目次
改正薬機法で定められた薬局の認定制度とは?
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」とは、医薬品や医薬部外品、医療機器、再生医療等製品、化粧品などを対象に、その品質・有効性・安全性の確保や保健衛生上のリスクを防ぐための規制事項などをまとめた法律です。
2019年には、住み慣れた地域で患者さんが安心して医薬品を使い続けるための環境整備を目的に、内容が改正されました。そこで、都道府県知事が特定の機能を持つ薬局を「地域連携薬局」や「専門医療機関連携薬局」として認定できるようになったのです。
その背景には、深刻な高齢化に対応するための地域包括ケアの推進などがあります。
患者さんが医療機関へ入院することなく治療やケアを受けるには、医薬品のプロフェッショナルである薬剤師の協力が欠かせません。処方だけではなく、地域の医師や看護師、ケアマネジャーなどと連携し、患者さんの健康管理をサポートすることがこれからの薬剤師に求められています。
2015年の厚生労働省が策定した『患者のための薬局ビジョン』では、薬局は以下の3つの機能を持つべきことが示されていました。
・服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導
・24時間対応・在宅対応
・かかりつけ医をはじめとした医療機関等との連携強化
▽参考記事
厚生労働省『患者のための薬局ビジョン』
しかし、患者さん目線でどの薬局がどのように対応してくれるのかわかりづらいという状況がありました。そこで患者さんが薬局を選ぶ際の基準となるよう、「薬局認定制度」を創設し、特定の機能を持つ薬局を「地域連携薬局」「専門医療機関連携薬局」に認定しました。
専門医療機関連携薬局とは、がんのように専門的な管理が必要な患者さんに対して、より高度で専門的な薬学管理を行う薬局のことです。ほかの薬局や医療機関とも連携しながら、患者さんの求めに応じて情報提供を行ったり、服薬管理を行ったりします。
地域連携薬局の概要と要件について
次に、「地域連携薬局」の概要と認定の要件について詳しく見ていきましょう。
地域連携薬局とは?
厚生労働省によると、地域連携薬局は以下のように説明されています。
・入退院時や在宅医療に他医療提供施設と連携して対応できる薬局
引用:厚生労働省『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第63号)の概要』
わかりやすく言うと、「診療などを行う医療機関」と「介護などを受ける施設や自宅」をつなぐ役割を果たす薬局です。通院中の服薬相談や薬剤の適正使用のためのフォローアップ、入退院の情報共有、在宅訪問などを行い、地域における薬物治療をサポートします。
地域連携薬局の認定要件
地域連携薬局として認定を受けるためには、4つの要件を満たす必要があります。ここでは、4つの認定要件について詳しく見ていきましょう。
薬局の構造設備
地域連携薬局では、構造設備にも配慮し、患者さんが利用しやすいようにしなければなりません。服薬指導を行う際に周りに会話が漏れないよう、パーティションで区切ったり、個室を用意したりします。
患者さんが周りを心配しながら相談することがないよう、安心できる環境を整える必要があります。周囲に声が漏れたり、外から見られたりしないように配慮し、圧迫感を覚えないスペースを用意しましょう。
このほか、高齢の方や体が不自由な方などがスムーズに利用できる構造設備を整える必要もあります。スロープや手すりなどを設置して、体を思うように動かせない方でもスムーズに薬局を利用できるように環境を整えなければなりません。車椅子でも十分に身動きが取れる導線をつくることも必要です。
どのような方でも利用しやすい薬局であるために、使いやすさを重視した設備にすることが求められています。また、薬局内の掲示も見やすくわかりやすいように表示することが重要です。
情報共有の体制
地域の医療機関と必要なときにいつでも連携できる体制を整える必要があります。情報提供を求められた場合には、速やかに応じなければなりません。また、患者さんの情報を正確に入手するために退院時カンファレンスへ参加することも必要です。地域包括ケアシステムの構築に関する会議に参加し、多職種の医療従事者と連携を取る必要もあります。
このほか、地域の医療機関で勤める薬剤師や、一緒に患者さんを見ている医療従事者に必要な情報をいつでも報告できる体制を整えることも重要です。情報提供を速やかに行えるということを地域の医療機関に周知していく必要もあります。
地域包括ケアシステムに関する会議への参加し、医療機関の薬剤師などに情報提供を行う体制を整え、さらに「報告や連絡を実際にしました」という実績を提示することも求められます。提示する必要がある実績は、主に次の通りです。
・患者さんが入院するにあたって必要な情報提供を行った実績
・患者さんが退院するときに必要な情報提供を行った実績
・外来患者さんに関する情報共有を医療機関と行った実績
・居宅や施設などを訪問したときに情報提供を行った実績
月に平均30回以上、上記のような連絡や報告をした実績が求められます。認定申請や認定の更新を行う前月まで、つまり過去1年間の実績が必要です。
調剤及び薬剤の販売業務体制
地域連携薬局では、患者さんからの求めがあれば、たとえ営業時間外でも要望に応じて調剤を行わなければなりません。休日や夜間関係なく、調剤を行って患者さんに医薬品の供給を行います。自分が勤める薬局で調剤に応じるだけでなく、ほかの薬局と連携して代わりに調剤してもらっても構いません。
いつでも調剤できることを患者さんに周知させるために、休日や夜間でも調剤していることをわかりやすく掲示しておきます。
