統合報告書 2024

PHCグループの現状と目指す姿CxO・ドメイン長メッセージ

佐藤 浩一郎

佐藤 浩一郎

PHCホールディングス株式会社
代表取締役副社長
最高執行責任者(COO)
最高戦略責任者(CSO)
糖尿病マネジメント ドメイン長
ヘルスケアソリューション ドメイン長

事業戦略について

PHCグループは、2022年11月に中期経営計画「Value Creation Plan FY2022-2025」を公表し、同計画に基づき、 LSIメディエンスの事業分割を含むグループ内再編、M&Aによるヘルスケアソリューションの顧客基盤拡大、ライブセル代謝分析装置の開発による細胞・遺伝子治療領域への進出等、成長に向けた取り組みを推進してまいりました。
一方、BGM事業の収益性の悪化、CGM使用者数の伸び悩み、病理事業ターンアラウンドの遅れ、LSIメディエンスにおける不適切事案の発生等により、中期経営計画目標値と足許の推移には大きな乖離が生じており、「キャッシュ創出力の低下」「資本効率の悪化」「3つの成長領域における収益化の遅れ」の3つの課題が顕在化している状況です。
今年5月に発表の通り、これらの課題解決を優先すべく中期経営計画の見直しを行います。具体的には、2025年度を最終年度とした現中期経営計画の目標値を見直すとともに、2025年度半ばまで構造改革期間を設け現状の課題対応を優先いたします。
本中期経営計画見直しにおいて、「収益基盤強化のための構造改革」「ポートフォリオの管理強化」「成長領域の絞り込み」の3つを取り組み方針といたします。
「収益基盤強化のための構造改革」については、キャッシュ創出力の向上や財務体質の強化が喫緊の取り組みと考えています。「ポートフォリオの管理強化」については、資本コストをより意識し、ROIC管理を導入し、ポートフォリオの選択と集中を進めてまいります。「成長領域の絞り込み」については、診断・ライフサイエンス領域に、より経営資源を集中してまいります。
今年11月に構造改革期間中の取り組みを含めた2027年度までの3カ年の新中期経営計画の公表を予定しています。
基盤領域で安定したキャッシュを創出し、診断・ライフサイエンスを中心に成長する会社へと変革を推進してまいります。

平嶋 竜一

平嶋 竜一

PHCホールディングス株式会社
専務執行役員
最高総務責任者(CAO)
最高人事責任者(CHRO)
最高変革責任者(CTO)

ダイバーシティの推進とエンゲージメント向上に注力

当社のESGの取り組みにおいて、「社会」と「ガバナンス」はいずれも重要な構成要素です。「社会」のマテリアリティでは、当社では活力のある組織文化の醸成に力を入れています。具体的には、ジェンダー・ダイバーシティの推進、国籍や人種の多様性の確保、従業員のエンゲージメント向上に焦点を当て、従業員教育と能力開発の充実を図っています。また、公平で活気ある職場文化を築くことにも注力しており、これらの取り組みを通じて、当社は持続可能な成長と健康で豊かな社会づくりへ貢献していきたいと考えています。
「ガバナンス」においては、昨年は、グループ会社において、重大なコンプライアンス違反が発生し、お客さまをはじめ、ステークホルダーの皆さまに大変なご心配、ご迷惑をお掛けすることとなりました。外部調査委員会からの調査報告結果を重く受け止め、お客さまをはじめとする関係者様各位の信頼を取り戻すべく、再発防止に全力で取り組んでいるところです。
また、当社は昨年もご報告した通り、「グローバルHRプラットフォーム」の導入を進めています。具体的には、2021年から、欧州、北米、日本の主要法人で、順次、統一のHRプラットフォームを稼働させてきました。当社はこれをグループの人的資本経営の基盤と位置付けています。このプラットフォームを、非財務情報、人的資本に関する開示に役立てています。さらに、今年は、当社グループの技術者のスキルを208項目定義して、スキルデータベースの構築に取り組みました。このスキルデータベースを今後は、従業員の採用、配属、教育研修、リテンション、新規事業に生かしていきたいと考えています。これらの取り組みを通じて、従業員のエンゲージメントを高め、ひいては、企業価値の向上に人的資本の面から積極的に貢献していきたいと考えています。

