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クリニック開業 医師 2024.01.23 公開

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泌尿器科の開業は有利?失敗しないポイント、年収、開業資金

泌尿器科は競合相手が少なく、開業によって安定した収入が期待される診療科目です。開業医全体の平均年収に比べて、泌尿器科医の年収は高い傾向も見られます。しかし専門クリニックであるが故に、開業当初の立ち上げに苦戦しているクリニックが比較的多くあります。本稿では開業資金や資金調達、集患のポイント、成功事例などをお伝えします。

※本内容は公開日時点の情報です

#開業検討

目 次

1.泌尿器科の開業資金・平均年収に関して

(1)泌尿器科の開業初期投資額と資金調達

泌尿器科の開業初期投資額は、ビルなどの賃貸の場合、約7,000万円~10,000万円程度と幅広くなっています。
関西の主要私鉄駅徒歩5分圏内の40坪のビル診のクリニック(家賃は坪1万円)の事例では、泌尿器科の開業初期投資総額9,000万円でした。

その内訳は下記のとおりです。

  • 内装工事費用:2,300万円
  • 医療機器(X線撮影装置、超音波断層撮影、膀胱ファイバースコープ、電子カルテなど):3,000万円
  • 医師会入会金:400万円
  • 敷金保証金:500万円
  • 開業費:500万円
  • 運転資金:2,300万円

泌尿器科のような専門診療科目でのクリニックでは集患に時間が要するケースが多いです。そのため、半年以上の運転資金を見込んでおくことをおすすめします。

(2)開業資金調達方法は?

開業資金の資金調達は都市銀行よりクリニック開業の融資に積極的に取り組む地方銀行や信用金庫に相談しましょう。地方銀行によっては診療所開業専門部署を設置している地方銀行や信用金庫があります。
また、資金調達で意外に知られていないのが医療信用組合です。医療信用組合は医師会・歯科医師会・薬剤師会の三師会を母体として設立された医療系専門の金融機関です。
医療・医薬に携わる組合員の専門金融機関として、開業融資もオーダーメイドで有利な条件で融資をしてもらえます。ただし、利用できるのは医師会の会員の方(医師会加入予定者も含む)です。地域によっては金融機関の機能を持っている医療信用組合がない場合がありますので開業地を管轄する医療信用組合の有無を調査しましょう。

資金調達については開業コンサルタントに相談し、開業初期投資計画や事業計画書などの資金調達に必要な書類の作成を依頼するほうがスムーズに資金調達ができるケースが多いです。

(3)泌尿器科専門クリニックの平均年収は?

人口透析なしの泌尿器科の開業医の年収は筆者のクライアントのデータを見ると2,500万円~5,000万円程度と幅広くなっております。開業医の平均年収がだいたい2,400万円~2,500万円となっていますので平均より高い傾向にあります。
一般的に診療所の院長の年収は都市部よりも地方の方が高くなる傾向があります。ただし、泌尿器科の場合は開業地に関係なく地域のニーズにこたえる医療を継続して提供できれば、都心部でも十分な利益を確保できる診療科と言えます。

2. 泌尿器科の開業ポイント

厚生労働省の平成30年「医療施設に従事する医師数」によると、診療所に従事する泌尿器科の医師数は約1,991人です。
他の診療科だと内科38,883人、眼科8,442人、整形外科7,903人、耳鼻咽喉科5,351人となっており、他の診療科目に比べて非常に少ない人数であることがわかります。また、泌尿器科の診療だけを専門にしている診療所の数はさらに少ないので、競合相手が少ないのも特徴です。
厚生労働省の医療施設調査によると、平成26年は3,726件、平成29年は3,741件で若干の増加傾向にあります。 厚生労働省の患者調査の概況によると、腎尿路生殖器系の疾患の受診率は入院外来ともに35歳~64歳から増え始め65歳を過ぎると急増傾向になります。 現在は高齢化が進んでいるため、泌尿器科は今後も重要な役割を担っていく診療科と言えるでしょう。

泌尿器科の開業は有利?失敗しないポイント、年収、開業資金

しかしながら、泌尿器科は一般的に文字通り「尿」というイメージが強く、受診するのが「恥ずかしい」と思われがちで毎日行われる排尿に関連する科でありながら一度も受診したことがない人も多いのが泌尿器科です。その分悩んでいる人の数も決して少なくありません。また、男性より女性にとって他の診療科と比べて受診のハードルは高くなりますので、男性と女性の待合室や動線を分けるなどの工夫で受診のハードルを下げる工夫をして集患につなげましょう。

泌尿器科を受診される患者さんの多くは高齢者で尿失禁や前立腺肥大症などの疾患で来院される方が多くなっています。高齢化が進む地域では訪問診療のニーズもあるため、訪問診療の取り組みを検討しましょう。

