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  5. 診療所の集患で悩む時間を減らすには?診療所のマーケティング戦略を考える~前編①~

クリニック経営 医師 事務長 2024.09.09 公開

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診療所の集患で悩む時間を減らすには?診療所のマーケティング戦略を考える~前編①~

立地選び、集患、マーケティングなど、数々の悩みが尽きない診療所経営。経営について悩む時間をなるべく減らし、本当に重要であるはずの医業に集中したいと感じる先生は多いはずです。経営に悩む時間を減らし、より医業に集中するためにこそ活用いただきたいのが、「フレームワーク」。今回からは、先生方の一番の悩みの種である「集患」について、前編と後編にわけ、数々の医院経営をご支援してきた公認会計士の大野氏に解説していただきます。前編となる本記事では、まず診療所の立ち位置を理解し、基本的なマーケティング戦略を考えるためのフレームワークをご紹介します。

※本内容は公開日時点の情報です

#開業検討 #開業直後の悩み #診療所経営で悩まなくなる戦略

目次

診療所経営において、もっとも重要で、もっとも頭を悩ませるのが「集患」、つまり「マーケティング」ではないでしょうか。
どんなに素晴らしい知識や技術を持っていても、マーケティングが上手くできていなければ、それらを発揮することができません。

そこで診療所におけるマーケティングについて、前編と後編に分け、STP分析とAIDMAモデルという2つのフレームワークを説明しながらお伝えしたいと思います。

前編となる今回は、診療所のマーケティング戦略の基盤を決める「STP分析」について説明します。

●この記事でわかること
・効率的に診療所のマーケティング戦略を考える「STP分析」とは
・STP分析の具体的な手順

診療所のマーケティング戦略の基盤を決める「STP分析」

昨今の診療所経営に必要なモノは?

マーケティングにおいて重要なのは、顧客のニーズを理解し、適切な市場にアプローチすることです。

STP分析は、このプロセスを体系化し、効率的に行うためのフレームワークです。

STPとは、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の略であり、それぞれのステップが連続してマーケティング戦略を構築する重要な要素となります。

セグメンテーション(Segmentation)

セグメンテーションは、市場全体を異なるニーズや特性を持つ顧客グループ(セグメント)に分割するプロセスです。
市場は一様ではなく、顧客の年齢、性別、収入、地理的な位置、心理的な要因、購買行動など、さまざまな属性によって異なるセグメントに分けることができます。
このプロセスにより、企業は市場の多様性を理解し、各セグメントの特性やニーズを明確にすることができます。

ターゲティング(Targeting)

ターゲティングは、セグメンテーションによって識別された各セグメントの中から、最も魅力的で効果的なセグメントを選び出すプロセスです。
各セグメントを評価する際には、市場規模、成長性、収益性、競争状況などの基準を用います。
これにより、企業はマーケティングリソースを最も効率的に配分できるセグメントを特定することができます。

ポジショニング(Positioning)

ポジショニングは、選定したターゲット市場に対して、自社の製品やサービスをどのように認識してもらうかを決定するプロセスです。
ポジショニングでは、競合他社との差別化を図り、ターゲット顧客に対して独自の価値提案を行います。この価値提案が顧客にとって魅力的であることが重要です。

診療所の例で言えば、高齢者層に対して「高齢者に優しい診療所」としてポジショニングすることが考えられます。これには、バリアフリーの施設設計、専門医による診療、高齢者向けのリハビリテーションプログラムなどを強調します。このように明確なポジショニングを行うことで、診療所はターゲット顧客に対して強い印象を与え、競争優位性を確立することができます。

STP分析の活用方法

STP分析は、マーケティング戦略の基盤を形成する重要なフレームワークです。セグメンテーションで市場を理解し、ターゲティングで最適な顧客グループを選定し、ポジショニングでその顧客に対して独自の価値を提供する。この一連のプロセスを通じて、企業は市場において効果的かつ効率的にマーケティング活動を展開することができます。

ここでは、STP分析の各ステップを具体的にどのように実践するのか、その活用方法をお伝えします。

セグメンテーション(Segmentation)の実践

セグメンテーションは具体的には以下のようなステップで行われます。

①市場調査の実施

セグメンテーションを始める前に、徹底的な市場調査を行います。これには、データ収集、顧客インタビュー、アンケート調査などが含まれます。市場調査を通じて、顧客のニーズ、嗜好、行動パターンについて深く理解することが重要です。

②セグメンテーション基準の設定

市場を分割するための基準を設定します。例えば以下のような基準があります。
- 人口統計的基準: 年齢、性別、収入、職業、家族構成など。
- 地理的基準: 居住地域、都市、気候など。
- 心理的基準: ライフスタイル、価値観、性格など。
- 行動的基準: 購買行動、ブランドロイヤルティ、製品利用状況など。

③セグメントの識別と評価

設定した基準に基づいて市場を分割し、各セグメントの特性を明確にします。その後、各セグメントの規模、成長性、収益性を評価し、重要なセグメントを識別します。

ターゲティング(Targeting)の実践

ターゲティングの具体的なステップは以下の通りです。

①評価基準の決定

以下のような観点で、各セグメントを評価するための基準を決定します。
- 市場規模: セグメントの現在の規模と将来的な成長性。
- 収益性: セグメントから得られる可能性のある利益。
- 競争状況: 競合他社の存在とその強さ。
- アクセスの容易さ: そのセグメントに効果的にリーチできるかどうか。

②セグメントの評価と選定

各セグメントを設定した基準に基づいて評価し、最も魅力的なセグメントを選定します。これにより、企業はリソースを最も効果的に配分し、最大のリターンを得ることができます。

ポジショニング(Positioning)の実践

ポジショニングの実践ステップは以下の通りです。

①差別化ポイントの明確化:

自社の製品やサービスが競合他社とどのように異なるか、顧客にとってどのような価値を提供するかを明確にします。差別化ポイントを見つけるために、SWOT分析(強み、弱み、機会、脅威の分析)を行うこともあります。

②ポジショニングステートメントの作成

ターゲット市場に対して、自社の製品やサービスの価値を簡潔に伝えるポジショニングステートメントを作成します。一般的なポジショニングステートメントの構造は以下のとおりです。
- ターゲット顧客: 誰に対して
- ニーズ: 何を提供するか
- ブランド: 自社名など
- カテゴリー: 競合する製品カテゴリー
- 差別化ポイント: 競合と比較してどのように優れているか

③マーケティングミックスの調整

ポジショニングを実現するために、4P(サービス、価格、場所、プロモーション)の各要素を検討します。
- サービス: 顧客のニーズに最適化されたサービス開発。
- 価格: ターゲットセグメントに対して適切な価格設定。
- 場所: 顧客がアクセスしやすい流通チャネルの選定。
- プロモーション: 効果的な広告、販売促進、広報活動。

まとめ

いかがだったでしょうか。
セグメンテーションで市場を理解し、ターゲティングで最適な顧客グループを選定し、ポジショニングでその顧客に対して明確な価値を提供することで、企業は市場での競争優位性を確立し、効果的にリソースを活用することができます。

次の記事では、診療所経営におけるSTP分析の仕方を具体的に説明していきます。

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筆者情報

大野 修平 様

大野 修平 様

公認会計士・税理士 セブンセンス税理士法人 ディレクター

大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。トーマツ退所後は、資金調達支援、資本政策策定支援、補助金申請支援などで多数の支援を実施。医師向けメディアやセミナーにも多数登壇。

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