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クリニック開業 医師 2021.01.25 公開

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肛門科で失敗しない開業ポイント・年収や開業資金も解説

肛門科単体を標榜科目にしている診療所は少ないのですが、高校生から高齢者まで幅広い年齢層の方が、おしりに関わる痛み、かゆみ、出血などさまざまな症状の悩みがありニーズのある診療科です。しかし、デリケートな部分に症状があるため、集患に苦戦している診療所が比較的多くありますので、本稿では開業資金や資金調達、集患のポイント、成功事例などお伝えします。

※本内容は公開日時点の情報です

#開業検討

目 次

1.肛門科の開業資金・平均年収に関して

肛門科の開業初期投資額は、ビルなどの賃貸の場合、約9,000~12,000万円程度となっております。
筆者がサポートした80坪のビル診のクリニック(家賃は坪1万円)の事例では肛門外科、胃腸内科のクリニックの開業初期投資総額11,300万円でした。

その内訳は下記のとおりです。

  • 内装工事費用4,000万円
  • 医療機器(X線撮影装置、上・下部消化官用拡大内視鏡、内視鏡洗浄消毒機、デジタル肛門鏡、電子メスなど手術関連装置、CRシステム、超音波断層撮影装置、電子カルテなど)3,500万円
  • 医師会入会金300万円
  • 敷金保証金700万円
  • 開業費300万円
  • 運転資金2,500万円

肛門科のような専門診療科目でのクリニックでは集患に時間を要するケースが多いので、半年以上の運転資金を見込んでおくことをおすすめします。

開業資金調達方法は?

開業資金の資金調達は都市銀行よりクリニック開業の融資に積極的に取り組む地方銀行、信用金庫に相談しましょう。地方銀行によっては診療所開業専門部署を設置している地方銀行、信用金庫もあります。
肛門科を主に標ぼうする診療所は少ないものの、診療所開業の融資を積極的に取り組む地方銀行は、「手術、外科的な処置の有無」「大腸内視鏡で共通する胃腸内科的なポリペクなどの外科的処置の有無」など、診療単価を高める診療を行えるかどうかをポイントに置いています。そのため、事業計画書には診療単価を高める診療行為を行うかどうかについて、そして裏付ける実績を示すことで資金調達は有利に働きます。
例えば、日本大腸肛門病学会専門医、日本消化器外科学会専門医など専門医の資格、これまでの症例数などを事業計画に記載するなど、実績をしっかりと明記しましょう。

肛門科を主とするクリニックの平均年収は?

肛門科を主とするクリニックの開業医の年収は、筆者のクライアントのデータで見ると2,000万円~5,000万円程度と幅広くなっております。開業医の平均年収が2,400万円~2,500万円となっていますので平均より高い傾向にあります。

2. 肛門科の開業ポイント

厚生労働省の「医療施設調査 診療所の診療科目別にみた施設数(重複計上可)」によると、肛門外科を標ぼうしている診療所件数は平成26年:3,246件、平成29年:3,113件で若干の減少傾向にあります。また、診療所の総数に対する肛門外科の割合は3%前後です。肛門科の診療所についてはほとんどが胃腸内科肛門外科など重複診療科となっていて、単体で標ぼうしている肛門科に特化した診療所はさらに少なくなります。肛門科単科の診療所が少ない理由は、手術や外科的処置をしなければ収益性が低く経営を成り立たせるのが難しいからでしょう。したがって、肛門科の開業ポイントは手術と外科的処置を行うことができることが必須なのです。
肛門科の主訴は、ほとんどが血便です。血便の初診は、通常S状結腸までの大腸内視鏡検査をしますので、診療単価は約12,000円になります。(初診料282点+大腸内視鏡検査 S状結腸900点 合計1182点)がほぼ全例算定できます。また、痔の患者さんは最終的に手術か硬化療法のいずれかを選択します。いずれの選択も四段階注射法を伴うものであれば1回6,520点と高単価となります。

そして、胃腸内科と肛門外科を組み合わせることで高単価の診療を行うこともポイントです。例えば、消化器内科に特化した診療所では、高単価である内視鏡検査を実施するために健康相談や診療単価が安くても幅広い診療行為を実施してフォロワーをつけていきます。そのため高単価のポリペク症例を集めるのに時間を要します。肛門科は患者さんが来院した時点で大腸内視鏡検査ができますので、消化器内科よりポリペク症例を容易に集めることが可能です。

