設計・建築業者との意見交換は積極的に
意見や不満は早め早めに伝える姿勢が重要
開業準備を進めるにあたっては、設計・建築業者との打ち合わせがかなりの回数で必要になってきます。その場合に重要となってくるのが、ご自身の考えや不満などを最初からきちんと伝える姿勢です。たしかに相手はその道のプロですから、「自分が見当はずれのことを言っていたら恥ずかしい」「まかせておけば上手いことやってくれるだろう」との思いから、明確な意思表示をするタイミングは遅れがちになってしまうもの。「試しに図面を書いてもらってから」「概算の見積りをつくってもらってから」と、受け身でアクションを起こす展開になりやすいのです。
ですがクリニックの設計や内装工事は、開業準備において最大級のお金と時間をかける部分です。きっかけはちょっとした行き違いだったとしても、万一トラブルにつながったときは大きな損失となり得ます。「こんなはずではなかった」と後悔しないためには、早め早めにご自身の要望をぶつけておく必要があります。準備段階で思い描いていたイメージと、完成後の実際のクリニックとのギャップを最小限にするためにも、業者とのコミュニケーションは主導権を持って行わなければなりません。
設計士との積極的な意見交換で無駄を省く
そもそも設計に取りかかってもらう前の段階で、開業しようとしているクリニックのコンセプトを設計担当者に理解してもらわなければなりません。先生がどんな診療方針を持っているのか? そのためにはどんな診療活動が必要なのか? それを実現するクリニックの設備・内装とは? というように、「コンセプトに沿ったクリニックの理想像」を設計者とともに模索する必要があるのです。コンセプトという抽象的概念を、クリニックのデザイン・カラーリング・使用する素材といった具体的アイデアに落とし込む作業ともいえます。
この段階で先生の想いを伝えきれていないと、次回の打ち合わせ時にはイメージと大きくかけ離れた設計図ができてくるかもしれないのです。もちろん新たに書き直してもらうことは可能ですが、的外れな図面を書くために費やされた時間は帰ってきません。スケジュール通りに準備を進めることは想像以上に大切だった、と気づくのは往々にして開業直前です。そうならないように、どの局面でも積極的な意見交換をして無駄な時間とコストを省いていきましょう。
合意を得た内容について頻繁に反古にしない
ただし、先生の考えを相手に伝えるにあたって注意しておくべきことがあります。それは、先生・業者ともに納得してまとまった事案を、頻繁にひっくり返さないようにすることです。いくら先生の思い通りのクリニックにしたいからといって、「前回はこう言ったけれど、やっぱり取りやめで」などと毎回のように意見がコロコロ変わっては業者も対応できません。こんな時は、自分の内にある想いが、まだアイデアとして煮詰まっていないということ。設計・建築業者を振り回す前に、ご自身の考えをまとめるようにしてみましょう。このコラムをお読みいただいている方の中にも、診察の際には患者の声に耳を傾け、質の高いコミュニケーションをとろうと努力している先生がたくさんいらっしゃることと思います。ぜひその姿勢を忘れずに、設計・建築業者との打ち合わせにも臨んで下さい。
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