統合報告書 2023

PHCグループの事業戦略診断・ライフサイエンス

モダリティの進化に貢献

中村 伸朗

中村 伸朗

PHCホールディングス株式会社 執行役員
PHC株式会社 代表取締役社長 バイオメディカ事業部長

メッセージ

PHC株式会社バイオメディカ事業部は、1966年に医薬品の保存を目的として設計・開発した薬用保冷庫の販売を契機に、ライフサイエ ンス分野に参入しました。
高品質で信頼性の高い商品・サービスを提供することで「ライフサイエンスと医療に新たな価値を創造し、健康で豊かな社会づくりに貢献する」という事業部のミッション実現に向けて取り組んでいます。
今後は、更に、成長市場である細胞培養分野において、PHCグループが血糖値測定システム(BGM)で培った目標化合物の検出技術等を生かした自社製品開発の強化を図っていくことで、細胞・遺伝子治療(Cell and Gene Therapy; CGT)の治療製造プロセスへと私たちが貢献する領域を拡大し、新規治療法(モダリティ)の進化に貢献していきます。

概要

バイオメディカ事業部は主にライフサイエンス研究において、試料の保存や細胞培養、クリーンな研究環境の維持等に必要とされる革新的な機器とサービスを国内外の製薬企業や医療機関、大学等に提供しています。
三洋電機のバイオメディカ事業部が当事業の前身ですが、2012年に三洋電機がパナソニックに統合されたことをきっかけにPHCグループに加わりました。前身は違いますが、両社のモノづくりの長所が融合し、より強固なものになりました。
効率性と使いやすさを追求した精緻な設計や先進的な技術と高度なモノづくりに裏打ちされた我々の製品は高い品質と信頼性を誇り、優れた性能とエネルギー効率を実現します。
今後も、ライフサイエンス分野における研究パートナーとして、最先端の製品・サービスを通じた貢献を続けます。

強み

  • 業界最高水準の品質・省エネ性能の製品
    超低温フリーザーは業界最高水準の温度制御を実現し、またその省エネ性能でも世界トップクラスです。またCO2インキュベーターも独自の汚染防止機能があり、その品質・省エネ性や使い勝手の良さは高い評価を受けています。
  • 高品質な製品を支えるモノづくり
    精緻な技量と集中力を要する溶接工程では、作業者のコンディション影響を最小化するための取り組みや、工場内にあるものづくり訓練道場での研修・訓練制度等、高品質なモノづくりを支えるための知見と工夫が蓄積されています。
  • 高い市場シェアと顧客リーチ
    主力の超低温フリーザーやCO2インキュベーターは国内で1位、グローバルでも2位のシェアを有しています。これらのポジション及びこれまで築いてきた顧客との信頼関係をベースに、今後新たな領域における新製品・サービスを展開していきます。

FY2022スナップショット

売上収益593億円

主要顧客

  • 病院/診療所
  • 製薬企業
  • 研究機関/大学
  • 調剤薬局

主要製品・サービス

  • 超低温フリーザー
    高効率な冷媒・熱交換器の開発、断熱技術を用いてグローバルでもトップクラスの省エネ性能を有する製品や、2つの独立した冷凍回路を搭載し、1つが故障しても‐70℃を維持し安心・安全な保管を実現する製品(デュアル冷却技術)
  • CO2インキュベーター
    除染時間を大幅に短縮する過酸化水素除染技術、お客様の研究を中断させることなく培養しながら器内汚染防止が可能な銅合金ステンレス、UV殺菌技術等、業界をリードする製品
  • ファーマシーソリューション
    高速で正確かつ安定した稼動を可能にする自動化技術、ヒューマンエラー防止技術を用いて、薬局及び病院内の調剤から投与までの業務をきめ細かく支援するシステム機器
  • フードケータリング
    医療施設や福祉施設での適温給食に貢献する「デリカート」は、パワーアシスト等先進機能で、安全・効率的な配膳作業をサポート
  • 超低温フリーザー

    高精度な温度管理で検体等を長期安定保存

    日本シェア 1 / 世界シェア 2
  • CO2インキュベーター

    最適な培養環境を実現し、細胞培養の
    生産性を向上

    日本シェア 1 / 世界シェア 2
  • 薬用保冷庫

    自然冷媒とインバーター制御コンプレッサーを搭載し、
    大幅な省エネルギーを実現

    日本シェア 1 / 世界シェア 4
  • ワイヤレスモニタリングシステム

    庫内温度データをクラウド上に保存し、
    稼働状況をリアルタイムで一元管理

    ワイヤレスモニタリングシステム イメージ
  • 自動錠剤包装機

    処方薬のカウント・払出・一包化を自動化。
    薬剤師の業務効率化と調剤ミス低減に貢献

    自動錠剤包装機 イメージ
  • デリカート

    保温保冷機能・パワーアシスト走行機能
    により病院食の配膳負荷を軽減

    デリカート イメージ

※自社調べ

バイオメディカ事業部

バイオメディカ事業部 イメージ

ライフサイエンス領域は、民間企業ではインフレ等による経済活動への影響があるものの、特に細胞・遺伝子治療やmRNA医薬、核酸医薬といった新モダリティや先端技術への政府による投資は引き続き旺盛です。
特に細胞・遺伝子治療領域(CGT)の研究開発では、細胞の培養、分析、保存等様々なプロセスがありますが、いずれも市場の成長余地は大きく、全体として年2桁成長が見込まれています。
一方で世界的なインフレ環境下においても、中国メーカー等の台頭により、一部のコモディティ機器では価格競争が進行しています。

超低温フリーザーやCO2インキュベーターといった高付加価値品については、差別化できる新製品開発を進め、汎用品については、インドネシア工場の活用等製造オペレーションの改善によりコスト削減を進めていきます。

大きな市場の伸びが見込まれる細胞・遺伝子治療の領域にも注力します。細胞培養では、細胞の代謝物が細胞の健康状態を見る上で重要な指標となります。従来は手作業での間欠的な代謝物の測定であったため、常に細胞の状態を把握することは困難でした。血糖値測定で培った特定化合物の定量化技術を応用して開発したライブセル代謝分析装置は、細胞代謝物を連続測定することが可能になり、リアルタイムで細胞の状態を可視化します。この技術によって、従来の手法では得られなかった新たな知見が獲得できるだけでなく、その知見を通じて治療用細胞の安定した製造への貢献が期待できます。

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