真の事業承継の手順1(基本的対応)
真の事業承継の10の手順
悔いの残らない承継を行うために、行うべきことを明確にしたうえで真の事業承継を行います。
- 事業承継する時期及び方法の決定
- 事業承継のために必要な実施事項の検討
- プロフィールづくり
- マニュアル作成、運用
- 財務分析及びキャッシュフロー分析
- 達成しなければならない目標値の決定
- 次のステップ検討
- 財務的な裏付けの検証とプランニング
- 次のステップのための活動
- 事業承継計画立案
が行うべき事項です。
以下、数回に分け説明していきます。
事業承継の基本的対応
1.事業承継する時期及び方法の決定
事業承継をしようとする時期を決めます。思いついたので明日、事業承継を完了したいと今日決めてもそれはどだい無理な話です。事業承継を行うためには開業のときから自身のライフサイクルを考え大まかな時期を決めるとともに、その時期が近付いたら徐々に準備を始めることが適当です。
少なくとも一年間以上は準備を進めなければなりません。承継先が親族にしても第三者にしても時間をかけて説明する項目への対応を行わなければなりません。一年の準備期間は、何とかなるぎりぎりの線かもしれません。
いずれにしても、何年何月迄には事業承継を終えていたい、という思いや、ご家族に事業承継するのか第三者に行うのかの目安をつけます。医師の親族がいても承継しない事例もたくさんありますし、親族が途中で病院等の勤務先を辞められない等の事情があり当初決めたプランがうまく進まないこともあり油断はできません。
しかしある時点で決断し方向を明確にしなければ先に進めないことも事実です。なので、いつ誰にと決めてもそうならない可能性は残りますが、できるだけ計画を立て、計画通りに進むよう行動することが必要です。
2.事業承継のために必要な実施事項の検討
前述したように事業承継をする相手が親族であるときも彼らの仕事が思い通りに進むためには、
- どのような診療を、どのように行っているのか
- どんな患者が、どこからどれくらい来ているのか
- 診療所内外の仕事の内容はどのようなものであるか
- 第三者にいくらで譲渡するのか、いくらで診療所を賃貸するのか
といったデータの整理や調査、決定が必要になるのです。
もちろん、第三者に引継ぐのであれば、この診療所をよく知ってもらう必要がありますので、
- ホームページを作成したり見直すことや
- 院長の人柄や思いが伝わるよう記事を作成し診療所のプロモーションを見直す
ことも必要となります。
診療所のホームページのSEO(Search Engine Optimization検索エンジン最適化=検索ソフトで上位に表示させること)対策を行うことや、院長の記事を多くの業者が取り上げてくれるようプロモーションを行います。自院のことをインターネットにより容易に知ることができる機会をつくりあげます。
上記を整備したのち、第三者への事業承継を行う場合には、業者に依頼して開業希望の医師を募集し、診療所の譲渡や賃貸での承継を行ったうえで一定期間二診体制での診療を行う方法や、承継前に医師を自院に入れ、あらかじめ院長が同医師をサポートし、時期が到来したときに医師に診療所を継承してもらうなど事前に実質的に患者を引き継ぐ方法を採用することになります。
承継が行われるという意味では結果は同じですが、後者は譲渡や賃貸の時期が若干遅くなりますが、間違いない承継を行うためには最適な方法であることは間違いありません。
3.プロフィールづくり
院長の考え方や思い、そして沿革を記載しプロフィールとして整理します。さらに、どのような診療をどのように行っているのかのデータや、どんな患者がどこからどれくらい来院しているのか、必要に応じて地域別患者数や男女比や疾患別統計等の患者データ資料なども掲載するとよいでしょう。
プロフィールは院長がこれまでに行ってきた診療活動の整理をするうえでも、また改めて自身の診療活動を振り返り次のステップに活かしていくうえでも、とても有用です。第二の活動に入るうえで、プロフィールを作成しておくことは必須事項となります。
もちろん、これらの資料は診療所の譲渡を受けたり賃借して診療活動を行っていこうとする開業希望の医師の判断材料になります。承継がしやすくなることは自明の理です。本格的な話し合いになれば、財務データも提出し譲渡価格や賃貸価格を決めていきますが、プロフィールを作成することで自院の診療圏や自院の実績が詳細になり交渉を円滑に進められます。
付加価値づくり
4.マニュアル作成、運用
診療所の(診療以外の内外の)仕事の内容はどのようなものであるか、ということを、自院の受付から会計を終了して患者が院内を出るところまでの業務により整理します。一人ひとりの職員が何をしているのかを箇条書きで書き出し(課業分析)、それを集計分類し、少なくともそれらが診療所の業務をすべて網羅的に示しているかどうかを検証してマニュアルを作成します。
それぞれの手順と留意点、ノウハウをマニュアルの構成要素として書きだしていきます。できているのであれば、一定のルールに基づいてそれらを整理し体系化し、次の医師が働くようになり、そして場合によっては既存のスタッフが辞めて新しいスタッフになったとしても、既存の患者の慣れている診療所のやり方を踏襲することができるようにしていきます。
新しい医師が自分のカラーを出すため運営方法を大きく変えるということがあるとしても、現状はどのようなものであるかを理解することで、始めて自分なりの新しいことを考えることができるし改善ができるのです。ここで説明した資料はとても有益で診療所の付加価値を高めることは間違いありません。
マニュアルができたのち、マニュアル通りに仕事が行われているのかどうかについて、別途調査をしてみる必要があります。引継ぎ書やさまざまなかたちでのマニュアルが作成されているとしても、それらを整理し理解し易くすることで、自院における職員の仕事振りもみえてきますし、事業承継する以前に院内が変わっていくきっかけをつくることにつなげていくこともできます。
なお、課業分析やマニュアルの作成や運用は、本来開業時から用意すべきツールであり、無駄のない質の高い診療所運営の基礎となるものです。
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