Medicom Park

  1. PHCグループ
  2. [ウィーメックス]メディコムTOP
  3. メディコムパークTOP
  4. 経営アイデアコラム一覧
  5. オンライン資格確認の対応状況と医療機関の本音

クリニック開業 医師 事務長 2023.04.20 公開

記事をプリント
Twitter Facebook

オンライン資格確認の対応状況と医療機関の本音

2023年4月に義務化となる「オンライン資格確認」。義務化に伴い、急速に準備が進む中、患者側、医療機関側での課題が浮き彫りになりつつあります。そこで、オンライン資格確認に関する医療機関の本音を取材に基づき解説します。

※本内容は公開日時点の情報です

#業務効率化

目次

オンライン資格確認導入の義務化

2023年4月、「オンライン資格確認」の義務化の期限を迎えます。年度末の忙しい時期に、医療機関・薬局は駆け込みで準備を進めています。しかしながら、顔認証カードリーダーの不足、パソコンの半導体不足によるパソコンの調達、ネットワークおよび設置工事の問題などで、期限までに準備が間に合わない医療機関・薬局が続出しており、政府はそれぞれの問題ケースに合わせて「経過措置」を用意しました。
とはいえ、あくまで経過措置であり、導入しなくて良いわけではありません。あくまで、猶予が設けられたに過ぎません。

オンライン資格確認の利用状況

改めて、義務化を迎えるにあたり、医療機関及び患者の状況はどうなのでしょうか。複数の医療機関に取材したところ、義務化から1ヵ月を切った2023年3月時点で、マイナンバーカードを持ってくる患者は「数パーセント」にとどまっており、1日に数人が利用する程度という状況でした。義務化の4月からは、政府のプロモーションやマスコミの報道、診療報酬による変化などもあり、もう少し増えるかもしれないが、急にマイナンバーカードを持ってくる患者が急増するとは考え難いのが現状です。

診療報酬の加算(医療情報・システム基盤整備体制充実加算)によって、マイナ保険証の方が、従来の保険証よりも低く負担を設定しているにもかかわらず、それが十分なインセンティブにつながっていないというのが実際のところのようです。
また、医療現場を悩ませているのが、オンライン資格確認を導入したことで、電子カルテやレセコンのスピードが従来より遅くなったり、端末のトラブルが出ていたりすることです。遅くなっている原因としては、オンライン資格確認端末が常に支払基金等のデータベースにアクセスし、情報取得のやり取りが行われており、また、オンライン資格確認端末と電子カルテ等も連携を図ることで、電子カルテ等のスピードにも影響をもたらしていると考えられます。また、端末のトラブルについても、顔認証付きカードリーダーの故障、オンライン資格確認端末の故障も少なからず起きており、導入したけれども使えないという事例も多数報告されています。

なぜ、患者はマイナンバーカードを持ってこないのか

なぜ、患者はマイナンバーカードを持ってこないのでしょうか。「認知不足」や「メリット不足」など、理由は様々考えられますが、最も大きいのはマイナンバーカードを持っていくインセンティブに対して、マイナンバーカードを紛失するリスクが大きく上回ってしまっていることにあると考えます。

マイナンバーカードは、年金や税金、健康保険、公金口座と、重要な個人情報と次々に紐づいていくこと対して、患者は一つにまとまって便利になるという考えよりも、「無くしたら大変なことになる」という思いが勝ってしまうのではないでしょうか。それが、健康保険証は財布の中に入っているのに、マイナンバーカードは自宅に大切にしまっているという行動になるのだと思われます。

実際のところ、スマホの方が様々な情報に繋がっており、無くした時のリスクは大きいのですが、携帯するインセンティブが紛失するリスクを大きく上回っているため、必ず持ち歩くようになっているのです。
また、日本において、身分証明書を持ち歩き、提示する機会が少ないことも影響していると考えます。現在は、健康保険証や運転免許証があればことは足りるという状況であるため、わざわざ医療機関を受診するのにマイナンバーカードを持ち歩こうと思わないのです。

医療機関が前向きに歓迎できない理由

医療機関は、通常の健康保険証からマイナ保険証への切り替えに対して、あまり前向きとは言えません。リアルタイムの資格確認や、薬剤・健診情報の確認ができることは便利にはなります。しかし、今は義務化だからやむを得ず対応するが、本当はこれまで通りの保険証の方が良いと考えているのです。つまり、これまでのやり方を変えるほど効果があると思えないのです。

デジタル化を進める上で、この「今のやり方を変えたくない」は、最も高いハードルです。例えば、医療機関のデジタル化のために、電子カルテ等を導入する際も同じ声が上がっていました。「電子カルテよりも紙カルテの方が良い」という声です。

アナログであることは、はたからはとても非効率に見えます。しかしながら、その考え方は現場にはまったく当てはまりません。今上手くいっている仕組みを変えることがとても怖いのです。このように、これまで長年培った習慣化された仕組みを変えることは非常に難しいのです。

受付の手間が増える

一時的に、オンライン資格確認は受付の手間を増やします。マイナンバーカードと従来の健康保険証が混在し、どちらかを確認しなくてはなりません。カードリーダーの操作に戸惑う患者に説明も必要でしょう。中には、なぜそんなことをしなくてはならないのだとクレームに発展する可能性もあるのです。特に一度に多くの患者が来る人気のクリニックならば、顔認証待ちの列ができることが容易に予想できるのです。たがら、患者に「マイナンバーカードを絶対持って来て」とは言い難いのです。月一回の保険証の提示は普通にできるのにかかわらず。これほど長年培った習慣を覆すのは難しいのです。

関連情報

著作情報

大西 大輔

MICTコンサルティング(株) 代表取締役
大西 大輔 氏

2001年 一橋大学大学院(MBAコース)卒業
2001年 病院経営コンサルティングファーム「日本経営グループ」入社
2002年 医療IT機器の展示場「メディプラザ」設立
      東京、大阪、福岡の3拠点を管理する統括マネージャーに就任
2016年 独立して「MICTコンサルティング(株)」を設立

  • メディコムのオンラインデモメディコムのオンラインデモ

経営アイデア記事一覧へ


イベント・セミナーEVENT&SEMINAR

お役立ち資料ダウンロード