真の事業承継の手順2(承継価値と第二の人生)
事業承継の価値
5.財務分析及びキャッシュフロー分析
承継先が親族であれ第三者であれ、自院の財務分析を行い、キャッシュフローを分析して内容を伝える必要があります。営業キャッシュフローや投資キャッシュフロー、そして財務キャッシュフローをチェックすることになります。
財務分析にしても、キャッシュフロー分析にしても、第三者が見て、なるほどこれなら大丈夫であるという水準にまでいっているかどうかも検証し、課題があればそれを事業承継準備期間のなかで解決していく気付きとします。なお第三者用には譲渡する金額をキャッシュフローベースで算定しておきます。
また、DCF(Discounted Cash Flow法=将来得られるキャッシュを現在価値に割戻し有利子負債を控除して譲渡価格を決める方法)や、帳簿純資産、時価純資産や税務上での評価が実施されるます。付随して譲渡に関連するあらゆる税務についても当然のこととして計算し、手元にいくら残るのかを明確にします。
また事業承継には営業権をどのように評価するのかというテーマが検討されます。これらについての適切な評価を行い譲渡価格に反映させます。なお、賃借料は近隣事例とするものの、譲渡金額については一定期間の顧問報酬や支払手数料の名目で分割して支払いを行う取引もあります。
6.達成しなければならない目標値の決定
事業承継の時期を決定し、診療所の現状分析を行ったのち、プロフィールをつくります。同時にネットで診療所のプロモーションを行い、財務分析やキャッシュフロー分析を実施し、譲渡に関わる税務計算を行い準備事項としています。
ただし、どうしても、もう少しさまざまな条件(譲渡価格をもう少し高くとか、賃貸料をもう少し高く設定したいといった条件)をあげたいというときには、実際上の診療所の利益を増加させることや、実際に患者数や連携数などを増加させる活動を行う必要があります。
より高く評価してもらう、この診療所で医師と一緒にやっていきたい、あるいは譲渡して欲しいと思ってもらう水準にまで印象を引き上げていかなければなりません。準備期間中に増患し、財務内容をより良くしていくという活動が必要になります。
さらに、振り返ってみるとスタッフのクオリティが高くない、オペレーション上課題がある、といった場合には、マニュアルを利用して教育指導をするし、業務改善をしなければならない部分は業務改善を行うよう指示を出す必要があります。
ここに、自院を分析して、整理して事が足りるということではなく、医師が考える評価に不足するところがあれば、そのための実質的改善を同時に行い、条件をあげるということも視野に入れて事業承継の準備をすることが有効であるということがいえます。
第二の人生のために
7.医師の次ステップの検討
そして一番大事なことですが、医師は事業承継をしたあと、どんな人生を送るのかを決めっておく必要があります。
ある医師は奥様から「診療所を譲渡しなさい、譲渡したあとはどこかの非常勤になり稼いできなさいといわれた」と肩を落としていました。ただ、単に診療所を手放しその後また外にでて勤務というスタイルは、その医師にとっては、耐えられないものだったのです。
医療と関わるとしても、自分が医師としてやりたいことは何か、やりたい仕事をやりながら余裕をつくり、プライベートの時間も楽しむ。懸命に医療に尽くしてきたからこそ、そう思われるのだと拝察します。
実質的な外来をもたない在宅療養支援診療所として活動するか、住宅型有料老人ホームを運営し地域貢献していくのか、介護事業のお手伝いをするのか、栄養指導を行う会社をつくり生活習慣へのサポートを行っていくのか、はたまた、レストランやスポーツ施設の顧問となり、健康療法を普及するための仕事をしていくのか、やりたいことがあるのであれば進む方向に制限はありません。健康で豊かな生活を送りたいと願う国民に対し、医師としてさまざまな支援をしていくことができるからです。
もちろん医療から離れて例えば地域住民のリーダーとしての町内会の役員としてマネジメントに関わるなど、医師として活躍してきた今までの経験を背景にした生き方もできますし、そうされている方も多いと思います。
しかし、医師という職業は特殊であり、誰にも急に真似のできない職業です。どのようなかたちであっても医師としてのスキルや人格を、社会が求めていることは確かです。
第二の仕事を医療・健康・福祉の分野でスタートすることは、地域社会の無言の要望であると考えます。医師がどのような立場であっても今までの経験を通じて、少しでも医療・健康・福祉に携わることが求められています。次のステップを医師として考えられる人生は素敵だと思います。
8.財務的な裏付けの検証とプランニング
診療所をやめて仕事から離れたときにいくら財産が残るのか、これから先いくらあれば自分の生活を維持できるのか、そのためには診療所での診療を継承したあと、どれだけの収入があればよいのかをある程度把握し計画しておく必要があります。
こうした認識がなければ、そして財務的な裏付けがなければ、この時期に診療所をたたみます、ということを簡単に決めることはできません。どれだけの資産が必要であるのかについては、次のステップでどのような生活をしてくのか、どのような仕事をしていくのかによって大きく変化してきます。
例えその時点で潤沢な資産があったと考えていても、客観的にいくらであれば「潤沢」といえるのか、そしてどのようにそれを運用し、使っていけるのかの明確な計画を立案してみなければ、不安が残るのではないでしようか。現在の資産を棚卸し、今後どのようにそれを運用し活用していけるのか、今後どれだけの収入を得ていく必要があるのかといった財務的な観点からの試算を行わなければなりません。
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