開業後はON/OFFを大切にした働き方を
クリニック経営は大小様々な精神的疲労と道連れ
現在、勤務医として働いている先生の中には「日々の業務が忙し過ぎて、なかなかプライベートの時間がとれない。こんなに働きづめならいっそ独立して開業しようか…」とお悩みの方もいらっしゃるでしょう。「どのみち同じように忙しいのなら、自分でクリニックを経営した方が実入りが良いのでは?」というわけです。たしかに開業医となり自院を上手に切り盛りしていけば、勤務医時代よりも高収入となる可能性は少なからずあります。
しかし、仮に忙しさの程度が同じだったとしても、勤務医と開業医では気苦労の種類や度合いが大きく異なります。いったんクリニックをオープンさせたからには、医師本来の業務である診療の他に、経理や労務管理、経営者としての対外的な付き合いなど勤務医時代には縁遠かった仕事も、嫌いだろうが苦手だろうがやっていくほかありません。これらから発生する精神的疲労を、大なり小なり抱えていかなければならないのです。そこで、開業医の働き方として大切なのが気持ちのリフレッシュ。24時間ずっと張りつめていては、長丁場のクリニック経営を乗り切れません。上手にONとOFFを切り替えることは、勤務医時代以上に重要になってきます。
気持ちの切り替えスイッチとなり得る「職住分離」
「ONとOFFの切り替え」と聞くと、まず頭に浮かぶのは職住分離ではないでしょうか。つまり職場であるクリニックと、日常生活を送る住居を切り離すこと。通勤時間を無駄なものと割り切る先生にはお薦めしませんが、そうでない方にとっては職場と住居にワンクッションあることが気持ちの切り替えスイッチとなり得ます。
たとえば戸建て開業のように職住が完全に一致していると、気の休まるタイミングがなかなか見つかりません。早朝から閉院時間過ぎまで大勢の患者を診療し、スタッフたちとのミーティングをこなし、コンサルタントに経営相談をする…。そんな忙しい日々を送る先生の脳内は、常に興奮状態にあります。壁一枚、あるいは床一枚隔てただけの自宅スペースに戻っても、気持ちは高ぶった臨戦状態のまま。すんなりと寝つけない日もあるでしょう。また、日常の生活圏で顔見知りの患者に出会ったりすると、休日も仕事モードになってしまうことも。開業直後など、とくに気ぜわしい時期はよほど切り替え上手な人でないと気分転換も困難です。
一人で没頭する時間を切り替えのきっかけに
ただそうはいっても、さまざまな事情により簡単に職住分離できない場合もあります。ならば一日の終わりに、気持ちをリセットする時間をつくってはいかがでしょうか。一人きりになれる場所を見つけて、自分が好きなことに心から没頭するのです。院長室にこもって読書をするもよし、車で近所をぶらりとする間にお気に入りの音楽を聴くもよし。これを繰り返すうちに、その行動自体が、仕事モードとリラックスモードを切り替えるきっかけとして習慣づいてくるはずだからです。忙しければわずかな時間でもかまいません。中には、「白衣に着替えること/脱ぐこと」をきっかけとして利用している時短派の先生もいるくらいです。
開業医を長く続けようと思えば、こういった精神面に気を配った働き方が必要になってきます。体がそうであるように、心も永遠に調子が良いままではいられないからです。なんだか仕事に集中できない、気が乗らないような時は、もしかしたら切り替えできていない気持ちをどこかで引きずっているのかもしれません。そんな時が来る前に、ぜひご自身で予防できるようにしておきましょう。
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