泌尿器科の収益構造は他の診療科と同じく下記の公式で成り立ちたちます。

「診療収入 = 1日当たりの患者数 × 1人1日当たりの診療単価 × 通院回数」

泌尿器科の1人1日当たりの診療単価は院外処方の診療所で約7,500円前後※1です。
他の診療科より診療単価は高い傾向にあります。また、通院日数は外来診療中心の泌尿器科では1.5日程度で他の診療科より短い日数です。
開業の最終意思決定をする際に考えるべきことは「毎月の人件費、家賃、リース料などの固定費」「借入金の元本返済」「院長の生活費」を賄うために、1日当たり最低何人患者数をみないといけないか、ということです。
一般的に、収支分岐点は1日の患者数と言われます。
泌尿器科の収支分岐点の1日当たりの患者数は35-40人/日が1つの目安としています。収支分岐点である1日の患者数が50人を超えるようであれば慎重な検討が必要となります。本当にその場所で1日50人来院があるのかについて、信頼できる相談相手と相談してから最終的な判断をしましょう。

参照:厚生労働省「平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
※1 :泌尿器科全国平均点数1,221点(平成30年度厚生局データ) ÷ 1.6日(筆者のクライアント平均)=763.12点
より7,500円前後で算出しております。

3. 実際にうまくいった医師の成功事例

A院長は、診療圏内の人口40,000人、競合診療所が4件あるベットタウンのビル診で5年前に泌尿器クリニックを開業しました。
少しでも患者さんにリラックスしてもらえるよう心が落ち着ける空間を意識してハード面を整備しました。
さらに患者さんの緊張した気持ちを和ませられるように観葉植物をたくさん置いて、少しでも緑を感じられるようにしていることや内装も木目調で統一し温かみのある空間づくりを実現しています。
女性専用の待合スペースを作り、女性の受診のハードルを下げる工夫を施した結果、女性に多い過活動膀胱や尿漏れの女性の患者さんが多く来院しています。
排尿障害・性機能障害・EDについては院長がライフワークとしている診療に力を入れています。そのために、A院長が開業前に勤務していた大学病院と同じような診療クオリティーを確保すべく、院内には充実した検査・治療機器を整え「泌尿器科疾患については当院で完了させたい」という想いで的確な診断、適切な治療を提供しています。
デリケートな相談に対しては遮音された個室を用意し、男性特有の悩みに対応する専用の診療時間を設けるなど受診・相談のしやすさにも配慮しています。また、少しでも患者さんにリラックスしてもらえるよう、スタッフ全員で患者さんとのコミュニケーションを大切にしており、悩みを持つ人にとって頼れる診療所となっています。

女性は尿漏れなどの症状があった場合は婦人科を受診されているケースが多いので、婦人科を標ぼうしている診療所との連携を積極的に行っています。内科的な疾患や他の診療科の疾患が見つかれば専門的な医療機関へと迅速に紹介できるよう病診連携・診診連携のためのシステムづくり、自宅でのケアが必要な場合に備えケアマネジャーとの連携も積極的に図っています。その結果、他院から外来患者の紹介やケアマネジャーから在宅患者の紹介が途切れない状況となりました。
開業3年目で年商1億円突破して医療法人化し、開業当初の借入金6,000万円も開業5年目で繰り上げ完済して無借金経営となっています。

項  目
保険診療収入 110,000,000 常勤ナース 4,200,000 地代家賃 6,600,000
自由診療収入 7,500,000 常勤事務員 3,600,000 減価償却費 3,000,000
診療収入合計 117,500,000 パートスタッフ 1,500,000 交際費 800,000
法定福利費 1,200,000 利子割引率 450,000
診療材料等原価 ▲29,300,000 福利厚生費 450,000 その他 8,500,000
人件費合計 10,950,000 一般管理費合計 19,350,000
医業総利益 88,200,000 経費合計 30,300,000
差引利益 57,900,000

(C)合同会社MASパートナーズ調べ
※金額は実際の近似値です

4.まとめ

高齢化の影響で泌尿器科は今後ますますニーズのある診療科ですが、デリケートな部分に症状があるためどうしても受診をためらわれる人が多い傾向にあります。そのため、立ち上がりの集患に苦慮するケースが見られます。泌尿器科で開業される場合は立ち上がりに苦慮することも想定して、院長自身が資金のことでナーバスにならない程度の運転資金を確保できる資金計画をしましょう(運転資金は6カ月分以上を確保する、など)。
また、完全個室の相談室や女性専用の待合室などプライバシーの確保ができるハード面での工夫や、少しでも患者さんにリラックスしてもらえるよう患者さんとのコミュニケーションを大切にするなど、院内を心温かい雰囲気にするソフト面での充実を図ることが受診のハードルを下げ集患につながるポイントとなります。
他の病院、診療所、介護施設と連携をして、より専門的で高度な医療を提供していける体制を作ることも検討しておくといいでしょう。

筆者プロフィール

合同会社 MASパートナーズ
公益社団日本医業経営コンサルタント協会認定コンサルタント
原 聡彦

https://maspartners.co.jp/

医療機関に特化したコンサルティングを行う合同会社MASパートナーズ代表。これまでクリニックの開業コンサルティング150件以上、クリニックの院外事務長などの経営サポートを250件以上など現場主義のサポートで活動するかたわら、コンサルティングの現場で経験した教訓を執筆活動、講演を通して発信している。

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