わかりやすい薬歴の書き方にはコツがある
服薬指導の内容を記録するものとして作成が義務づけられている薬歴。日々取り組む必要のある業務だけに、記入作業はできる限り効率化しつつ、品質向上も実現したいところです。今回は薬歴に記入する内容とともに、スピーディに作成するヒントもご紹介します。
薬歴は第三者が見てもわかるように記載する
薬歴は正式には「薬剤服用歴」と呼ばれ、適切な服薬指導に欠かせない情報を蓄積した資料です。調剤報酬請求の根拠となる記録でもあり、患者さんの基礎情報、調剤内容、患者さんの体質や疾患に関する情報、服薬指導の要点、今後の継続的な薬学的管理および指導の留意点などを記載することが定められています。薬歴は自分以外の薬剤師が見ることも踏まえて、誰にとっても分かりやすく記入することが必要です。薬局ごとに薬歴の書き方を定めている場合もありますが、特にルールがない場合も「SOAP」に沿った記入が主流となっています。SOAP(ソープ)とは「Subjective data/Objective data/Assessment/Plan」の頭文字で、薬歴に記入すべき4つのポイントを示しています。
薬歴を書くときの注意点
薬歴は、後から参照するときに必要な情報を端的に把握できることが重要です。効率的に短時間で作成するためにも、要点は押さえつつもなるべく簡潔に、箇条書きで作成していきます。たとえば、「処方された薬を飲んだ後、なかなか寝付けないのでアルコールを飲むことが多いのだが、少しふらつくことがある」という患者さんの場合の薬歴の記入例を見てみましょう。主観的情報(S)には、「寝る前にアルコールを飲んでいるが、ふらつくことがある。」など、患者さんの話の要点を記入します。客観的情報(O)は「処方内容は前回と同じ。」といった内容、あるいは血圧など、判断や計画の根拠となるデータを記入します。評価・判断(A)には、患者さんの情報から何が問題かを導き出します。ここでは、「アルコールの併用により副作用増強の可能性。」などのように記入しましょう。最後に、計画(P)には「副作用増強のおそれがあるため、アルコールは中止するよう指導。」のように、ここまでで明らかになった問題に対する解決策を記入します。薬歴には基本的にはお薬に関わることなどを中心に記載していきますが、たとえば「ペットを飼い始めた」「ジョギングをするようになった」という雑談のなかにも、副作用やアレルギーに関連する情報が含まれており、今後役立つ場合もあります。こうした内容もできるだけ薬歴に書き残しておきたいところです。
薬歴を速く書くコツ
薬歴をうまく書けないときには、患者さんからしっかり情報収集ができていないことが原因かもしれません。ヒアリングの仕方を工夫することで、効率的に薬歴が書けるようになる場合があります。「何か気になることはありますか?」といった問いで患者さんの答えが漠然としてしまう場合は、「前回処方したお薬を飲んだあとに、吐き気などの症状はありませんでしたか?」など、「はい/いいえ」で答えられる質問で尋ねてみるのも良いでしょう。小さな工夫ではありますが、電子薬歴を利用している場合には、よく使う単語などを登録しておくことも時間の節約につながります。その分、患者さんへの対応などに時間をあてることで、業務全体の品質を向上させましょう。
日常的な業務であるだけに、効率化や品質向上の効果が大きいのが薬歴作成です。今回のポイントを取り入れつつ、分かりやすい薬歴で業務品質全体の底上げを図りましょう。
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