目次
統計で見る外科医の年収
「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、外科医の平均年収は約1,374万円です。他の診療科に比べると、3番目に高い水準となっています。また、外科医の50%以上は1,500万円を超えています。
【診療科別】医師の平均年収
診療科 | 平均年収 |
---|---|
脳神経外科 | 1,480万円 |
産科・婦人科 | 1,466万円 |
外科 | 1,374万円 |
麻酔科 | 1,335万円 |
整形外科 | 1,289万円 |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 1,267万円 |
内科 | 1,247万円 |
精神科 | 1,230万円 |
小児科 | 1,220万円 |
救急科 | 1,215万円 |
その他 | 1,171万円 |
放射線科 | 1,103万円 |
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 1,078万円 |
【年収階層別】外科医の平均年収分布
年収 | 割合 |
---|---|
2,000万円〜 | 12.1% |
1,500〜2,000万円未満 | 39.1% |
1,000〜1,500万円未満 | 27.9% |
700〜1,000万円未満 | 11.8% |
500〜700万円未満 | 4.7% |
300〜500万円未満 | 2.4% |
300万円未満 | 2.1% |
出典:勤務医の就労実態と意識に関する調査(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)(PDF)
(https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf)
外科医における症例は緊急性の高いものが多く、患者さんの命に直結する治療を行う場面が多いのが特徴です。
また、高度な技術・豊富な知見を得るために、自己研鑽を要します。他の診療科に比べると、負担が大きいとされている点で外科を志望する医師が減少していると聞きます。
その結果、外科医不足が起こるため、高額の報酬を提示して外科医を募集している医療機関が多いといえるでしょう。
外科医は、他の診療科と比較すると労働時間が長い傾向にあります。「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、勤務医の主な勤務先における1週間当たりの労働時間は平均52.5時間です(休憩時間を除く)。
これは、全診療科の平均労働時間である46.6時間を大きく超えています。さらに、1週間当たりの労働時間が60時間以上と答えた医師の割合の平均は27.4%であったのに対し、外科医は43.1%でした。
外科医は、オンコール対応が多い診療科であるため、労働時間が比較的長くなる傾向にあります。
同調査では、オンコールのある勤務をしていると回答した外科医の割合が96.5%であり、平均88.2%を上回る結果が出ています。
これらの結果の背景には、少子高齢化による高齢の患者さんの周術期リスクの向上や長期入院を要する患者さんが多いことなどが関係していると考えられています。
また、外科の宿直1回当たりの平均睡眠時間に関し、4時間未満と回答した割合は51.9%でした。これは、救急科・呼吸器科・消化器科・循環器科・小児科に次いで多くなっています。
オンコールの状況と月当たりのオンコール出勤回数の調査では、4回以上の出勤回数があると回答した割合は脳神経外科・産科・婦人科・呼吸器科・消化器科・循環器科に次いで高くなっています。
疲労感・睡眠不足感・健康不安を感じている割合を調査したものによると「健康が不安」と回答した割合は、救急科・小児科に次いで多くなっています。
「睡眠不足を感じる」と回答した割合は、救急科・小児科・産科・婦人科に次いで多いです。「疲労感を感じる」と回答した割合は、救急科に次いで多い結果となっています。
上記を踏まえると外科の業務は比較的ハードワークといえるでしょう。体力的・技術的に外科の業務に対応できる人材を確保するために、医療機関側は高い報酬形態を設定する傾向があると推察されます。
気になる他の診療科の平均年収についてはこちらをご覧ください。
・内科医の平均年収はどれくらい?年収事例も紹介
・勤務医の年収はどれくらい?年齢や勤務先ごとの平均年収を解説
・開業でこれから儲かる診療科目を予想。第一は精神科、第二は
外科医の仕事
