目次
薬局DXとは?
ITツールを導入したり、デジタルツールを活用したりすることをIT化と言います。DXもデジタル化を推進するものですが、IT化とは少し違うものです。では、薬局DXとはどのような意味なのでしょうか。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
DXは、経済産業省により次のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
わかりやすく言い換えると、DXとは「デジタル技術を活用して自社の仕組みやサービスを変えていき、生活をより良いものへと変革していくこと」です。DXは、「Digital Transformation」の略語として知られています。英語では「Trans」のことを「X」と表記するため、DXと略されているのです。
IT化と混同されがちですが、DXとIT化は別物なので注意しましょう。IT化はDXを実現するための手段であり、DXの前段階のことです。IT化により業務効率を改善させ、さらにビジネスモデルや企業文化が変革されることをDXと言います。
参考:デジタルガバナンス・コード2.0(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc2.pdf
薬局DXとは?なぜ必要なのか?
薬局DXとは、デジタル技術を日々の業務に取り入れて業務の効率化や自動化を行い、薬剤師が働きやすい環境づくりを実現することです。近年では、薬局にもDXが求められています。薬局にDXが求められる主な理由は、次の3つです。
①薬剤師不足に備えるため
薬剤師の総数は2018年で311,289人、2020年で321,982人でした。薬剤師の人数そのものは増加傾向にありますが、薬剤師不足に悩まされている薬局は多くあります。高齢化が進んでいることもあり、薬剤師の需要が高まっているのです。
総務省統計局によると、65歳以上の高齢者が総人口に占める割合は2021年時点で29.1%でしたが、2040年には35.3%になると推測されています。
②薬剤の売上減少が見込まれるため
薬価差益がどんどん少なくなり、薬剤で利益を得ることが難しくなってきました。調剤してもほとんど利益が出ない薬も存在するほどです。利益が減れば、当然どこかを削らなければなりません。
削る対象となりやすいのが人件費です。高齢者の増加に伴って業務量が増えているにもかかわらず、薬剤師の人員を削られてしまうことになります。
③かかりつけ薬剤師・薬局が推進されているため
高齢化が進んでいることから、厚生労働省はかかりつけ薬剤師や薬局の推進を行っています。かかりつけ薬剤師は24時間体制で患者さんの対応を行わなければなりません。
つまり、かかりつけ薬局としてきちんと機能するためには、薬剤師の人員確保が必要になるのです。人員確保を行うためには、業務を効率化して薬剤師にかかる負担を減らす必要があります。
参考:令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/20/dl/R02_kekka-3.pdf
参考:令和3年 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-(総務省統計局)
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1291.html
厚生労働省が推進する薬局DXについて
薬局DXは、厚生労働省によっても推進されています。推進することによって、処方箋の調剤を効率化し、対人業務を充実化しようとしているのです。現状は処方箋の確認や調剤、監査や疑義照会、服薬指導などに多くの時間を取られてしまっています。
薬局DXを推進すれば、これらの割合を少なくし、代わりに調剤後のフォローや健康サポート、一般医薬品の販売などに割く時間を増やせるのです。薬局DXを推進するために、厚生労働省では、次のようなデジタル技術を活用するように示しています。
- 重複投薬や併用禁忌のチェックを自動化
- 処方や調剤情報を把握し丁寧な服薬指導を実施
- ICTの活用による服薬指導の効率化
- オンライン服薬指導を実施し、服薬アドヒアランスを向上
- データのクラウド管理を活用し、在宅訪問を効率化
- 電子処方箋を活用し、医療機関へのフィードバックを効率化
重複投薬や併用禁忌を自動でチェックできるようになれば、それだけ薬剤師の手間を省くことができます。短縮した時間は、ほかの業務に回すことが可能です。
ICTの活用による服薬指導の効率化も注目されています。ICTとは情報通信技術のことです。ICTを活用することで対物業務を効率化し、服薬指導を行う時間を確保します。
昨今ではオンライン服薬指導も積極的に行われるようになってきました。オンライン服薬指導もICTの活用によって行われるものです。
