2022年度診療報酬改訂の詳細が明かされ、本体部分は0.43%の引き上げとなりました。また、ICTの利活用、医療DXの推進は、今後、診療所が取り組まなければならない課題を浮彫りにしています。2022年度診療報酬改訂と医療DXの第一歩ともいえるオンライン資格確認についてみていきます。
本体部分0.43%の引き上げ〜2022年度診療報酬改訂
2022年2月9日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、2022年診療報酬改訂の答申が行われました。明らかになった詳細項目によれば、診療報酬改定全体ではマイナス0.94%の改定です。ただし、薬価の引き下げなどを除き、医師の技術料にあたる本体部分だけ取り出せば、0.43%の引き上げという結果になりました。
2022年改訂は、「感染症対策」「地域包括ケア」「医療DX」「働き方改革」といったテーマの議論が進められ、特に「リフィル処方箋の導入」「オンライン診療の恒常化」「オンライン資格確認の評価」などさまざまな変更点があり、診療所経営に大きな影響をもたらす内容となりました。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として、地域の病院・診療所で連携して対応する体制を新しく評価し、いくつかの加点が設けられています。
リフィル処方箋の導入では、医師が可能と判断した患者に対して、2回または3回の反復利用可能な処方箋の発行が可能となりました。現在、30日以上の投薬で処方箋料が6割減算されますが、リフィル処方箋では1回あたり29日以内の投薬を行えば、この減算規定は適用されません。
オンライン診療では、評価を新設し、初診251点、最新73点となり、初診からのオンライン診療も認められ、恒常化が図られています。
また、オンライン資格確認の評価も盛り込まれており、オンライン資格確認システムで患者情報を取得し、診療した場合、初診7点、再診4点などが加算できる「電子的保険入用情報活用加算」が新設されました。仮に患者がマイナンバーカードを持参せずに情報が取得できなくとも、オンライン資格確認システムを導入していれば、2年間、初診時に3点を加算できます。このようにオンライン資格確認の導入を後押しする仕組みとなっているのです。
医療DX取り組みの第一歩としてのオンライン資格確認
電子的保険入用情報活用加算が新設されるなど、2022年改訂の基本的視点と具体的方向性で謳われていた、医療におけるICTの利活用・デジタル化ヘの対応が今後、診療所にも求められるようになります。すでにオンライン診療、医療データの利活用、オンライン資格認定システムなどを利活用されている医師、診療所も多くあると思います。
ただ、医療DX、ICTの利活用には導入資金も必要になります。さらに医師本人はもちろんのこと、受付スタッフや看護師など医療スタッフが新しいオペレーションを習得するためのトレーニングも必要になります。それだけに、手掛けたいけれど、様子を見ているという医師も多いのではないでしょうか。
オンライン資格確認の導入予定施設数(顔認証付きカードリーダー申込数)を見ると、129,646施設と全体の56.5%となっています。内訳を見ると病院と薬局が8割近くになっている一方で、医科診療所は44.2%と半分以下の状況です(※2021年12月12日時点)。
そんななか、オンライン資格確認はまだ補助金の対象になっています。残念ながら2021年3月末で加速化プラン(補助額が100%)は終了していますが、補助額が3/4のプランは、2023年3月31日までに補助対象事業を完了させれば、2013年6月30日までに申請することで補助金が交付されます。全額が自診療所負担となる前に、オンライン資格確認について取り組んでみてはいかがでしょうか。
オンライン資格確認をいま始めるべき理由とは?
オンライン資格確認とは
ご存じの方も多いでしょうが、あらためてオンライン資格確認についてご紹介します。医療機関と薬局では、患者が加入している医療保険を確認する「資格確認」が必要です。従来の資格確認は、患者の健康保険証を受取り、記号・番号・⽒名・⽣年⽉⽇・住所などをレセコンなどに入力して行っていましたが、レセプト請求をしないと最終的な確認はできていませんでした。
それを今後は顔認証付きカードリーダーなどを導入し、マイナンバーカードのICチップ、もしくは健康保険証の記号番号などによりオンライン上で確認することができるようになるのがオンライン資格確認です。
詳細はこちらをご覧ください。
オンライン資格確認とは?
