目次
医療DX推進体制整備加算とは
医療DX推進体制整備加算とは、医療機関が医療DXを推進するための体制を整備した場合の評価として算定できる加算となります。
目的は、医療機関における情報通信技術(ICT)の活用を促進し、医療の質向上や業務効率化を図ることです。
具体的には、医療機関がオンライン資格確認システムを導入し、患者さんがマイナンバーカードを保険証として利用できるようにしたり、診療情報を患者さん自身や医療機関同士やオンラインで閲覧・共有できるようにしたりするなどの取り組みが評価対象です。
算定要件と点数
医療DX推進体制整備加算の算定要件と点数は、それぞれ以下のとおりです。
【算定要件・点数】(医科医療機関)
“医療DX推進に係る体制として別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関を受診した患者に対して初診を行った場合は、医療DX推進体制整備加算として、月1回に限り8点を所定点数に加算する。”
点数については2024年10月の見直しに伴い、マイナ保険証の利用率に応じて変更されます。(詳細は後述)
施設基準
医療DX推進体制整備加算を算定するためには、以下の8つの施設基準を満たす必要があります。
【施設基準】(医科医療機関)
(1)オンライン請求を行っていること
(2)オンライン資格確認を行う体制を有していること
(3)医師が、電子資格確認を利用して取得した診療情報を、診療を行う診察室、手術室又は処置室等において、閲覧又は活用できる体制を有していること
(4)電子処方箋を発行する体制を有していること。
(5)電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有していること
(6)マイナンバーカードの健康保険証利用について、実績を一定程度有していること
(7)医療DX推進の体制に関する事項及び質の高い診療を実施するための十分な情報を取得し、及び活用して診療を行うことについて、当該保険医療機関の見やすい場所に提示していること
(8)(7)の提示事項について、原則として、ウェブサイトに掲載していること。
なお、医療機関がスムーズに医療DXを推進できるよう、一定期間の猶予として以下の経過措置が設けられています。
【経過措置】
● 令和7年3月31日までの間に限り、電子処方箋を発行する体制を有しているものとみなす。
● 令和7年9月30日までの間に限り、電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有しているものとみなす。
● マイナンバーカードの健康保険証利用における一定程度の実績の基準については、令和6年10月1日から適用する。
● 令和7年5月31日までの間に限り、オンライン資格確認により取得した情報を活用している旨をウェブサイトに掲載しているものとみなす。
出典:「医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて」(厚生労働省)
(https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/001277499.pdf)
2024年10月より、マイナ保険証の利用率に応じた見直しが実施される
2024年10月からは、医療DX推進体制整備加算の施設基準に、マイナ保険証の利用率が加わります。
医療機関におけるマイナ保険証の利用促進を目的として、その利用率に応じて点数が見直されることになりました。具体的には、支払基金から毎月通知される利用率をもとに、3段階に点数が分かれるものです。
施設基準へ下表の太字部分のように、マイナ保険証やマイナポータルの利用に関する内容が追加されました。
点数 | 施設基準 |
医療DX推進体制整備加算1:11点 | ● マイナンバーカードの健康保険証利用について、十分な実績を有していること ● マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じること |
医療DX推進体制整備加算2:10点 | ● マイナンバーカードの健康保険証利用について、必要な実績を有していること ● マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じること |
医療DX推進体制整備加算3:8点 | マイナンバーカードの健康保険証利用について、実績を有していること |
マイナ保険証の利用率が高いほど、点数も高く設定されています。背景にあるのは、マイナンバーカード自体の普及が遅れていることや、2024年12月2日に健康保険証の新規発行が終了することが挙げられます。
出典:「医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて」(厚生労働省)
(https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/001277499.pdf)
必要になるマイナ保険証の利用率
2024年10月以降、マイナ保険証の利用率は下表のように順次基準が引き上げられていくことが予定されています。
適用時期 | 2024年10月〜12月 | 2025年1月〜3月 |
加算1 | 15% | 30% |
加算2 | 10% | 20% |
加算3 | 5% | 10% |
なお、2025年4月以降の利用率は、今後の動向に応じて2024年末に設定される予定です。
今後もマイナ保険証の利用率が医療機関に関わることを踏まえ、利用率が何の数字をもとに算出されているのか、改めて確認しておきましょう。
具体的には、以下2つの式で利用率が算出され、支払基金から通知されています。
(1) レセプト件数ベース利用率(2ヶ月後に把握が可能)
