承継M&Aを成功させるための留意点
医業承継、M&Aは各利害関係者にとってとてもメリットのある内容ですが、進める上で大きく4つの留意点があります。
① 秘密保持の重要性
② 譲渡者の時間軸が限られている
③ 適切な譲受者(買手)を見つける
④ 承継者(売手)の社会的地位、生活に配慮する
①の「職員への情報開示」は十分に注意が必要です。特に職員に伝わってしまうと「いつ仕事がなくなるかわからない」などの不安に繋がり、場合によっては承継前に退職される可能もあります。職員の継続を前提とした承継であれば譲渡価額や承継後の運営計画に影響が出る為、承継検討を検討されていることはご家族以外には伝わらないよう情報の取り扱いには十分に注意する必要があります。
また、ご家族についても秘密保持の重要性についてご認識いただくようご説明し、良好な承継実行に向けて進めていくことが重要です。
②「譲渡者の時間軸が限られている」については、譲渡者の時間軸に主に3つの問題があります。
1つ目は「医院の業績が落ちる前に進める」という点で、業績が悪化してからでは譲受者がなかなか見つからないことや、見つかった場合も譲渡価額が低い状態となりますので、前もって計画的に進めることが重要です。
2つ目は「急な閉院リスク」という点で、体力の続く限り定休を増やしたり非常勤を入れながら代表者として続けていた場合に、急な体調不良などで突如として閉院せざるを得なくなるケースがあります。その場合、患者は通院できなくなり、職員も退職せざるを得ないため、そのまま承継先が見つからないか、譲受者が現れても「居抜き」という形での承継になり、これまで築き上げた医院の価値がなくなってしまいご自身やご家族の将来の生活にも大きな影響が発生します。そのため1つ目の問題と共通しますが前もった計画が非常に重要になります。
3つ目は再生局面にある医院の場合は、金融機関との契約期日や資金繰りなどのリミットが存在するケースがある為、限られた時間の中で譲受者の見つけ、必要なプロセスを踏んで承継実行までスピード感を持って進めることが重要になります。
③「適切な譲受者を見つける」については、承継者単独の価値を超える価値を見出してくれる譲受者が望ましいという点で、そのような譲受者を見つけるためには、承継による譲受者のメリットを考えることが必要です。譲受者のメリットと言えば、例えば医療法人の拡大し際したドミナント戦略や、新分野・エリアへの進出、医療従事者や優秀な職員の確保、患者の紹介等があります。また、譲受者の資金力がある場合はこれまで単独では資金的な制約から実施できなかった設備投資を実現するなど、譲渡者の医院が持つ潜在的な価値を実現できることも承継M&Aによる譲受者のメリットと言えます。
④「承継者(売手)の社会的地位、生活に配慮する」は、譲渡者の社会的地位、ご家族を含めた生活に配慮するとういことは円満な承継M&Aを実行するために重要な要素です。譲渡者は、これまで経営を行ってきたという尊厳があり、また今後の自身や家族の生活のことを考えています。譲受者が好条件を提示しても、配慮に欠けるコミュニケーションで、互いに条件が良い話であっても承継M&Aが成立しない場合もあるため、譲受者は譲渡者の立場を十分に考慮して進めることが必要です。
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