目次
服薬情報提供書(トレーシングレポート)とは
服薬情報提供書とは、患者さんの情報を医師に共有するために書く文書のことです。トレーシングレポートとも呼ばれています。前提として、服薬情報提供書は「緊急性は低いものの医師に伝える必要がある内容」を書くものです。緊急性が高いものに関しては、服薬情報提供書ではなく疑義照会で医師に伝えます。
「疑義照会と服薬情報提供書は何が違うのか」という声がよく上がりますが、一番の違いは緊急性です。その場ですぐに解決するべき問題は疑義照会、次回の受診時に活かしたい内容は服薬情報提供書と使い分けることが一般的でしょう。
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服薬情報提供書(トレーシングレポート)の目的
服薬情報提供書の目的は、患者さんから聞き取った情報を医師に伝達し、次回の処方に活かすことでより安全で適切な治療を行うことです。「どのような副作用が起きたのか」「どうしたらもっとよい治療が行えるのか」などについて薬剤師がまとめて、服薬情報提供書として医師に提出します。
例えば、患者さんから「薬の量が多くて管理が難しい」「薬を飲み出してから昼間に眠くなることが増えた」と報告があれば、状況を簡潔にまとめて改善案を記載し、医師に提出します。
疑義照会とは異なり、提出してすぐに医師から返事をもらうものではありません。場合によっては返事が来なかったり、記載した内容を反映してもらえなかったりすることもあります。
すぐに返事が欲しいもの、確実に医師に伝えたいものは疑義照会、緊急性がなく医師から返事がなくても困らないものは服薬情報提供書を利用するなど、うまく使い分けるようにしましょう。
服薬情報提供書(トレーシングレポート)で伝えるべき内容
「服薬情報提供書で医師に何を伝えたらよいの?」と迷っている方もいるでしょう。服薬情報提供書に記載された内容は、後々の患者さんの治療方針を左右することがあります。ここでは、どのような内容を伝えるべきなのか、一例を見ていきましょう。
処方薬の情報(OTC医薬品やサプリメントを含む併用薬剤の情報)
医師はほとんどの場合、自分で処方した薬しか患者さんの処方状況を把握していません。しかし、患者さんはさまざまな医療機関から薬を処方してもらっていることがあります。処方薬の他に、OTC医薬品やサプリメントなどを使用していることもあるでしょう。
他に使用しているものがあるとわかった場合は、必要に応じて医師に情報提供を行います。併用しているOTC医薬品やサプリメントによっては、医師が治療方針を変更することがあります。
患者さんの服薬状況
服薬状況を医師と共有するのは、とても大切なことです。医師には「しっかり薬を飲んでいます」と伝えていても、実際はあまり飲めていないことはよくあります。服薬コンプライアンスが低下していることに医師が気づかず、用量を増やしてしまうことも珍しくありません。
効果が十分に出なかったり、用量の変更により副作用が出やすくなったりすることがあるため、服薬状況は小まめに患者さんからヒアリングして共有しましょう。そのためにも、患者さんとの信頼関係を築き、「薬を飲めているのか」「残薬がないか」などを教えてもらえる環境をつくることが大切です。
患者さんのライフスタイルなど
用法を変更することで、患者さんのアドヒアランスや服薬コンプライアンスが向上することがあります。仕事や学校がありお昼に薬を飲むのが難しい場合は、朝と夜の2回で済む薬に変更するなど、用法の変更を提案してみましょう。夕食と就寝の時間が近い場合は、夕食後と就寝前の薬をまとめられないか提案するのもおすすめです。
用法の変更を提案する場合は、単に「1日2回の薬に変更してください」と書くのではなく、「◯◯という薬なら現在使っている薬と同等の効果が期待できるため、こちらへの変更をご検討ください」のように、薬学的根拠を添えて代替案を提案することを心掛けてください。
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薬剤に関する提案
剤形の変更や一包化の必要性があると感じた場合も、医師への情報共有が必要です。錠剤が飲みにくい方には散剤やOD錠を提案してみるとよいでしょう。薬の種類が多かったり、PTPシートの扱いが難しかったりする方には、一包化の提案も行います。
服薬するときの負担を減らすことで、アドヒアランスや服薬コンプライアンスの向上だけでなく、患者さんのQOLを上げることにもつながるでしょう。一包化をすれば認知機能が低下している方でも自分で服薬管理ができるようになることもあるため、患者さんだけでなくご家族のQOL向上にも役立ちます。
この他、副作用が出ていると考えられる場合も医師に報告しましょう。「医師に報告するほどのことでもない」と思われるようなことがきっかけで処方変更になることもありますので、小さな変化も見逃さないように患者さんをしっかり観察することが大切です。
服薬情報提供書(トレーシングレポート)の書き方のポイント
服薬情報提供書は薬剤師が思ったことや感じたことをただ書けばよいものではありません。忙しい医師でも内容を簡潔に理解しやすいよう、要点をまとめて書くようにします。
簡潔にわかりやすい文章で書く
だらだらと長文を書くのはおすすめできません。伝えたいことをできるだけ文章の頭に持っていき、箇条書きなどもうまく使いながらぱっと見ただけで要件がわかるように記載します。
あまりにわかりづらく、しっかり読み込まないと内容が理解できない服薬情報提供書は、医師を不快にさせてしまうこともあるので注意しましょう。
事実や根拠に基づいて書く
服薬情報提供書は、事実や根拠に基づいて書くことが重要です。薬剤師の主観だけで文章を書いても、「この情報は本当に正しいのか」「本当にこの処方に変更して大丈夫なのか」と医師が不安になってしまいます。場合によっては確認のために医師から薬剤師へ連絡するケースもあるでしょう。
情報の信頼性を担保しなければ、せっかくの服薬情報提供書も意味をなしません。医師の負担を増やすことにもつながりかねないため、必ず事実や根拠に基づいた情報を書くようにしてください。
厚生労働省公表のひな形
服薬情報提供書にはいくつか形式がありますので、使いやすいものを選んで問題ありません。どれを使うか迷っている方は、厚生労働省が公表しているひな形を使用するとよいでしょう。
「処方薬剤の服薬状況」や「併用薬剤」、「症状等に関する家族、介護者等からの情報」などいくつか項目が分かれているので、形式に沿って記入をしていきます。
▽参考記事
厚生労働省『服薬情報等提供料に係る情報提供書』(PDF)
適切な情報提供で患者さんのQOL向上を
服薬情報提供書とは、トレーシングレポートとも呼ばれているもので、医師に対して情報提供を行うときに記入する文書のことです。疑義照会とは違って、緊急性がない場合に用いられます。患者さんが他に服用している薬やサプリメントがあるか、きちんと薬を服用できているか、ライフスタイルに合った用法用量になっているかなどを薬剤師がチェックし、必要に応じて医師に情報共有をするものです。
服薬情報提供書を書くときは、要点をわかりやすく簡潔にまとめ、事実や根拠に基づいて書くことが大切です。うまく服薬情報提供書を活用することで患者さんのアドヒアランスや服薬コンプライアンス、QOLの向上につながるため、必要があると判断した場合は積極的に医師に情報提供を行いましょう。
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