データのクラウド管理を行うと、どこにいても薬歴の閲覧や記入ができるため、在宅訪問を効率化できます。薬局まで帰らなくても出先で薬歴を触れるので、効率良く業務を進められるのです。
電子処方箋を普及させようとする働きも近頃ではよく見られます。薬の情報を一元的に管理できるようになることから、医療機関へのフィードバックを効率良く行えるようになります。
薬局DXを行った事例
それでは、薬局DXが行われた実際の事例について見ていきましょう。
①保険薬局用電子薬歴PharnesX-MX
保険薬局用電子薬歴システムの「PharnesX-MX」は、薬歴の管理をよりスムーズに、簡易的に行うための新しいサービスです。監査情報や過去の薬歴を一度に表示できる機能のほか、今回の処方と過去の処方4回分を横並びにして表示し、処方内容の変遷を用意に確認できる機能を備えています。処方の変更点は色付きで表示されるので一目瞭然です。
このほか、長期投薬されている患者の来局予測を表示する機能もあります。いつ、誰が来局する可能性があるのかが自動的にわかるため、予製の作成もスムーズに行えるでしょう。
「PharnesX-MX」のすごいところはこれだけではありません。薬歴といえば薬局で書くイメージが強いかと思いますが、「PharnesX-MX」なら薬局の外にいても記入することができるのです。薬局内のノートパソコンを外に持ち出すだけでいつも通り薬歴の管理を行えます。
「PharnesX-MX」は、ミスの少ない入力を行えることにも力を入れました。処方箋をスキャンすることで、画像を処方箋入力画面に表示させることができます。2次元コード認識機能を利用すれば、データを自動で転記することも可能です。
法改正があった際はデータベースがタイムリーに配信されるため、バックアップするだけでソフトのバージョンアップが簡単にできます。効率良く、ミスなく業務をこなすために最適なシステムです。
②対面型薬剤情報システムDrugstarLead
「DrugstarLead」は、処方変更時の問題を解決するために作られたシステムです。「パソコンが近くにないので薬歴をすぐに見られない」「患者が薬を間違えて服用しないか心配」「紙で書いてもらったアンケートをパソコンに入力するのが面倒」などのようなお悩みを抱えていませんか?「DrugstarLead」なら、クラウドサービスのためどこにいても薬歴の管理ができます。
前回処方された薬を「見える化」するため、患者が内容を間違えてしまう心配もありません。アンケートはタブレットを利用して患者に書いてもらうため、自動的に内容が薬歴に転送されます。そのため、手作業で内容をパソコンに打ち込む必要がありません。
「DrugstarLead」の機能の中でもとくに便利なのが、前回処方された薬の「見える化」です。前回の処方と今回の処方を写真つきで表示し、さらに薬剤師のコメントを加えて印刷できるため、患者のミスを限りなく減らすことができます。前回の処方と比べて何がどう変わったのかが一目でわかることから、変更点の確認が安易にできるのです。
また「DrugstarLead」は、かかりつけ薬剤師の獲得サポートにも役立ちます。自己紹介画面が搭載されており、ここに薬剤師の活動報告や経歴などを記載しておくことで自己PRが可能です。
③電子お薬手帳ヘルスケア手帳
お薬手帳は、紙から電子へと少しずつ移行しています。「ヘルスケア手帳」は、薬剤師にとっても患者にとっても使いやすい電子お薬手帳です。これまでの電子お薬手帳は処方箋を提出したり薬の内容を保存したりする機能がメインでした。
「ヘルスケア手帳」は、処方箋を提出した後、お薬の準備ができると呼び出し通知が鳴るようになっています。そのため、処方箋を提出してからお薬ができるまでの時間、患者は自由に過ごすことが可能です。
処方箋を提出するのも簡単で手間がかかりません。処方箋をスマートフォンで撮影し、薬局を選んで送付するだけで受付が完了します。
服用中の薬が確認できるだけでなく、これまでに処方された薬を確認できるのもメリットです。患者本人の薬だけでなく、ご家族全員分の情報をスマートフォン1台で管理できます。
このほか、便利なアラーム機能があるのもポイントです。薬を服用する時間になると、お知らせしてくれるので飲み忘れる心配がありません。
薬局DXで業務効率化を
薬局DXとは、デジタル技術を活用して薬剤師が働きやすい環境をつくることです。高齢化による薬剤師の需要拡大や薬剤の売上減少、かかりつけ薬剤師・薬局の推進のために薬局DXが進められています。
厚生労働省は、薬局DXを促進するためにオンライン服薬指導を実施したり、電子処方箋を活用したりするよう示しているため、まずはこれらに力を入れていくことが重要です。
実際に薬局DXを行った企業では、業務効率化に成功しています。これからの時代、薬局DXの促進は生き残れる薬局になるために必要な施策となることでしょう。
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