目次
専門医療機関連携薬局とは
専門医療機関連携薬局とは
専門医療機関連携薬局とは、がん患者などに対して通常の薬局では難しいような高い専門性を発揮しながら調剤に対応する薬局のことです。がん診療連携拠点病院などと連携を密に取りながら、多方向から患者さんを支える高度な薬学管理を行っていきます。
専門医療機関連携薬局として認定を受けるためには、一定の要件を満たすことが必要です。がんなどの治療に関して広く深い知識を持った薬局のみしか認定を受けられません。
専門医療機関連携薬局にはがんなどの知識を持った高い専門性を誇る薬剤師がいるため、外来通院で抗がん剤の治療を受けている患者さんのフォローを徹底した体制で行うことが可能です。医療機関が提示した患者さんの治療方針や服薬情報をしっかりと理解し、副作用など患者さんのQOLに影響が出るような症状が出た場合は、該当の医療機関に在籍する医師や薬剤師に状況を共有します。
患者さんが治療を居宅で行う場合は、居宅を訪問する薬剤師にも情報提供が必要です。また、抗がん剤など患者さんに必要な薬をいつでも提供できるよう地域の薬局と連携し、薬の不足を出さないようにすることも求められています。
患者さんの治療方針や服薬情報などをしっかりと把握し、連携を取っている医療機関にいつでも情報提供ができる環境も整えられています。プライバシーを守るために個室を用意したり、体が不自由な方でも移動しやすいようにスロープや手すりなどが備え付けられたりしていることも特徴です。
改正薬機法で定められた薬局の認定制度
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」とは、医薬品や医薬部外品、医療機器、再生医療等製品、化粧品などを対象に、その品質・有効性・安全性の確保や保健衛生上のリスクを防ぐための規制事項などをまとめた法律です。
2019年には、住み慣れた地域で患者さまが安心して医薬品を使い続けるための環境整備を目的に、内容が改正されました。そこで、都道府県知事が特定の機能をもつ薬局を「地域連携薬局」や「専門医療機関連携薬局」として認定できるようになったのです。
その背景には、深刻な高齢化に対応するための地域包括ケアの推進などがあります。患者さまが医療機関へ入院することなく治療やケアを受けるには、医薬品のプロフェッショナルである薬剤師の協力が欠かせません。処方だけではなく、地域の医師や看護師、ケアマネジャーなどと連携し、患者さまの健康管理をサポートすることがこれからの薬剤師に求められています。
2015年の厚生労働省が策定した『患者のための薬局ビジョン』では、薬局は以下の3つの機能をもつべきことが示されていました。
- ・服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導
- ・24時間対応・在宅対応
- ・かかりつけ医をはじめとした医療機関等との連携強化
▽参考記事
厚生労働省『患者のための薬局ビジョン』
しかし、患者さま目線でどの薬局がどのように対応してくれるのかわかりづらいという状況がありました。そこで患者さまが薬局を選ぶ際の基準となるよう、「薬局認定制度」を創設し、特定の機能をもつ薬局を「地域連携薬局」「専門医療機関連携薬局」に認定しました。
地域連携薬局とは
地域連携薬局とは、外来を受診するときだけに限らず、入退院時や在宅医療なども含めて多くの医療機関と連携を取りながら服薬情報を一元的な管理を行いつつ患者さんの対応をしていく薬局のことです。
患者さんがどのような薬を服用しているのか、残薬がどれくらいあるのか、副作用は出ていないかなどを必要に応じてほかの薬局にいつでも報告できるような体制を整えておく必要があります。
専門医療機関連携薬局の認定要件
専門医療機関連携薬局の認定を受けるためには、いくつかの要件を満たさなければなりません。それぞれの認定要件は次の通りです。
傷病の区分
専門医療機関連携薬局は、厚生労働省が定めている傷病の区分によって認定を受けます。新法第6条の3第1項において厚生労働省に定められている区分は、現時点で「がん」です。今後、がん以外にも傷病の区分が追加される可能性があります。その際は、追加された区分に対応する基準を定める予定です。
構造設備
専門医療機関連携薬局では、患者さんが安心して薬局を利用できる構造設備が必要です。周囲を気にせず相談できる環境設備を用意するためにも、服薬指導を行うカウンターや待合室から距離を取った場所に個室を用意し、周りに話を聞かれないようなスペースを用意する必要があります。
また、高齢者や障がい者の方が移動しやすい環境を整えることも大切です。車椅子で移動できるように段差をなくしたり、足腰が悪い方でも歩行できるように手すりを設置したりします。
情報共有の体制
情報共有の体制を十分に整えておくことも大切です。専門医療機関連携薬局では、がん治療を行っている医療機関といつでも連携できる体制を整えてく必要があります。いつでも連携できるようにしておくことで、がん患者の治療方針や服薬情報などの提供をスムーズに行えるようにするのです。
連携体制を整えるためにも、専門医療機関連携薬局で勤務する薬剤師は、医療機関が開催する会議に参加する必要があります。会議は一度ではなく継続的に参加しなければなりません。このほか、がん治療を行っている医療機関に勤める医療関係者に必要な情報を提供する体制を整えることも重要です。
がん治療を続けていくうえで患者さんに副作用が出ていないか、在宅医療を行う際にどのような方法で介入をして、服薬指導を行う際にどのような情報を入手できたのかなどの報告を随時行います。