=マイナ保険証の利用者数の合計÷レセプト枚数
(2) オンライン資格確認件数ベース利用率(1ヶ月後に把握が可能)
=マイナ保険証の利用件数÷オンライン資格確認等システムの利用件数
原則(1)の計算式を用いて、実績とします。ただし、2025年1月適用分までは、経過措置として、(1)と(2)のうち、高いほうの利用率を実績として用いることが可能です。
医療DX推進体制整備加算の届出
医療DX推進体制整備加算を算定するためには、「(様式1の6)医療DX推進体制整備加算の施設基準に係る届出書添付書類」の記載・提出が必要です。
書類には10箇所の記載項目があるため、自院が適合する項目をチェックしましょう。なお、施設基準や診療報酬請求に関する知識に長けているスタッフに進めてもらうとスムーズです。
届出に関する詳細内容は厚生労働省のサイトにまとめられているため、以下の厚生労働省のサイトをご参照ください。
参照:「医療DX推進体制整備加算の算定要件について」(厚生労働省)
(https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/001257261.pdf)
いつまでに何を準備すればいい?算定のための体制整備のポイント
医療DX推進体制整備加算を算定するためには、施設基準に基づいた体制の整備が必要です。具体的な内容を下記の表にまとめました。
施設基準 | ポイント | 対応期限の目安 |
(1)オンライン請求を実施しており、体制を整備していること | 対応した医事コンピューターの導入 | 届出まで |
(2)オンライン資格確認ができる環境を有していること | オンライン資格確認端末の導入、システム設定 | 届出まで |
(3)オンライン資格確認で取得した情報を診療に活用できる環境を整備していること | ネットワーク環境の整備 電子カルテとの連携 |
届出まで |
(4)電子処方箋を発行できるシステムを導入していること | 電子処方箋発行システムの導入 院外調剤薬局との連携 |
経過措置:2025年3月31日まで 本格運用:2025年4月1日から |
(5)電子カルテ情報共有サービスへの加入 | 電子カルテ情報共有システムへの加入 地域医療連携ネットワークへの参加 |
経過措置:2025年9月30日まで 本格運用:2025年10月1日から |
(7)掲示物の設置 | ポスター掲示やリーフレット設置 | 届出まで |
(8)ウェブサイトへの掲載 | 院内掲示の内容をホームページへ掲載 | 届出まで |
*(6)は、マイナ保険証の利用実績のため、割愛。
電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスについては、経過措置が設けられているため、期限までに対応を進めれば要件を満たせます。そのほかの項目については、届出時点で対応が完了していることが条件です。中でも、自院で積極的に動く必要があるのが、(7)掲示物の設置と(8)ウェブサイトへの掲載です。抜け漏れのない対応が求められるため、以下より詳しくみていきましょう。
掲示物の設置
掲示物については、厚生労働省が要件を満たしたポスターやリーフレット、チラシなどの周知素材を公開しています。デザインや文言を考える負担が軽減できるため、積極的に利用しましょう。
素材が準備できたら、受付や会計窓口など、患者さんの目につきやすい場所に掲示します。掲示する際には、患者さんからの問い合わせに対して応えられるよう、スタッフが内容について理解しておく必要があります。不正確・不誠実な対応は、クレームにつながる恐れがあるため、掲示前に認識を揃えておきましょう。
参考:「オンライン資格確認に関する周知素材について」(厚生労働省)
(https://www.mhlw.go.jp/stf/index_16745.html)
ウェブサイトへの掲載
前提として情報を掲載できるウェブサイトが必要です。無料で作成する方法もあるため、まだウェブサイトを開設していない場合は、環境を整えましょう。
そのうえで、施設基準に準じた情報を掲載します。掲載内容について具体的な指定はないため、自院の負担が少ない方法が推奨されます。
考えられる方法は、以下のとおりです。
● 院内掲示を流用する
● オンライン資格確認の情報活用やマイナ保険証の利用促進などに取り組んでいることを簡潔に掲載する
医療DX推進体制整備加算と関連する「医療情報取得加算」とは?
医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算はどちらも医療DX推進に関わる診療報酬上の加算ですが、その目的や評価対象が異なります。
医療DX推進体制整備加算は、医療機関が医療DXを推進するための体制を整備した場合に算定できる加算です。が、一方の医療情報取得加算は、オンライン資格確認等を通じて、診療情報・薬剤情報などを取得することを評価する加算です。
つまり、医療DX推進体制整備加算は医療DXを推進するための体制そのものを評価するのに対し、医療情報取得加算は医療DX推進体制によって実際に情報取得が行われたことを評価する点が異なります。
自院での準備事項が重なるため、積極的に算定しましょう。
医療DX推進体制整備加算の準備で時代に乗り遅れない運営を実現しよう
医療DX推進体制整備加算は、今後ますます加速するオンラインの流れに対応するための基盤となる点数です。オンラインを通じたネットワークは、国や自治体との連携を図るうえで欠かせない存在となります。
今後は医療DXへの対応が基本の流れになる可能性も考えられます。本加算の施設基準の内容から、体制を整備していきましょう。
医院の体制整備には、以下の製品・サービスが有効です。ぜひこの機会にご検討ください。
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