イメージ

肛門科は大腸内視鏡検査が前提となりますので消化器内科のメリットを享受できます。診療科目を組み合わせることで高収益モデルを作ることも可能となりますので検討してみてはいかがでしょうか。

参照:厚生労働省「平成26年(2014)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況
参照:厚生労働省「平成29年(2017)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況 p.47

3. 実際にうまくいった医師の成功事例

事例:ベットタウンの駅前のビル診にて開業

肛門科を主としたクリニックの開業を目指して、関東の主要私鉄のベッドタウンの駅前で開業しました。標ぼう診療科目には胃腸内科も組み合わせましたが、開業前に肛門科を主としていることをできるだけ広範囲に折り込みチラシを配布、内覧会も2日間開催し事前の広報活動を徹底して行いました。ホームページもMEOとSEO対策にこだわり、できる限り多くの人に周知することを継続しています。
近隣に肛門科を主としたクリニックがなく、連携のできる病院が近くにあるという条件で開業場所を探していたところ、以前勤務していた病院の近くの場所で駅から徒歩5分以内のビルを見つけることができました。
病院と同等レベルの手術ができる先進設備をそろえた手術室を設置し日帰り手術ができるようにしましたが、疾患によって日帰り手術が難しい場合は、入院設備のある近隣の連携している病院で手術を行うことで、患者さんと連携病院の双方にとってメリットがあるようにしています。また、女性が来院しやすい清潔感のある空間を意識してつくりました。

コロナ禍での開業となったため抗菌作用のある素材のカーテン、掃除が容易なイスを選び、待合室も感染対策のできる設計にしました。
患者さんの8割がお尻に関する相談で、高校生から90歳まで幅広い年齢の方が、出血、痛み、かゆみなどさまざまな症状で来院されています。中には他院で治療したものの、なかなか良くならないとセカンドオピニオンを求めて来院される方もいます。肛門科に特化しているので痔核をはじめさまざまな肛門疾患に対応しており、産婦人科と連携して分娩後の肛門括約筋不全によって起こりやすい女性特有の肛門疾患の治療も得意としています。
女性の患者さんに対しては、曜日別、診察時間別、待合室やトイレを分けるなどの配慮、プライバシーも重視したほうが良いという院長の奥さんによるアドバイスもあって、水曜日をレディースデイとして女性の患者様のみの診察・手術・内視鏡検査を実施しています。
その結果、開業4カ月目で損益分岐点である平均1日来院患者数25名に到達しました。

4.まとめ

上述したとおり、肛門科を主とする診療所は日帰り手術、ポリペク、硬化療法等の外科的処置を行うことで地域のニーズにこたえる医療を継続して提供できれば、開業医の平均年収を上回ることのできる診療科といえます。また、肛門科は患者さんが来院した時点で大腸内視鏡検査が行うことができるのでポリペクの症例も集めやすくなり、胃腸内科との組み合わせで胃腸内科のメリットも享受できます。こういった相乗効果で高単価の診療を実現させることのできる診療科です。
これまでの専門性を地域に認知してもらうためにMEO対策、SEO対策を継続して実施することと、産婦人科などの女性疾患を扱う診療科との連携で女性の患者さんを確保できるルートを作っておくことも大切です。それにより定期的に患者さんを紹介してもらえる拠点ができれば、多数の患者さんを高速で診なくても無理なく高単価の患者さんを診ることができ、短期間で開業医の平均年収を上回る可能性のある診療科目です。

筆者プロフィール

合同会社 MASパートナーズ
公益社団日本医業経営コンサルタント協会認定コンサルタント
原 聡彦

http://www.maspartners.co.jp/

医療機関に特化したコンサルティングを行う合同会社MASパートナーズ代表。これまでクリニックの開業コンサルティング150件以上、クリニックの院外事務長などの経営サポートを250件以上など現場主義のサポートで活動するかたわら、コンサルティングの現場で経験した教訓を執筆活動、講演を通して発信している。

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