頼られる医師・薬剤師の共通点は「説明の仕方」
治療方針や症状を分かりやすく説明することは、クリニックや医療従事者が患者さんからの信頼を獲得するうえで大切なポイントです。しかし医療用語は一般の人々に馴染みの薄いものも多く、患者さんがイメージをつかめない、あるいは内容を誤解してしまう可能性すらあります。今回は、分かりやすい説明を実現するためのヒントをご紹介します。
医療の現場で飛び交う「伝わらない言葉」
医療従事者同士であればすぐに理解できる言葉でも、専門家ではない患者さんにはまったく通じないことも珍しくありません。たとえば「頓服(とんぷく)」という言葉は、認知度は高いものの、正しく理解している人は少ないと言われています。医療用語には、ふだんの生活ではほとんど使うことのない漢字を使った漢語も多く、一見しただけではピンとこないこともよくあります。診療中の説明は口頭のみで行うことが多いため、正しく意味を理解することはさらに困難になります。また、「MRI」「CT」といった略語や「プライマリーケア」といった外来語も医療現場ではひんぱんに登場しますが、特に英語になじみのない世代にとっては理解しづらく、患者さんに分かりやすく伝えるには工夫が必要になってきます。
患者さんや状況に適した説明を
さきほどの「頓服」は、国語辞典では「何回かに分けて飲むのではなく、その時一遍だけ服用すること(薬)」とされています[新明解国語辞典第七版]。さらに伝わりやすい説明にするために、患者さん一人ひとりの状況に寄り添う工夫をしてみましょう。発熱症状があり、解熱剤を処方する場合には、「頓服薬は症状が出て必要になったときに飲むお薬です。今回処方するものは、熱が38度5分以上になったら飲むようにしてください」のように、具体的にどのような状態になった場合に服用すべきかをお伝えします。それぞれの患者さんがイメージしやすいよう、数字や時間を明確にするなど、できる限り具体的な情報に置き換えると伝わりやすさが大きく向上します。
言語以外の活用で、もっと伝わる「説明」に
体の部位なども、一般の人にはすぐに場所が理解しづらいことがあります。口頭で説明しようとしても、時間がかかるばかりでなかなか理解が得づらいものです。そんなときには、模型やイラストなどの視覚情報を活用してみましょう。また、ただ説明を聞くより、患者さん自身に手を動かしてメモを取っていただくことで理解も深まり、記憶にも残りやすくなります。あとからメモをご自身で見返したり、家族の方などに説明するときに活用いただくこともできます。大切なのは、患者さんの反応を見てしっかりと伝わっていることを確かめながら説明を進めることです。「伝わっていないかも?」と思ったら、理解が得られなかったポイントに立ち返りましょう。
治療を進めるにあたり、患者さんがクリニック・薬局の方針を十分に理解し、納得していることは非常に大切です。また、伝えたいと思う医療従事者の熱意や丁寧な姿勢は、信頼感の醸成につながります。安心感のある治療を提供するために、伝わる「説明の仕方」を身に付けましょう。