目次
クリニックの主な業務内容
クリニックの経営は単に診療行為をこなしていれば良いわけではなく、以下のような医業以外の業務も必要になります。
- スタッフの採用や教育
- 保健所など行政機関への対応
- 資金調達(銀行からの融資など)
- 売上、返済、給与支払いなど資金繰りの管理
- 医療機器やシステム購入、管理
- 集客(集患)に向けたプランニング
これらの業務が滞りなく進行しなければ、円滑なクリニック運営はできません。クリニックを運営する際には、医師であるとともに経営者としての責任も負うことになるのです。
クリニック経営でよくある失敗
クオリティーが高い医療を提供しているだけでは、クリニックの経営はうまくいきません。クリニック経営がうまくいかない原因を見てみましょう。
集客(集患)がうまくいかない
クリニックを円滑に運営していくためには資金繰りが良いことが前提となります。そのためには人件費や建物などのコストに見合った数の患者さんを集めることが必要です。
うまく患者さんを集められない場合は資金繰りが悪くなり、クリニック経営が失敗する可能性が高くなります。患者さんをうまく集めていくには、開業準備段階からのリサーチ、広告宣伝のほか、開業後には患者満足度を高める対策などが求められます。
リピート率が低い
一時的な集患ができても、再診率が低い場合は資金繰りが悪化するケースもあります。保険点数としては再診料よりも初診料の方が高くなっていますが、初診で集められる患者数には限界があります。一度受診した患者さんを長期間にわたってクリニックにとどめる対策が必要です。そのためには、患者満足度が高い診療や対応が求められます。
院長が業務を抱え過ぎている
開業当初は運営コストを抑えようとスタッフの人員をできるだけ減らし、院長自らが医療以外の多くの業務を担っているケースがあります。しかし、処理能力以上の業務負担があると医業がおろそかになり、患者さんの待ち時間が長くなるなどリピート率の低下につながるケースも少なくありません。院長の業務は医業に差し支えない範囲にとどめるのがポイントです。
スタッフの定着率が低い
スタッフの定着率が低いクリニックも経営に失敗するリスクが高いでしょう。受付や看護師などは円滑な医業を成し遂げるのに必須のスタッフです。スタッフがすぐに離職するクリニックは慢性的な人手不足に陥りやすく、患者さんの待ち時間が長くなるといった問題を生みます。また、新たなスタッフへの教育にも時間的なコストがかかるため、経営面では非効率と言わざるを得ません。
クリニック経営で重要な経営理念とは?
クリニックの円滑な経営には「経営理念」をしっかり定めることが重要です。経営理念とは、クリニックを運営するにあたって院長が抱く使命、信念、目的などのことを指します。つまり、一つのクリニックが目指す方向性のことです。
医業の方針や患者さんへの思い、地域貢献への使命感など各クリニックにはさまざまな方向性の違いがあります。クリニックを経営する際には、第一にこの方向性をしっかり示すことが大切です。
クリニックに経営理念が必要な理由
クリニックの経営理念は院長が目指すクリニックの方向性を明確に言語化したものであり、スタッフへの指針にもなります。方向性が明確に定まっていないとスタッフはどのように患者さんに接し、医業の補助をしていけば良いかわかりません。
スタッフの統制が取れず、患者さんに適切な医療を提供できなくなる可能性があります。その結果、患者さんの満足度や安心感を得られることができずにリピート率の低下につながるケースは少なくないのです。
また、経営理念を明確に示すことで理念に賛同する患者さんの集患につながる場合もあります。クリニックの経営理念はスタッフ間で共有するだけではなく、待合室や診察室などに掲示したり、ホームページなどに掲載したりすると良いでしょう。
クリニックの経営を成功に導くためのポイント
クリニックを円滑に運営していくには経営理念を明確化する以外にもいくつかのポイントがあります。どのような点に注意していけば良いのか詳しく見てみましょう。
患者さんの満足度や安心感を高める
上述したようにクリニックの円滑な運営には十分な資金繰りが必要です。そのためには、集患に成功し、なおかつリピート率を高める努力が求められます。
診療行為だけではなく、受付の対応、院内の清潔さ、待ち時間の少なさなど患者さんの満足度や安心感を高めることがリピート率上昇につながります。また、良い口コミが広がると自然な集患にもつながるでしょう。クリニックを運営する際には、患者ファーストを徹底することが大切です。
院内の業務を効率化する
