経営理念の意義とは
理念は自らを鼓舞する力になる
クリニック開業の決心がついたら、ぜひとも行っていただきたいことがあります。それは『経営理念』について熟考すること。たとえば「私は○○な医療を目指しています。だから私のクリニックは○○です」というように、できれば明確な文章として表現できるまで思案に思案を重ねてみてください。実際のところ、開業という一連の行動には、心身ともにかなりのエネルギーが必要となってくるものです。開業時期や場所・施工業者の選定に加え、資金調達やスタッフの採用、オープン広告に内覧会の手配などなど…。生まれて初めての経験に、戸惑うことや不安を覚えることも多いでしょう。そんなとき、「そもそも自分が独立したのは○○のためなんだ!」と気持ちを後押ししてくれるのが経営理念なのです。納得いくまで考え抜いた“ブレない軸”だからこそ、自らを奮い立たせる原動力となり得ることを心に留めておいてください。
開業に関する作業もスムーズに
意外に思われるかもしれませんが、理念がキッチリ決まっていると開業にまつわる様々な実作業を行っていくうえでも有利に働きます。たとえばスタッフを採用する際。大事なクリニックの一端を託すのですから、「他のクリニックより待遇が良さそう」だとか「なんとなく雰囲気が気に入って」というありがちな理由での応募者よりも、苦労も喜びも分かち合える高い志を持った人に集まって欲しいもの。もし募集時に経営理念をしっかりと掲げていれば、熱い気持ちで賛同してくれる人も集まるはずです。また、開業場所や導入する医療機器の選定時も、明確な理念があると迷うことも少なくなるでしょう。「なぜその場所にすべきか」や「なぜその機器が必要なのか」という疑問を理念に照らし合わせることで、選択肢を早々に削ぎ落とし、問題の本質に集中できるからです。人員や土地、機器を選ぶ──。これらの重要な局面で、経営理念はクリニックが進むべき方向を示す「旗印」としても機能してくれます。
真の生き甲斐や願望から理念は生まれる
「では具体的にどんな理念を立てればいいの?」と思われた先生もいらっしゃることでしょう。しかし申し訳ないことに、一言一句ご説明することはできません。なぜなら理念というものは、ご自身の心の奥底にある、真の生きがいや願望を投影したものでなければ意味がないからです。いくら耳に心地良く響いても、どこかで聞いたような借り物の言葉ではブレない軸とはなり得ません。それでも考えがまとまらない時は、すでに独立されている先生に意見を聞いてみることをおすすめします。ただし理念自体を模倣するのではなく、それを導きだした考え方や姿勢を学ぶようにしてください。ご自身ならではの“真にオリジナルの理念”を生み出すことを、常に意識しておきましょう。経営理念とは、クリニックのアイデンティティであり、クリニック経営という長い航海に出るための羅針盤でもあります。もし「理念なき開業」が実現したとしても、将来困るのは先生ご自身です。困難にくじけそうになったとき、いつでも初心に返り前を向いて歩き出せるよう、今この時期にじっくり思案なさってください。
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