このほか、ほかの薬局から医薬品を貸してほしいと要望があった際にすぐ対応できる体制を整えておくことも重要です。そのためにも、薬局で在庫している医薬品の種類や量を把握しておき、いつでも共有できるようにしておく必要があります。
麻薬の調剤や無菌調剤なども対応しなければなりません。必要なときに調剤できるよう、いつでも麻薬を入手できるようにしておきます。無菌調剤室が薬局内にない場合は、近隣の薬局にある無菌調剤室を利用しても問題ありません。
居宅等での調剤及び指導を行う体制
地域連携薬局では、高齢者の増加に伴って需要が増している在宅医療を行える環境を整えることが求められています。認定を受けるためには、居宅等で調剤業務を行ったり、薬学的知見に基づいた指導を実施したりしている実績を提示しなければなりません。
過去1年間に月平均で2回以上、居宅での調剤業務や指導などを行った実績が必要です。ほかに、患者さんや訪問診療に関わっている医療機関に医療機器や衛生材料を提供するための体制を整えておくことも求められます。医療機器の中には高度管理医療機器や特定保守管理医療機器もあるため、これらの販売業の許可も必要です。
▽参考記事
厚生労働省『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について(認定薬局関係)』(PDF)
「かかりつけ薬局・薬剤師」や「健康サポート薬局」との違い
「かかりつけ薬局・薬剤師」とは、患者さんが使用している処方薬や市販薬などの情報をもとに、残薬や重複、副作用などの問題が起きていないか継続的に管理する薬局・薬剤師のことです。
一方、「健康サポート薬局」とは、地域住民が処方薬だけでなく市販薬や健康食品、食事や栄養、介護など、幅広く健康の維持・増進に関して相談できる薬局を指します。また、社会的リソースとしての薬局機能や薬剤師の職能を地域で活用する仕組みでもあります。
「地域連携薬局」と「健康サポート薬局」は、いずれも「かかりつけ薬局・薬剤師」の役割を積極的に担っているのです。
補足として、「健康サポート薬局」が病気の予防や健康増進を目的としているのに対し、「地域連携薬局」は患者さんが病気になったあとも住み慣れた地域で治療を継続できるようにサポートしています。このように、これらの機関はいずれも地域住民の薬物治療を支えています。
認定を受けるメリットとは?
次に、地域連携薬局や専門医療機関連携薬局に認定されるメリットを確認しておきましょう。
名称の掲示ができる
地域連携薬局や専門医療機関連携薬局の認定を受けると、認定された区分において名称を掲示することが求められます。たとえば、地域連携薬局である旨などを薬局内の見やすい場所や外側に掲示します。
これにより、地域連携薬局の機能を利用したい(手厚いサポートを受けたい)患者さんの利用が増える可能性があります。
薬局の体制強化や薬剤師のスキルアップにつながる
地域連携薬局や専門医療機関連携薬局を目指すことは、薬局の体制強化や薬剤師のスキルアップにつながります。
調剤報酬における加算はある?
薬局経営者のなかには、調剤報酬における加算があるのか気になる方もいるのではないでしょうか。
2022年5月時点では、地域連携薬局や専門医療機関連携薬局の認定を受けても特別な加算はありません。一方、医療連携や地域医療は今後もその重要性を増すと考えられます。次回以降の調剤報酬改定に備えて、前もって認定を受けておく意味は十分にあるでしょう。
また、認定を目指すことで、結果的に「地域支援体制加算」が適用される可能性はあります。地域支援体制加算の施設基準である「地域医療への貢献にかかる十分な体制の整備」や「地域医療への貢献にかかる十分な実績」などが一部重複するためです。
地域連携薬局に求められていることは?
地域連携薬局は、地域にある医療機関や薬局などと情報共有を行いつつ、在宅医療などのサービスを行う薬局のことです。必要とされる要件を満たすことで、都道府県から認定を受けられます。地域連携薬局に求められている役割は次の通りです。
・医療機関と情報共有を行う
・在宅医療を行う際に薬局と連携を行う
・安心して薬を使った治療を受けられる環境をつくる
・医薬品を必要としている薬局に提供する
医療機関との情報共有は欠かせません。必要な情報の提供を行い、患者さんが安心して薬を使った治療を受けられるように環境を整えます。
患者さんが在宅医療を受ける必要性が出てきた場合は、医療機関から情報を入手し、治療方針や服薬情報について居宅を訪問する薬剤師に情報提供を行うことも欠かせない業務の一つです。休日や夜間でも調剤に応じられる体制が整っているため、患者さんが薬物療法を安心して受けられる環境もつくられています。
ほかの薬局から求めがあった場合は、医薬品を提供することも大切です。高齢者の割合が年々高まっているため、地域連携薬局の需要は今後もさらに増していくと考えられます。患者さん一人一人に合った介入ができる薬局として機能することが地域連携薬局には求められています。
地域で選ばれる薬局になるために認定を目指しましょう
地域連携薬局や専門医療機関連携薬局は、かかりつけ薬局・薬剤師の一つです。住み慣れた地域で患者さんが治療を受け続けるためのサポートを行います。認定を受けるためには、厚生労働省が定める要件を満たし、都道府県知事から認定を受けることが必要です。
さらに詳しく知りたい方は、こちらの動画コンテンツがおすすめです。
https://www.phchd.com/jp/medicom/park/event/movie/ph-policy-dgs
厚生労働省 医薬・生活衛生局 総務課 薬事企画官 安川孝志氏による薬機法改正と認定薬局についての講演を業界記者が解説しています。
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