限られたスペース、人員、資金の中でうまく経営をしていくには、業務の効率化が必須です。従来のクリニックは紙カルテや紙での処方箋発行などが一般的でしたが、現在では医療DXの推進も相まって多くのITツールが活用できます。ITツールの導入は初期費用が高い傾向にありますが、長い目で見ると業務を効率化できるため経営コストの削減を可能にします。
業務を効率化できるツールは積極的に取り入れると患者さんの待ち時間短縮にもつながり、満足度の上昇からリピート率アップが目指せるでしょう。
スタッフの教育
クリニックをうまく経営していくには、スタッフの教育が欠かせません。医療水準を上げるだけでなく、患者満足度や安心感向上のためにはスタッフの対応を良くすることが求められます。
経験者、未経験者問わずスタッフを採用した際には、経営理念に沿った教育を行いましょう。また、看護師などの専門職はスキルアップのための研修参加などを支援するのもおすすめです。
スタッフの離職率を下げる
上述したようにスタッフの定着率が悪いクリニックは経営がうまくいかなくなる可能性が高くなります。採用コストや教育コストを軽減するためにも、スタッフが定着しやすいクリニックを目指すことが大切です。
そのためには、有給休暇の取りやすさ、残業の少なさ、といった労働環境を整える必要があります。また、スタッフをクリニックの一員として尊重することも大切です。時には一人ひとりと話し合う「1on1」などの機会を設けるのも良いでしょう。
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クリニックスタッフの離職率を下げるためにできること
経費を削減する
クリニックの経営には医療機器の導入、スタッフの人件費、家賃、光熱費、物品購入費など多くのコストがかかります。また、開業段階では広告費などにも多くのコストが必要です。
うまく経営を軌道に乗せるには、できるだけ不要な経費は削減することが大切です。具体的には、集患対策の費用と効果の検討、人員配置の見直しなどが挙げられます。とはいえ極端な経費の削減は医療の質を落としたり、患者満足度の低下につながったりする場合もあるため、ほどよいバランスを見極めるようにしましょう。
地域連携を充実させる
多くのクリニックは集学的治療が必要となる重症患者を受け入れる体制は整っていません。また、専門的な検査設備がないクリニックも少なくないでしょう。しかし、クリニックを経営していくと、自院では治療や検査ができない重症患者が受診する場合もあります。そのようなときに周囲の医療機関とうまく連携を取っておくと、スムーズに紹介ができます。
クリニックが地域の中で担う役割を明確にし、周囲の医療機関や介護施設などと連携を充実させていくことも大切です。
有益な情報を発信する
インターネットやSNSが広く普及している現在、それらから得られる情報を参考に受診する医療機関を決める患者さんは少なくありません。ホームページやSNSなどでの情報発信も集患対策には非常に重要です。
集患に成功してクリニックをうまく経営していくには、ホームページやSNSなどで定期的に有益な情報を発信するのがおすすめです。また、ITに疎い世代に対しては地元紙や地元のニュース番組などで情報を発信する手段もあります。地域、年齢層など患者さんの属性に合わせた情報発信をしていきましょう。
コンサルタントに相談する
医師は医業のプロであっても、多くは経営者として勤務したことはないでしょう。経営者としては新米であり、慣れない業務に悩まされることも多くなるはずです。経営に悩んだときは、専門の医療コンサルタントに相談するのも一つの方法です。コンサルタントは開業準備段階から開業場所の選定、スタッフの採用、資金調達など、適切なアドバイスを行い、開業後は改善点などを示してくれます。
コンサルタントの利用に抵抗がある医師も初回は無料で相談できる場合があるため、一度相談してみるのも良いでしょう。
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経営理念を明確化し、業務を円滑に
クリニックの運営には患者ファーストの医療を提供するだけでなく、資金繰り、広告宣伝、集患戦略、スタッフの採用や教育など多くの業務が求められます。クリニックの経営を成功させるのは、どの業務も円滑にこなしていくことが必要です。
クリニックの開業を計画するときは、第一に経営理念を明確化しましょう。その上で立地、導入機材、スタッフの採用などを行い、クリニック全体で経営理念を目指していくことが大切です。