山口 快樹

山口 快樹

PHCホールディングス株式会社
常務執行役員
最高財務責任者(CFO)

収益力、財務基盤強化で持続可能な成長へ

2023年度の当社の連結売上高は3,539億円(前年度比0.7%減)となり、営業利益は16億円(前年度比92.2%減)、親会社株主に帰属する当期純損益は、営業利益減に加え、為替差損により129億円の純損失となりました。
糖尿病マネジメントにおいては、為替の好影響や新興国でのBGMの売上成長等があったものの、先進国におけるBGM市場の縮小が進み、減収減益となりました。ヘルスケアソリューションでは、医療DX関連需要を獲得し、M&Aによる顧客基盤の拡大を図りましたが、一般・特殊検査需要の回復が想定を下回ったこと、電子処方箋の導入率が想定を下回ったこと、第3四半期に減損損失を計上したこと等により、減収減益となりました。診断・ライフサイエンスでは、欧米市場を中心に設備投資需要減少の影響を受けましたが、新製品上市、値上げ等により影響を緩和し、為替の追い風もあって増収となり、為替によるコスト増の影響や第2四半期に減損損失を計上するも、増収増益となりました。
2023年度の業績悪化、収益力の低下を踏まえ、キャッシュ創出力の強化によって財務バランスを改善することが急務となっており、2025年度を最終年度として売上4,200億円、営業利益560億円を目指していた中期経営計画「Value Creation Plan FY2022-2025」を修正し、収益基盤強化、ポートフォリオ管理強化としてのROICの導入、成長領域の絞り込みを行うことといたしました。2024年11月に公表予定であり、その際に具体的な施策やポートフォリオの考え方をお示ししたいと考えております。
株主・投資家の皆さまとのコミュニケーションをより一層強化し、信頼性の向上にも努めてまいりますので、今後ともご支援賜りますようお願い申し上げます。

中村 伸朗

中村 伸朗

PHCホールディングス株式会社
常務執行役員
診断・ライフサイエンス ドメイン長

プレシジョンヘルスを実現する、精緻で高品位な診断・ライフサイエンス領域でのソリューション提供を目指す

プレシジョンヘルスに基づいて、体外診断、病理検査など診断分野における、より正確でより迅速な測定が行える機器、試薬、関連材料、およびその運用・データ管理ソフトを提供し、より的確な治療方針の判断をサポートします。
また、創薬プロセスの研究開発および製造を支援する機器とサービスの提供に加え、今後、期待されている細胞遺伝子治療における課題の一つであるQCD(品質、コスト、納期)向上への貢献を目指してまいります。
当ドメインを構成する3つの事業部の直近の状況について、バイオメディカ事業部では、超低温フリーザーにおいて世界最高レベルの省エネ性能にセキュリティ機能を付加したシリーズと、着霜の大幅低減を実現したシリーズを発売、また、PHCが保有する血糖値測定システムの技術力を活用し、細胞の代謝変化を連続測定するライブセル代謝分析装置を開発、いよいよ2024年度に上市し、細胞遺伝子治療分野への本格参入を果たします。
病理事業部では、トレーサビリティの向上に役立つ、スライドガラスへの高解像度印字を実現するSlideMate Laserプリンターを発売。その革新性が評価され、Med-Tech breakthrough Award を受賞しました。
また、大容量デジタルスキャナーのコンパクトモデルP480Dxを発売。また、臨床向けモデルであるE1000Dx™ デジタルパソロジーソリューションを英国で販売開始しました。新しい技術とデジタル化を通じ、病理プロセスを効率化し、より迅速で正確な診断に引き続き貢献していきます。
診断薬事業部においては2023年度にグループ内の診断薬事業を統合しました。移動式免疫発光測定装置PATHFASTは高感度心筋トロポニンIのFDA認証を取得し、特に米国での販売を加速します。
また、国内では全自動血液凝固検査システムSTACIA CN10への切り替えを加速し、ドメイン内でのシナジーを発揮して販売を強化してまいります。