介
- ・医療業の仕組みを理解した方のご紹介
弊社では、医療業に特化した税理士を紹介できます。
関連コラム:信頼に足る税理士の条件とは?
8.開業資金交渉
開業資金は主に、建物・内装工事費、医療機器代、初期の運転資金などに内訳されますが、事業計画書を基に資金調達をします。融資を行っている機関は政府系金融機関、地方銀行、医師会や地方自治体の融資制度などさまざまあります。金利の低さや融資の受けやすさといった条件を比較しましょう。
銀行からの融資の場合、審査には2週間~4週間程度かかかることが一般的です。
状況に応じた資金調達の方法をご提案致します。
- ・銀行、政府系金融機関からの資金調達
- ・リース会社からの資金調達
- ・家族、親族など
関連コラム:クリニック開業資金調達の具体策
STEP-3開業準備(3ヶ月前~半年前)
9.借入に対するリスク回避
クリニック開業を機に勤務医から独立して開業医(経営者)になります。
「開業期間中に万が一のことがあったら…」「病気で数か月間休業しないといけなくなったら…」そんな事態に備えた保険を検討します。自身と家族と従業員を守るため、開業にあたり借入れた資金をふまえ就業障害、休診時、災害時、医療事故などのリスクを整理し保険を見直します。
- ・保険の見直し(生命保険・損害保険)
- ・開業後の保険は経営が軌道にのるまでとそれ以後では内容が変わる
関連コラム:開業時にはリスクに備えた保険を
10.設計・施工
建物を建てる場合は設計と施工、テナントを借りる場合は内装工事を行います。継承開業の場合は継承する建物をそのまま使用し、必要に応じて内装工事を行います。
医療機関の設計に詳しい設計事務所は、医師やスタッフの動線、患者の動線を把握しており希望に応える能力を持っていますので、適切な知識を持った設計事務所がよいでしょう。
- ・設計と施工会社の選定方法についてご提案
関連コラム:設計・建築業者との意見交換は積極的に
関連コラム:クリニックの外観・内装のポイント
11.管理諸規定
就業規則作成は、スタッフが働く時間や休暇、賃金などの勤務条件や働く上で守らなければならないルールや禁止事項を定めます。
常時10人以上のクリニックでは就業規則の作成が義務となり、労働基準監督署へ届出します。
10人未満だから作成する必要はないと考えがちですが、ルールがないとトラブルが発生しやすい状態が生まれてしまいますので、トラブルを未然に防ぐためにも就業規則の作成は必須と考えた方がよいでしょう。就業規則を作成することでスタッフも気持ちよく働けるようになります。
- ・就業規則、諸規定の作成
関連コラム:就業規則の整備は開業前に
12.求人募集
スタッフの人数は診療科や診療内容によっても異なりますが、人員計画の際に概ね決めているかと思います。募集活動は一般的に開業予定日の3~4ヶ月程前から始め、1ヶ月前くらいには決まっていると良いでしょう。直前の1ヶ月ではスタッフの研修や手続きが必要となってきます。
募集の手段としては、求人サイト、求人雑誌、新聞チラシ、人材紹介会社を利用する方法や、現勤務先の病院から仲の良い医療従事者を誘うという方法などもあります。
優秀なスタッフを採用するため、賃金設定も関わりますのでコンサルタントを活用することがおすすめです。
関連コラム:スタッフの集め方・選び方
STEP-4開業予告(1か月~2か月前)
13.面接
ご自身の診療方針に当てはまる方を選考します。
スキルだけではなく、「他の職員、患者さんとうまくやっていけそうか?」という面も考慮しながら選考しましょう。面接の場には、第三者(コンサルタントなど)に同席してもらう事が良いです。第三者が同席することで、患者目線での面接ができることや面接後のトラブル発生リスクを抑えます。
ここでもコンサルタントを活用しましょう。履歴書など応募書類の整理や応募者との面接日程の調整、連絡の代行、当日の面接サポートなど手間のかかる作業をフォローしてくれます。
関連コラム:経験者優先採用の落とし穴
14.広告・広報
開業しただけではあまり患者さんは来ません。集患のために広報活動を行います。
主には、クリニックの診療方針や特徴を地域の方に認知していただくため看板告知やチラシ、パンフレットの作成を行い配布を実施します。また、特に重要なのはホームページの制作です。クリニックの情報を得るためにインターネット検索は一般的になっており、必ずと言っていいほど患者さんはインターネット検索を行います。
開業後も集患対策は必要であり、ホームページやSNS等を活用した情報発信・広報活動は必須と考えておきましょう。
関連コラム:プロモーションは戦略的に
15.各種手続き
開業地を管轄してる保健所や地方厚生局にクリニック開業に必要な各種手続き、届出(書類の提出等)を行います。特に保健所とは事前相談なども含めて足を運ぶ機会が多くなります。
- ・保健所:診療所開設届、診療用X線装置備付届、麻薬管理者・施用者免許申請書など
- ・地方厚生局:保険医療機関指定申請書、診療料の施設基準等に係る届出書など
- ・労働基準監督署:労災保険指定医療機関指定申請書など
その他にも、医師会や税務署、社会保険事務所、県や市区町村、消防署など必要な手続きがあります。コンサルタントや行政書士等を活用し漏れなくスムーズに進めましょう。
関連コラム:不備のない届出・申請を
STEP-5最終チェック(開業直前)
16.クリニック引き渡し
クリニックが出来上がり、医療機器や物品が搬入されていく様子を目にすることで「クリニック院長」という実感が湧いてきます。引き渡しの際には建て付けに歪みや傷などないか不備を確認して下さい。また、機器等搬入の際には事前にサイズを確認しておき置き場所を決めておきましょう。そして、引き渡し後からはご自身の管理責任となりますので火災保険の契約を忘れていないか確認もしておきましょう。
17.院内トレーニング
開業日の3週間前を目安にスタッフへトレーニングを行います。
- ・医療機器の操作研修:医療機器業者から取り扱い説明を受けます。
- ・電子カルテ、レセコンの操作研修:電子カルテベンダーから操作説明を受けます。
併せて、トレーニングの際に看護師スタッフとは薬品や医療備品・消耗品の発注、事務スタッフとは事務用品の発注も確認しましょう。開業初日で戸惑う事が無いようにしておくことが大切です。トレーニングや運用検討を通じスタッフのコミュニケーションが生まれ、良い人間関係の土台が出来上がっていきます。
18.開業シュミレーション
いよいよ開業目前となってきました。実際の診療イメージをもちシミュレーションを行います。診療シミュレーションは模擬の患者役を立て、窓口受付から問診票記入・カルテ作成、診療誘導(診察・処置・検査)、会計処理と一連の流れを行います。事前に動線を確認し、不備が見つかっても開業日までに修正することができます。
- ・診療シミュレーション、動線の確認
- ・スタッフ間連携、患者接遇応対
診療方針や想定される疾患での受診ケースでシミュレーションを繰り返すことが良いでしょう。
関連コラム:スタッフ研修と診療シミュレーション