患者満足度調査による経営改善
見えない不満を見える化し経営改善につなげる
例えばレストランに食事へ出かけた際、「メニューに使われている書体が凝り過ぎていて読みづらい」「窓が広いのは良いが通行人と目が合って落ちつかない」「食器を下げるのが早くて食後の余韻が楽しめない」などと感じたことはないでしょうか? そのいずれも、レストランを来店客として利用して初めて分かるような不満ばかり。わざわざクレームをつけるほどでもないため、お店の方からはなかなか気づけない“見えない不満”とも言えます。これはサービスを提供する側とされる側で、満足/不満足感の視点が異なるため生まれるものですから、クリニックにおいてもまったく同様のことが起こりえます。もし将来、「問題点はほとんど改善したと思うのに患者が増えない…」と増患対策に頭を悩ます時期が来たならば、“見えない不満”を“見える化”し経営改善に活かせるよう「患者満足度調査」を行ってみてはいかがでしょうか。
コストと手間がかかり敬遠される患者満足度調査
患者満足度調査と聞くと、総合病院の掲示スペースやホームページなどに結果が掲出されている、専門業者による大規模な調査を想像される先生もいらっしゃることでしょう。もちろん経済的余裕が充分にあるクリニックでしたら、コンサルタントを介して調査会社に依頼するのが効率的です。調査結果の一覧、しかも満足の声ばかりが記載されたものが患者の目につきやすいところに貼り出されていれば、「信頼できるクリニックだ」「常に改善を心がけている院長だ」といった印象も持ってもらえます。しかし実際には、コスト面に加え「調査に手間がかかりそう」という理由から、多くのクリニックが実施を見送っているのが現実です。確かに、来院したすべての患者にアンケートの記入を促し、回収した後で集計し統計をとる…といった作業を、日々の多忙な業務に追加することを考えると及び腰になるのも理解できます。では、お金も時間もないクリニックには、経営が安定し余裕ができるまで満足度の調査はできないのでしょうか。いいえ、あきらめるのはまだ早いかもしれません。
昔ながらの意見箱で患者の満足度を探る
そんな時こそ、ぜひ思いだしていただきたいものがあります。金融機関の窓口やスーパーマーケットの一角に置いてある「ご意見箱」です。クリニックでも設置しているところは多いのですが、形だけ置いてあるのみで実際にはほとんど機能していないケースがよく見られます。この意見箱をきちんと活用し、簡易的な満足度調査として捉え直すのです。調査の目的を「患者の属性や不満の程度に関わらず、クリニックの具体的問題点を見つけること」と割り切ってしまいさえすれば、アンケート用紙を患者全員に配ることも、性別・年代別に統計をとる手間も必要ありません。患者自らわざわざ書き入れ投函した意見ですから、喜びの声よりも辛辣なものが多いでしょうが、それこそがありがたい視点なのです。
最近ではホームページにも意見箱の投稿フォームを掲載し、寄せられた意見に対し回答を掲載するなど、患者が発言しやすい環境づくりに取り組んでいるクリニックもあるようです。昔ながらの手書きの意見箱を、デジタル面からも積極的に活用する好例です。大規模調査はできないとあきらめ、手をこまねいていても経営は改善しません。現状でできることは何か、常に探る習慣をつけることが肝心だと心得ましょう。
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