専門医療機関連携薬局では、がん治療など専門的な治療を行う医療機関で働く薬剤師に対して情報提供をしたという実績を提示することも必要です。過去1年間で受け付けたがん患者さんの処方箋のうち、50%以上について情報提供を行っている必要があります。50%を切ると認定要件を外れるため注意しましょう。
このほか、必要に応じて周辺の薬局へ薬の服用歴や残薬について情報提供したり、副作用などについて共有したりする必要もあります。患者さんの情報をほかの薬局から求められたときは、患者さんに同意を得たうえで情報提供を行わなければなりません。
このように、専門医療機関連携薬局では、医療機関や薬局などといつでも密な連携を取れるようにしておき、必要なときに速やかな情報提供を行えるようにしておく必要があります。
専門的な薬学知識と提供体制
がん治療に関する専門的な薬学知識は専門医療機関連携薬局で働くうえで必須です。抗がん剤に関する知識はもちろん、疼痛治療に用いる麻薬の調剤も行えるように知識を習得し、必要なときにすぐ麻薬の調剤ができる環境を整えておきます。
このほか、患者さんが必要とするときにいつでも相談や調剤に応じられる体制をつくることも重要です。患者さんから求めがあった場合は、休日や営業時間外であっても薬局を開けて相談や調剤を応じられるようにします。
このとき、基本的にはかかりつけ薬剤師が対応します。かかりつけ薬剤師が対応できない場合は、ほかの薬剤師が対応しても構いません。ただし、十分に情報提供を受けており、常勤として継続して1年以上働いている薬剤師が対応を行う必要があります。
また、患者さんの対応にあたる薬剤師は、情報提供がされているだけでなくがんに関する専門知識を持っていることも重要です。がんに関した専門知識を習得するために、専門医療機関連携薬局で働く全ての薬剤師が研修を受講し、常に最新の知識を身につけていくことが求められます。
休日や夜間でも患者さんの要望に応じて、必要な医薬品を提供できるようにします。そのためには、地域の薬局といつでも連携が取れるようにしておくことが重要です。ほかの薬局からの求めがあった場合は、抗がん剤などの必要な医薬品を提供します。抗がん剤に限らず、がんの治療に必要な薬はいつでも提供できるように在庫管理をしておかなければなりません。
▽参考記事
厚生労働省『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について(認定薬局関係)』(PDF)
「高度薬学管理機能」との違い
高度薬学管理機能は、「かかりつけ薬局・薬剤師」に求められる役割の一つです。高度な薬学管理が必要な抗がん剤や抗HIV薬の選択、副作用の対応などの支援を行います。
一方、専門医療機関連携薬局は、高度な薬学管理が必要ながんなどの薬物治療に関わる医薬品の提供、専門的な情報発信などに加えて、ほかの薬局に対して研修を実施することも求められています。この点で、専門医療機関連携薬局と高度薬学管理機能は異なるわけです。
認定申請手続きについて
一定の基準を満たすことで専門医療機関連携薬局としての認定を受けられます。以下のように手続きを踏むことで認定を受けることが可能です。
申請時に必要な資料
最初に、申請に必要な資料を集めましょう。申請には次の資料が必要です。
- ・認定申請書
- ・認定基準に適合しているとわかる各種添付書類
- ・添付書類確認表およびチェックリスト
- ・医師の診断書(※医師の診断書は、申請する方が精神疾患などにより業務を適切に行えない場合があるときのみに必要となります。)
必要な資料の詳細は、各都道府県の申請書類一覧を確認してください。
認定更新申請時に必要な資料
認定の更新を行うときには、次の資料を準備してください。
- ・専門医療機関連携薬局等の認定証
- ・認定基準に適合しているとわかる各種添付書類
- ・添付書類確認表やチェックリスト
- ・医師の診断書(※医師の診断書は、申請する方が精神疾患などにより業務を適切に行えない場合があるときのみに必要となります。)
申請時と同様に、必要な資料の詳細は、各都道府県の申請書類一覧を確認しましょう。
専門医療機関連携薬局に求められている役割
専門医療機関連携薬局では、抗がん剤治療を行っているがん患者に対して適切な服薬指導や薬学的管理を行えることが求められています。外来でも抗がん剤治療の対応をすることが増えてきている中、薬剤師にはより専門的で高度な対応が必要とされているのです。
専門医療機関連携薬局では、専門的な知識を持つ薬局としても力を発揮しつつ、ほかの薬局や医療機関にも医薬品を供給したり、専門性の高い情報を提供したりする必要があります。
高度な知識を身につけ、専門性を備えた薬局に
専門医療機関連携薬局とは、がんなどを患っている方に対して専門性の高い調剤を行う薬局のことです。認定を受けるためには一定の要件を満たす必要があります。これからの時代、薬局はただ処方箋を受け付けて調剤しているだけでは患者さんに選ばれる薬局になることはできません。
専門医療機関連携薬局のように、今後は高い専門性を備えており、単に調剤をするだけではない高度な薬局が求められるようになります。がん患者に対応できる高度な知識やスキルを習得し、患者さんが安心して過ごせる毎日をサポートできるようになりましょう。
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https://www.phchd.com/jp/medicom/park/event/movie/ph-policy-dgs
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