外科医が関係する分野や仕事は多岐にわたります。これから外科医を目指す予定の方は参考にしてみてください。
外科医の主な分野
外科医の領域は、主に専門外科と一般外科の2種類に分かれます。専門外科は対応する部位や疾患によって、主に以下の通り分類されています。
- 脳神経外科
- 消化器外科
- 整形外科
- 形成外科
- 乳腺外科
- 小児外科
- 呼吸器外科
- 気管食道外科
- 心臓血管外科
- 肛門外科
- 美容外科
出典:「医師・歯科医師・薬剤師統計:集計結果」(厚生労働省)
(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/33-20b.html#link01)
一般外科の領域では明確な定義がない一方で「消化器・一般外科」と標榜する医療機関が多いでしょう。
主に消化器・甲状腺・乳腺・胸壁を中心に、外傷や救急に対応できる領域を一般外科と呼ぶ傾向があります。
外科医の主な仕事内容
外科医の主な仕事内容は、以下の4つです。
外来対応
一般外来では、その場で対応可能なけがの場合、処置を行うケースがあります。診察の際は、患者さんやその家族などから症状をヒアリングし、適切な検査を受けてもらうよう指示をします。
検査に関しては、血液検査・X線・CT・MRIなどを患者さんに受けてもらう場合があるでしょう。検査結果や患者さんの症状などを判断し、傷病名を診断します。
入院患者さんに対しては、作業療法士や理学療法士などのセラピストへ必要なリハビリの指示を出すこともあります。
手術実施の判断
患者さんの病状を把握した後は、その後の治療方法を検討し、手術実施の可否について判断します。
手術が必要と判断した場合は手術計画を立て、患者さんやその家族に対して合併症・薬の副作用・術後の流れなどを説明し、同意を得なければなりません。
また、手術や治療を実施するために院内カンファレンスに参加し、患者さんに関する情報を他のスタッフへ共有し、治療方針を確認します。
処置・手術
外科医が手術を実施する場合は、患者さんの身体を切開して異物や病変部を取り除いたり、外傷のある箇所を修復したりします。
また、内視鏡検査装置を使用して患部を切除したり、がんなどの悪性腫瘍を治療するための抗がん剤治療をしたりする場合もあるでしょう。
緊急性のある手術の場合は、複数の看護師や医師と協力し、長時間かけて手術を実施するケースもあります。
手術を実施しない場合は、患部の洗浄・切開・縫合などの簡易的な処置を行うこともあります。
周術期の管理
外科医は、患者さんの手術が確定してから外来・入院・麻酔・手術・回復・退院・社会復帰まで周術期をサポートします。
患者さんがスムーズに治療・手術を受けられるよう、医師・薬剤師・看護師・臨床工学技士・理学療法士・管理栄養士などの多職種と連携しなければなりません。
手術後の回復期では患者さんの経過状況を確認しながら、必要に応じて本人とその家族に情報共有し、治療を進めていきます。
外科医のキャリアプラン
外科医のキャリアプランは主に3つあります。
1つ目は外科医として専門性を追求する選択肢です。
一般外科や消化器外科、整形外科や脳神経外科など、1つの外科領域に属し、多くの症例経験を積みながら患者さんに貢献していく道が挙げられます。
2つ目は、外科+αで診療の幅を広げることです。例えば、専門領域を設けず、一般外科で幅広い外科疾患に触れ、さまざまな患者さんの治療ニーズに応える選択肢もあるでしょう。
3つ目は、在宅医療に特化することです。外科医として必要な対応力は、訪問診療においても発揮できます。訪問先における褥瘡や胃ろうトラブルへの対応は、外科医が得意とする領域です。
外科医としてのキャリアに悩んだ際は、身近な上司や先輩に相談してみることをおすすめします。特にさまざまな診療科を経験してきた医師や、同じ外科領域の医師などから得られる情報は貴重です。
なるべく多くの医師からアドバイスをもらい、自身が考える医師としての働き方にマッチした方法を選択することをおすすめします。
どうしても周りに相談できる人がいない場合は、転職エージェントに相談するのもおすすめです。
転職エージェントは、キャリアプランの立て方に悩む医師の転職に携わっており、さまざまなロールモデルを知っています。
外科医としての価値観や将来像を共有し、アドバイスを求めると良いでしょう。場合によっては自分で気付けなかった可能性やスキルを発見するきっかけになるかもしれません。
外科医としての市場価値がどの程度なのかを見極めるためにも、専門家に相談することをおすすめします。
外科医の年収事例
