譲渡スキームと事業形態
承継・M&Aスキームの種類
① 出資持分譲渡
持ち分の定めのある社団医療法人の出資持分を譲受者に譲渡するスキームです。出資持分とは、社団医療法人に出資した者がその医療法人の財産に対し出資額に応じて有する財産権をいい、譲受者は出資持分譲渡代金の支払いと持分所有者である理事長など役員・社員の変更(登記変更)をすることで承継が実行されます。
事業譲渡や合弁と異なり、行政の許可が必要ない為、比較的手続き期間が短く業務負担も少ないことが特徴です。
② 事業譲渡
事業譲渡は、医療機関が個人事業であったり、医療法人が運営する複数のクリニックのうち一部のクリニックのみ譲渡したい場合などに、双方の合意により特定の事業に関する組織的・有機的に機能する財産を決定し事業を譲渡することができます。また、事業譲渡を行う場合には行政の許可が必要となります。
③ 合併
合併とは、2つ以上の法人が契約により、存続する1つの法人に集約・統合される組織編制行為を指します。
事業譲渡とは異なり、引き継ぐ資産や負債を選ぶことはできないため資産や義務等も包括的に承継されます。そのため各契約の再締結については必要はありません。
また、合併を行う場合には事業譲渡と同様に行政の許可が必要となります。
事業形態の種類
① 持分あり医療法人
平成19年3月31日までに設立された社団医療法人であり、その定款に持分に関する規定(例:社員資格を喪失した場合の持分の 払戻しに関する規定、解散時の残余財産の持分に応じた分配に関する規定)を設けているものをいいます。
平成 19 年施行の第五次医療法改正により、持分あり医療法人の新規設立はできなくなりました が、既存の持分あり医療法人については、当分の間存続する旨の経過措置がとられており、これ らは「経過措置医療法人」と呼ばれることもあります。
持分あり医療法人の場合には事業譲渡・出資持分譲渡・合併のいずれも方法も選択可能ですが、手続が比較的簡単であり、他のスキームよりも課税額が少なくなる場合がある出資持分譲渡を選択するケースが多いです。
② 持分なし医療法人の場合
平成19年3月31以降に設立された社団医療法人であって、その定款に持分に関する規定を一切設けて おらず、かつ、現に持分が一切存在しないものをいいます。
第五次医療法改正により、平成 19 年4月1日以後に社団医療法人を新規設立する場合は、持分 なし医療法人しか認められないことになっています。
持分なし医療法人の場合は出資持分譲渡ができないため事業譲渡での承継・M&Aが実行されます。持分なし医療法人は、法人清算時に残余財産の分配を受ける権利がありませんので、役員退職慰労金として対価を受け取ることになります。
③ 個人事業
個人事業の場合は、持分なし医療法人と同じく出資持分の概念がない為、事業譲渡以外の方法は選択できません。
事業譲渡であることから、譲渡対象資産を選択的できるため、例えば土地を自己所有している場合は、土地を譲渡対象に含めることも、含めず賃貸にすることも可能です。
税務面においては、事業譲渡対価と譲渡対象資産時価との差額が利益として計上され、他の所得と合算して総合課税されるため、利益が高額となる場合には多額の課税が発生する場合があります。
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