承継は何かを譲るだけではない
新規開業の困難性
事業承継はいうまでもなく、その相手がご家族であるとは限りません。第三者にとっても地域医療を引き継ぐことができるのです。ご家族であれば無償で、そして第三者であれば有償で承継することが一般的です。
無償か有償であるのかの違いはありますが、他人の医師であったとしても、親族に引き継ぐときと同じように承継することが必要です。そのことで医療を地域に必ず残すことができるからです。
ところで、人口比で医師が少ない日本において、医療費の削減が進みます。GDP比でいっても欧米各国と比較して、日本の医療費はそれほど大きいものではないにも関わらず、国は病院数、そしてベッド数を削減し、在宅化を進め医療費をできるだけ小さなものにしていこうとしています。
失われた30年の渦中にあり不況を抜け出すため財政政策を行わなければならない現在は別として、通常であれば公共工事への支出をより小さくしたり、構造改革を行うことが先決であると誰もが思っています。それにもかかわらず医療制度改革が積極的に進められているのです。
そんななか国は、過去にはへき地医療や小児医療をしなければ開業させないとまで言い放ち、5分間ルール(中医協総会で2010年2月に再診料を病院・診療所とも報酬を統一すること、外来管理加算については点数を据え置いたまま5分要件を廃止し、別途「懇切丁寧な説明に対する評価」を明確化する要件を追加することが決定されました)をつくり、また開業医の診療報酬の引き下げを示唆するなど、診療所の経営を圧迫することで開業抑制を行ってきています。勤務医が病院に残るようにしていくことで医療崩壊を抑止し、そして開業医を増やさないことで増加する医療費を抑えようという意図が見え隠れしています。
医療の灯を絶やさない
さて、コロナ渦もあり未曾有不況であることも大きく影響し国民の受療率が低下しています。
患者さんの来院数が以前より少なくなったと、大半の診療所の医師からも聞いています。「もう元に戻らないのではないか」という医師もいます。こんな状況では怖くて開業できない、勤務医の待遇改善や働き方改革のなかで医師を支援するスタッフが増員されるなか、わざわざリスクを犯して開業する根拠もなくなる状況もあります。
実際、開業支援を主業としている業者からも診療所の開業が3割減った、2割減ったと聞きますしMRからも、都内に開業した内科の先生の何人かは1年以内に撤退してしまう、という話も聞きました。
このままで診療所の先生が引退すれば、地域からプライマリー医療を担う先生が不足することは間違いありません。
先生が次のステップに進むときには、家族であれ第三者であれ、診療活動を引き継ぐ先生を招聘し医療を守ることが、地域からながく忘れられない存在となるスタートであると我々は考えます。
開業する医師にとっても、事業承継を活用した開業は、新規開業するよりもコストや患者確保からみて魅力的です。開業のための不動産を取得する労力や内装工事の手間、そして新たに患者さんを集める苦労も小さくて済むのです。
承継しようとする医師は医療の灯を絶やすことなく、そして開業する医師も(簡単なリペアや医療機器のリーシングは発生する可能性はありますが)比較的小さく開業することができるのです。事業承継は診療所を譲渡するだけではなく、また賃貸することでもなく思いをもち開業を望む医師に医療そのものの灯を引き継いでいくことをも含めた概念であるということがいえます。
このような対応を行うことが「真の事業承継」を行う第一歩です。
院長が長年守ってきた地域医療をしっかり継承することが、事業承継の基本であると、誇りを以て認識しなければなりません。
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