ここからは、筆者の周りの外科医の先生方からの経験にもとづき、年収推移の事例を3つ、ご紹介します。ご参考までにご覧ください。年収は、主たる勤務先のみのものを想定しています。
年収例①常勤・週4日勤務・関東・50代
年収の推移
研修医時代は800万円程度の年収であり、専攻医(or 後期研修医)になってから徐々に上がって1,000万円程度になりました。
その後、40代になってから外科部長になり、50代に至るまでさまざまな学会対応などを経験する中で、年収が1,400〜1,600万円程度に推移していきました。
年収の満足度
研修医時代から、外科とは異なる診療科に所属する周りの研修医と比べても、比較的高い年収の位置にいたと思います。
所属していた病院の研修制度では比較的多くの症例を経験していたため、ハードワークでした。
現在に至るまで忙しい日々を送っていますが、やはり他の診療科に比べて高い年収の位置にあるため、満足しています。
今後の展望
今後は、急性期病院で専門外科の一員として診療に当たり、後輩医師の手術や治療の指導をしていきたいと考えています。
また、専門医の資格を活かして役職手当を得たり、協力依頼をいただいている系列クリニックへアルバイトとして勤務したりしながら収入アップを図りたいです。
年収例②常勤・週4日勤務・東北・50代
年収の推移
研修医時代から1,000万円を超える年収だったと思います。専攻医になってからキャリアを積んでいく中で徐々に水準が上がっていき、1,200万円程度まで上昇しました。
その後、40代になり、当時の勤務先だった大学病院から民間病院へ転職し、外科チームの部長のポジションを拝命。
大学病院よりも民間病院の方が給料は良かったこともあり、年収は徐々に上がっていき、50代を迎えるころには1,800万円程度の収入になりました。
年収の満足度
平均年収に関しては、他の診療科に比べて高い位置にあると思います。一方で、これまでのキャリアを考えると、外科医として術後の対応を頻回にすることが多く、休日や夜間帯に出勤することがありました。
他の診療科に属する友人と比べても、労働時間は長い方だったと思います。この苦労を振り返ると、もう少し年収が欲しいなと感じています。
今後の展望
若い世代の育成やマネジメントを担い、教育に力を入れていきたいと考えています。空いた時間は自己研鑽をして、外科領域の知見を深めていきたいです。
また、余裕があればアルバイトをして地域の病院に貢献していきたいと思っています。もちろん、収入の面でも現在の水準よりも高い位置に上げていきたいと考えています。
年収例③常勤・週5日勤務・九州・60代
年収の推移
研修医時代は専門性を高めるべく日々自己研鑽に励んでいました。当時は600万円程度しかありませんでしたが、専攻医になりキャリアを積んでいく過程で徐々に年収が上がり、800万円程度まで上昇。
30代・40代とキャリアを積んでいく中で、勤務する副院長の下の世代として外科のチームリーダーになり、多くの症例を経験しながら後輩医師の教育に力を入れてきました。
その過程で系列の病院やクリニックで研修をしたり、学会発表などを行ったりするようになり、年収が1,400〜1,600万円に上がりました。
60代になり病院の副院長を拝命し、年収が2,000万円程度になっています。
年収の満足度
研修医時代から現在に至るまで、休日出勤や夜間帯の勤務が多く、ハードワークな日々を過ごしてきました。
一方で、その分多くの症例を経験し、外科領域の知見を深めることができたと感じています。
年収に関しては、他の診療科と比べても高い位置にあるため、申し分ないと考えています。
今後の展望
若い世代を育てることを目標に、患者さんに寄り添い、多職種のスタッフと円滑にコミュニケーションが取れる医師を育てたいと考えています。
また、引き続き学会で自身の研究領域を深めつつ、幅広い世代の患者さんに外科領域の知識を共有したいと感じています。その一つの手段として、書籍の出版も検討中です。
外科医不足も影響し、平均年収は高水準
外科医の平均年収は約1,374万円であり、他の診療科に比べると高い水準です。外科医はオンコール対応が多く、労働時間が他の診療科に比べて長い傾向があります。
また、外科医不足にともない、各医療機関が高い報酬で医師を確保しようとする動きがあるため、年収が高水準になっていると考えられます。
外科医の年収事例としては、着実に外科領域の知見を深め、チームリーダーや外科部長などのポジションに就き、収入を上げている例が挙げられます。
これから外科医としてのキャリアを歩もうとしている方は、ぜひ参考にしてみてください。