目 次
1. クリニックのスタッフが一斉退職する原因とは?
クリニックのスタッフが一斉退職。あってはならないことですが、一体どんなことが原因で起きるのでしょうか?
院長や経営陣の経営方針への不満や先行きが見えない不安、院内でのトラブルによる精神的なストレスなど、一斉退職を引き起こす原因は短期的な一過性のものではなく根が深そうです。
クリニックの診療科や規模にもよりますが、スタッフが一斉退職してしまうと、診療業務に大きな支障をきたします。新たなスタッフの採用まで休院を余儀なくされたり、診療時間の短縮や一部の診療を中止したりするなどの対応が必要になります。採用後も組織としてまとまり、院内の業務がスムーズに流れるまでは時間がかかります。採用・育成のコストもばかにはなりません。
最悪の場合、医院の存続さえも難しくなる場合がありますので、原因を知り未然に防がなければなりません。
一斉退職の事例①
一斉退職の一番大きな原因は、院長や理事長など経営陣に対する信頼失墜です。
最近の報道から介護施設の一斉退職の事例を紹介します。
この介護施設では、数年前から病室のナースコールが鳴らないことが頻発し、その都度、理事長にナースコールの買い替えを要望していましたが、財政難を理由に先延ばしにされていました。そして、とうとうあってはならない事故が起きてしまいました。
ある朝、ナースコールを握り締めたまま患者さんが亡くなっていたのです。これをきっかけに「こんな施設では働けない、もう理事長についていけない」とスタッフが全員退職してしまいました。
常時、介護が必要な介護施設での一斉退職はよっぽどのことでしょう。もともと、医療機関や介護施設で働くスタッフは、世の中の役に立ちたい、人のお世話をしたいという気持ちが強く、労働条件が厳しくても利用者様・患者様のために無理して働いています。ところが、患者様の命や健康を守れないとなると、もうここでは働けないと一斉に退職してしまいます。
他の事例では、経営陣の脱税やセクハラなど犯罪に近い行為の強要や発覚による信頼失墜はもちろんですが、院長の気まぐれな方針変更、神経質な指導が退職の引き金になることもあります。
一斉退職の事例②
こちらの事例では人間関係や働く環境が原因です。院長自身に非はない場合もありますが、経営者として組織全体をしっかり見ていないとこんなはずではなかったという事態が起こってしまいます。
具体的には、ベテランスタッフによるいじめ、影響力の大きいスタッフが流した院長のえこひいきやパワハラ・セクハラの噂によってスタッフが一斉退職するということが起きます。
一斉退職でなくても、ベテランの看護師や主任医事スタッフの退職がきっかけで残ったスタッフが不安になり一緒にやめてしまうということもあります。日頃からベテランに依存し、有休も取れない属人的な働き方だと一斉退職の危険があります。
また、クリニック経営上の問題ではありませんが、内科のクリニックが美容皮膚科を追加したために、これまでと全く違った患者様や診療体制で働くことに不安を感じたスタッフが一斉退職となった事例もあります。
いずれも、院長の経営理念をスタッフに伝え、院内のコミュニケーションをしっかりとっていれば防げた事例です。
2. クリニックスタッフの一斉退職を防ぐには?
クリニックのスタッフトラブルの原因は、大半がコミュニケーション不足によるものです。院長自ら朝礼・定例ミーティングでクリニックの考え方を伝えるばかりでなく、定期的なチームミーティングや個別面談でスタッフの話を聞き、不安や不満の解消につとめ、スタッフやチームに対する院長の期待を伝えます。
スタッフが不満を募らせるのは、話を聞いてもらえない、無視されることです。院長が聞く耳を持ち真摯に向き合うだけで、大方の不満は解消されます。
クリニックスタッフの離職率低下については以下のリンクも参考にご覧ください。
クリニックスタッフの離職率を下げるためにできること
(1)スタッフに注意をする際の方法に気を付ける
厳しくするとすぐやめる、パワハラと騒ぐなどスタッフの指導が難しくなりました。しかし、クリニックの方針に従い、正しく指導することがなければ、スタッフを育てることはできません。
注意をする際に気をつけるのは、注意をする目的や理由を明確に伝えることです。
「○○すると△△の危険があるので、このやり方を守ること」
「○○の目的で、△△の手順を変えてはいけない」
など、明確に指示することでミスの繰り返しを防ぎます。
また、注意するタイミングや口調も大事です。重大なミスにつながりかねない場合は、他のスタッフの前でも毅然と注意し、院内での再発防止を図ります。
そうでなければ、
「そのやり方もいいけれど、〇〇するともっとよい」
「こう考えたのはいいね。でも〇〇の心配があるから△△のほうが確実」
というように、一旦承認した上で注意すると受け入れやすい場合もあります。
クリニックの福利厚生については以下のリンクも参考にご覧ください。
意外に重要!クリニックの福利厚生
(2)社会保障・福利厚生・退職金制度を充実させる
クリニックの仕事を探すスタッフが気にする労働条件は、正社員であれば給与に加えて、社会保険加入の有無です。病院と比べてクリニックでは、退職金制度や福利厚生まで備えているところは少ないので比較対照することはあまりありません。でも、社会保険は、医療法人は完備しているのに、常勤スタッフ5名未満の個人医院は加入義務がないので、個人で国保や国民年金にはいらなければなりません。
厚労省の「老後資金2000万円問題」以来、老後に厚生年金が受けとれる社会保険完備のクリニックを選ぶ求職者も増えています。5人未満の個人医院でも社会保険に任意加入できます。社会保険完備だと、差別化になり採用がしやすくなる場合もあります。
教育制度では、クリニックの人材育成の方針を決め、資格取得や研修費の支援制度があると魅力的です。
福利厚生については、医師会や地域の商工会議所などに加入していると大手福利厚生会社の制度を個人医院でも導入できます。大病院と同じように、旅行や映画など多彩なレジャーメニューが低コストで利用できるので、採用時のアピールポイントになります。
クリニックスタッフの給料については以下のリンクも参考にご覧ください。
何を基準に決める? クリニックスタッフの給料
3. 一斉退職を招くスタッフの見抜き方とは?
一斉退職は、院内の組織運営がうまくいっていないために起こります。院長と一人ひとりのスタッフの間に信頼関係が築けていれば、一部のスタッフとの間にトラブルがあったとしても一斉退職という事態は起きません。影響力の強いスタッフが他のスタッフを巻き込んで退職してしまうのは、日頃から院長や経営陣への不満がくすぶっていたところにそのスタッフの言動がきっかけとなって発火してしまうからです。
悪影響を与えるスタッフにはある特徴があります。一つは自分本位のネガティブな言動です。何か不満があるたびに「誰かのせい」「私は悪くない」と言い張ります。もう一つは、事実ではなく感情で物事を判断し、それを周りに押し付ける癖があります。事実を確認することなく、根拠のない噂を繰り返すことで、他のスタッフはいつの間にかそれを事実と誤認してしまいます。
こういうスタッフは入職後に注意しても変わりません。面接時に、以前の職場の退職理由を丁寧に聞き、自分本位の「危険なサイン」を見抜き、組織に入れないことが一番です。見抜くことが難しければ、こちらの経営理念や考え方をとにかく伝え続け、ここではやっていけないと辞退してもらうことです。
クリニックスタッフの集患については以下のリンクも参考にご覧ください。
スタッフの集め方・選び方
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