成功のための開業地選び(1)
開業地選びは後悔しないよう慎重に
これまで一度でも開業を検討された先生ならば、「クリニックをどこに構えるか」という課題がいかに頭を悩ませる難問であるかはご存知でしょう。以前お伝えした通り(バックナンバー:『開業スケジュールの概要』参照)、開業地選択は「開業準備期間中のヤマ場」と言えるほど重要な一大事。なにしろ気に入らなかったからといって、開業した後で気軽に引っ越しするというわけにはいきません。さらに、立地の良否が開業直後の経営状況を左右することも大いにあり得ます。開業後に後悔しないためにも、充分かつ冷静に候補を吟味しましょう。とはいえインターネットで開業物件を扱っているサイトを覗いてみると、不動産情報が溢れるほどに掲載されています。闇雲にあれもこれもと目移りしながら探していては、とても効率的とは言えません。そこで今回、次回の2回に分けて、開業地選びをスムーズに進めるポイントを紹介していきます。
物件情報を吟味する前に開業エリアを絞る
開業自体が初めての場合は、どうしても売価や賃料、建物面積などの具体的条件が記載された物件情報にばかり目を奪われてしまうもの。外観や内観の写真など見てしまうと、実際にそこで働くイメージが湧いてくるので無理もありませんが、ひとまず個別の物件情報は脇において先に開業エリアの検討を行いましょう。「○○区内」や「○○市内」、または「鉄道○○線沿線」「国道○○号沿線」などの単位で立地を検討し、エリアをいくつかに絞り込んでから個別の物件選定に入るのが効率よく理想的です。「特定のエリアにこだわらず広く探した方が良い物件に巡り会えるのでは?」という疑問はあるでしょうが、物件がいくら良くても立地が悪ければクリニック経営は立ち行きません。先生方が“顧客”として相手にするのは、健康に不安のある患者さん達なのです。立地が良く通いやすいことは、リピーター獲得への近道。クリニック経営成功の秘訣と心得ましょう。
エリア選定は“リアルな情報”を大切に
生まれ育った地元の街や、先輩開業医から奨められた街、「開業するなら」と昔から憧れていた街など、ご自身の知識と経験からいくつかの候補地が浮かんできたら、第1希望・第2希望…と序列をつけて上位エリアの情報を集中的に収集してみましょう。駅はもちろん、ショッピングセンターやスーパーマーケット、公共施設など人が集まるスポットがないか地図上で確認したり、人の流れを妨げるようなビル・川・坂などの位置関係を把握したりすることが重要です。また当然のことですが、調剤薬局や競合となりそうなクリニックもしっかりとチェックしておきましょう。その際、意識しておかなければならない点があります。インターネットは情報収集にたいへん便利なツールではありますが、その手軽さに慣れきってリアルな情報を疎かにしてしまわないように、ということです。地元の不動産業者や住民の生の声など、“地に足の着いた情報”は、誰でも入手できるWEB上の情報より遥かに貴重です。同様に、街を歩いたときに感じる活気やムード、行き交う人々の性別や年齢層、雰囲気など、実際に足を運んで得られる情報もたくさんあります。この時期は休日返上するぐらいの気持ちで、先生自ら積極的に動くようにしてください。そうすることで良い開業地への“眼力”や“嗅覚”というものが、自然と備わってくることでしょう。(次回へ続く)
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