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クリニック開業 医師 事務長 2024.01.30 公開

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訪問診療は介護保険?医療保険、介護保険が適応されるケースなどを解説

訪問診療は、病気や障害などで医療機関への受診が困難な患者に対して医師や看護師などの医療従事者が自宅、介護施設などに訪れて医療を提供するサービスです。近年需要が増えているサービスですが、適応される保険の仕組みが煩雑な面もあります。今回は、訪問診療の適応となる保険の種類や介護保険が適応となるケースなどについて詳しく解説します。

※本内容は公開日時点の情報です

#訪問診療

目次

訪問診療とは

訪問診療は介護保険?医療保険、介護保険が適応されるケースなどを解説

訪問診療とは、病気や障害などで通院が困難な患者の自宅や入所している介護施設などに医療従事者が定期的に訪問して診療や治療を行う医療サービスのことです。一般的には1~2週間に1回ほどのペースで訪問し、患者や家族の自宅や介護施設での療養をサポートします。体調が悪くなったときに緊急で訪問して診療を行う往診とは異なり、訪問診療は患者の状態などを考慮してケアプランを立てた上で定期的な訪問を行うのが特徴です。

訪問診療は医師、看護師、ケアマネージャー、介護士などの医療従事者がチームになって行い、必要であれば療養相談や指導など診療以外のサービスも提供します。対象者は要介護認定を受けている否かによらず、「通院が困難」な患者であればサービスを受けることができます。

介護保険と医療保険の違い

訪問診療を受ける患者の多くは寝たきりなどの高齢者です。75歳以上の患者が大半を占めており、療養にかかる費用を介護保険、医療保険のどちらで賄うか問題となるケースもあります。介護保険と医療保険の違いについて詳しく見てみましょう。

介護保険

介護保険は、40歳以上になると加入する義務がある社会保険です。介護が必要になったときは、「要支援1,2」、「要介護1~5」の7段階に区分される要介護認定を受け、区分や所得に応じて必要な介護を1~3割の自己負担で受けることができます。
介護保険で受けられるサービスは介護予防や生活支援のために必要な訪問、通所サービスのほか、介護器具の貸与や購入費の支給、自宅改修費などであり病気や障害の診療に関わるサービスは受けることができません。また、利用できる額は要介護の区分によって上限があるため注意が必要です。

医療保険

医療保険は、すべての国民が加入している社会保険です。年齢や所得によって割合が異なりますが、健康保険証を提示することでかかった医療費の1~3割のみが自己負担となります。
医療保険には介護保険のような利用できる額に制限はなく、病気や障害の治療、検査などを低い自己負担が受けることができます。

訪問診療には医療保険が適応される

訪問診療の対象者は上述したように要介護認定を受けているか否かによらず、通院が困難な患者や家族の要望があれば受けることができるサービスです。
そのため、訪問診療には医療保険が適応され、在宅患者訪問診療料、在宅時医学総合管理料、各種指導管理料などの算定項目のほか、検査、注射、投薬などの費用、他院への紹介時などに必要な診療情報提供書などの発行料などを請求することができます。
在宅患者訪問診療料は事前に立てたプランに基づいて行った場合は算定することができ、限度日数は患者の病気や人工呼吸器装着の有無、終末期か否かなど状態によって異なります。必要に応じて在宅ターミナスケア過酸や在宅看取り加算などをプラスすることも可能です。

介護保険が適応されるケース

訪問診療は基本的に医療保険が適応されます。しかし、医療保険が適応になるのはあくまでも医療に関わるサービスのみであり、訪問して療養上の管理や指導を行う場合には介護保険が適応されます。適応される条件や算定できる報酬点を詳しく見てみましょう。

要介護認定を受けていることが条件

患者の自宅や介護施設を医師、薬剤師、管理栄養士などが訪問して療養上の管理や指導を行うことを「居宅療養管理指導」と呼び、対象者は要介護者のみとなる点に注意が必要です。要支援区分の患者に対する管理や指導は「介護予防居宅療養管理指導」と呼ばれ、報酬単価が異なります。いずれも、月1回以上の訪問診療や往診を行い、定期的にケアマネージャーへの診療情報提供を行うことが算定の条件です。
もちろん、要介護認定を受けていない患者は居宅療養管理指導や介護予防居宅療養管理指導にかかる費用を介護保険から得られません。介護保険サービスは65歳以上の患者や特定疾病がある40~64歳の患者が要介護認定を受ければ利用することが可能です。該当しない場合は訪問診療にて療養上の管理や指導を行っても費用を請求できないため、医療機関によっては要介護認定を受けていない患者は訪問診療を断るケースもあります。

報酬点の種類

居宅療養管理指導費にはⅠとⅡの2つのタイプがあります。
月2回を限度として在宅時医学総合管理料や施設入居時等医学総合管理料を算定する場合は、居宅療養管理指導費(Ⅱ)が適応になり、単一建物居住者が1人の場合はⅠが514点であるのに対しⅡは298点となります。

訪問診療と居宅療養管理指導の併用

訪問診療は医療保険が適当となりますが、介護保険で賄われる居宅療法管理指導費を併用することが可能です。
ただし、訪問診療と居宅療養管理指導費を併用する場合は報酬点数の算定方法に細かい決まりがあります。上述したように居宅療養管理指導にはⅠとⅡがあり、診療報酬を合わせて算定するか否かによって適応となる報酬点数が異なります。訪問回数に応じて月2回まで算定することができますが、ケアマネージャーなどへの適切な情報提供を行わなかった場合には減算や算定ができなくなるため注意が必要です。

介護保険が適応される事例:末期がん患者の場合

末期がんで緩和ケアを受けている患者は年々増えていますが、自宅で最期を迎えたい患者も多いのが現状です。しかし、末期がん患者の多くは定期的な医療の介入が必要であり、ADL(日常生活活動度)が自立していないケースも少なくありません。
このような事例は要介護認定を受ければ訪問診療と介護保険を併用して自宅での療養生活を送ることができます。具体的には、必要な医療は訪問診療を適応し、居宅療法管理指導費のほか介護に必要なベッドなどの用具、入浴介助などを介護保険で賄うことができます。
訪問診療を行うときには、介護保険を適応されることでより多くの療養資源を得られるため、ケアマネージャーの介入を進めて患者と家族の負担をできる限り軽減することが大切です。

まとめ

訪問診療の件数は近年急激に増加しており、高齢化がさらに進む社会では今度も需要が増えていく医療サービスであると考えられます。
訪問診療は基本的に医療保険が適応となりますが、条件によっては介護保険を適応できます。患者や家族がよりよい療養生活を送れるよう、ケアマネージャーや医療従事者と相談しながら療養計画を立てましょう。要介護認定を受けていない患者に対してはできるだけ早く手続きを進めてください。

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