オンライン資格確認導入による窓口業務、医療現場の変化
オンライン資格確認を導入すると、診療所にはどのような変化があるのでしょうか。
受付時、ただちに資格確認ができる
オンライン資格確認により、受付時に保険診療できる患者かどうかをオンラインで確認できるため、レセプトの返戻の削減につながります。
薬剤情報・特定健診などの情報に基づいた診療ができる
患者本人の同意のもと、薬剤情報や特定健診などの情報を閲覧できますので、それを踏まえたうえで診療や投薬を行えます。医療の質の向上につながります。
資格過誤によるレセプト返戻の作業の削減
オンライン資格確認を導入すれば、患者の保険資格がその場で確認できるようになるため、資格過誤によるレセプト返戻が減り、窓口業務が削減、効率化されます。
導入前は、その場で保険資格確認ができないため、レセプト請求後に返戻があった場合、受付スタッフなどによる資格確認作業が必要でした。レセプト請求後に患者が再診に訪れており、そこで資格確認ができていればいいのですが、そうでない場合は電話や文書で患者に確認する必要があります。仮に資格確認ができなければ、レセプトの再請求はできませんので、受付スタッフの膨大な事務作業がムダになるケースもあります。
保険証の入力の手間削減
今までは受付で健康保険証を受取り、保険証記号番号、氏名、生年月日、住所などをレセコンなど医療機関のシステムに入力する必要がありました。
オンライン資格確認を導入すれば、マイナンバーカードでは最新の保険資格を自動的にレセコンなど医療機関のシステムで取り込むことができます。
保険証の場合でも、最小限の入力は必要ですが、有効であれば同様に資格情報を取り込むことができますので、入力の手間は大きく削減され、オペレーションミスの心配もなくなります。
来院前に保険資格を事前確認できる
資格確認システムにある一括照会を利用すれば、事前に予約されている患者などの保険資格が有効か、保険情報が変わっていないかを把握することができます。仮に確認した保険資格が資格喪失などにより無効だったときには、受付時に資格確認を行うことができますので、レセプト返戻を事前に防ぐことができます。
そのほかにも、限度額適用認定証などは加入者(患者)が保険者へ必要となった際に申請を行わなければ、発行されませんでした。オンライン資格確認を導入すれば、加入者(患者)から保険者への申請がなくても、限度額情報を取得でき、加入者(患者)は限度額以上の医療費を窓口で支払う必要がなくなりますので、診療所だけでなく患者のメリットもあります。
現在使用しているレセコンは使えるのか
現在、レセプトコンピュータや電子カルテなどを使用している場合、オンライン資格確認に必要となる機器と接続できるのかどうかを確認する必要があります。基本的には導入している機器のシステムベンダーに相談するのが一番早いと考えられます。オンライン資格確認を導入しようと考えたら、まずシステムベンダーに相談すると、必要となるさまざまな手続きを一括してサポートしてもらえますので、一度相談してみてください。
電子処方箋との連携は?
オンライン資格確認と電子処方箋の連携についてですが、オンライン資格確認ができれば、薬剤情報の取得ができるようになります。その情報の連携するかたちで電子処方箋は運用されますから、電子処方箋の準備としても、オンライン資格確認は必要になってきます。さらにオンライン診療や服薬指導の円滑な実施にもつながってきますので、この機会にぜひオンライン資格確認に取り組んでみてはいかがでしょうか。
※本記事は2月28日時点での情報をもとに作成しています。
メディコム 人気の記事
イベント・セミナーEVENT&SEMINAR
お役立ち資料ダウンロード
- クリニック・
病院 - 薬局
-
医療政策(医科) 医師 事務長
第43回医療情報学連合大会(第24回日本医療情報学会学術大会)ランチョンセミナー
-
医療政策(医科) 医師 事務長
2024年度診療報酬改定「医療従事者の処遇改善・賃上げ」 医療を取り巻く情勢から読み解く
-
医療政策(医科) 医師 事務長
第27回日本医療情報学会春季学術大会(シンポジウム2023)
-
医療政策(医科) 医師 事務長
電子処方箋の活用でタスク・シフトが実現できるのか?
-
医療政策(医科) 医師 事務長
第41回医療情報学連合大会ランチョンセミナー
-
医療政策(医科) 医師 事務長
オンライン資格確認スタート/アフターコロナを見据える
-
医療政策(医科) 医師 事務長
地域連携はオンライン診療の起爆剤となるか?
-
医療政策(医科) 医療政策(調剤) 医師 薬局経営者
オンライン資格確認の行方