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クリニック経営 医師 事務長 2021.06.25 公開

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コロナ禍のクリニック経営の考え方

※本内容は公開日時点の情報です

#事業計画 #マネジメント

コロナ禍のクリニック経営の考え方

長引くコロナ禍の影響から「受診控え」が起き、また、感染症対策が一般化したことで、インフルエンザやかぜ症候群などの季節性疾患が劇的に減っている。このような「患者減少時代」に重要なのは、患者との「良質な関係づくり」であり、いかに患者をリピートさせるかを考えなければならない。そこで、今回はコロナ禍におけるクリニック経営のニューノーマルな考え方を解説する。

コロナ禍のクリニック経営の考え方

「再来患者数」に注目する

一般的な保険医療を中心とした診療所の売上は、「患者数×患者一人当たり単価」で表される。コロナ以前の世界では、クリニックにとって患者数、特に「新患数」が重要であり、多くのクリニック向けセミナーのテーマが「増患対策」であった。毎月、「新規患者」に一定程度来ていただくためには、クリニックの「認知」を高める必要があり、ある程度の投資が必要となる。新規患者を増やすために、広告(駅看板、野点看板)やホームページなど、コストをかけて、患者を増やしていく。しかしながら、コロナ禍では、新規に患者を獲得するのが難しくなっており、新患数とともに、「再来患者数」にも注目する必要が出てきている。

患者の循環構造、タンクには穴が空いている

患者数は、「新患数」と「再来患者数」の合計で表される。はじめて来院した患者は、その後、再来患者としてストックされていく。この関係は貯水タンクをイメージすると分かりやすい。このタンクは、新患の蛇口をひねると、水が溜まる仕組みで、その水は、毎年大きな貯水タンクに溜まっていく。この貯水タンクに溜まった水は毎月、再来患者として循環されることになる。
しかしながら、この貯水タンクには「穴」が空いている。必ず外に漏れ出してしまうのだ。その理由として考えられるのは、別のクリニックへ移ってしまったり、患者さんが転居されたり、患者さんが自ら治ったと判断し、来なくなるなど様々である。この穴を完全にふさぐことは難しいが、穴を小さくすることは可能だ。コロナ禍では、新規患者の蛇口が過去のようには大きく開いていない。蛇口が締まっている状態では、毎月の患者数は当然減っていってしまう。これが現在の状況である。

再来患者の循環を起こすためには

そこで、貯水タンクの穴をしっかり埋め、再来患者からの循環を起こすことを考える必要があるのだ。さて、穴を埋め再来患者を循環させるにはどのようにすれば良いのだろうか。
マーケティングの定説では「新規顧客」の獲得コストに比べ、「顧客をリピート」させるコストは10分の1で済むと言われている。これは言い換えれば、広告やホームページの見直しのようなコストのかかる戦略ではなく、コストをかけずに工夫することで十分患者を増やすことが可能だと言える。
まず、穴の原因から考えていこう。主な原因は3つある。「転院」「未受診」そして「死亡」である。亡くなってしまった患者は、どうにもならない問題であり、今回は取り上げない。今回は「転院」と「未受診」について考えてみよう。

「転院」を防ぐには、不満と不安を解消する

「転院」とは競合クリニックへの移動を指している。これが起きる理由としては、患者のクリニックに対する「不満」そして「不安」が考えられる。クリニックの不満は、多くの患者満足度調査によると、第一に「待ち時間」、第二に医師、看護師、受付など「スタッフの対応(説明)」である。常にこの2つが上位を占めている。これらの不満が多ければ多いほど、患者の来院の意思を弱めてしまうことになる。これらの不満を解消できなければ、他院への浮気につながってしまうのだ。また、不安を減らすことも大切である。現在のクリニックに対する不安は、感染症の恐怖であり、慢性的に起きている待合室の混雑である。感染対策をしっかり行い、予約システムなどで待合室の混雑を回避するなどをして、患者が安心して受診できる環境を作り出す必要があるのだ。

「未受診」を防ぐ、目安と予約

「未受診」は、受診した患者が次回なぜか来なくなるという問題だ。これは患者自身が自己判断して、「治癒した」と思い、来院しなくなる行動である。この行動はコロナ禍で「できるだけ受診を控えたい」と考える患者心理のもとで起きやすい。本来、継続治療が必要な患者が来なくなることは重症化につながる可能性もあり、大変危険な行動である。
そこで、次回、受診が必要な患者に確実に再受診していただくためには、医師が「なぜ、もう一度受診が必要なのか」をしっかり伝えることが有効である。また、患者が行動に移せるように「目安」となる日時を何らかの形でお伝えすることも大切である。紙にメモを書いたり、目安の日時を印刷してお渡ししたりする必要がある。
さらに、患者の受診を次回も確実にさせるためには、次回の予約を取るのが最も有効だ。予約とは、患者とクリニックとの約束であり、予約することで「再び受診しよう」とする行動力が強まるのだ。

「関係づくり」に有効なデジタルマーケティング

穴をふさぐ行動とともに大切なのは、「患者とクリニックの関係性」である。関係性が高ければ再受診の確率は高まり、関係性が低ければ他医院へ移る可能性が増えていく。この関係性は、患者とクリニックのコミュニケーション頻度(密度)と利便性に関係している。
コミュニケーション頻度を高めるためには、定期的にクリニックからメッセージを送れるようにする必要がある。メッセージのネタは、医師の変更や診療時間の変更、ワクチン接種、新しい医療機器の導入など、クリニックから発信することはたくさんあるだろう。クリニックが定期的に情報を発信するためには、SNS(LINEやインスタグラム)などデジタルマーケティングが有効である。ホームページはプル型メディア、SNSはプッシュ型メディアと呼ばれ、近年、SNSの活用に注目が集まっており、コロナ禍でさらに活用が進んでいる。
また、患者が来院しやすい環境を整えることも重要だ。これは、患者の利便性を高めると言い換えても良いだろう。例を挙げれば、予約システムで「密」を回避したり、Web問診で待ち時間を減らしたり、オンライン診療で来院せずに受診できるようになったり、など最新ICTツールの導入を行い、患者の受診にかかるハードルを下げる必要があるのだ。

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